31 王国騎士団長
「やあ」
そんな軽快な語り口で話を切り出した男こそ、王国騎士団長、兼国王。
ヴィリスが【漆黒】の剣士、ミランダを打ち負かしたことに対して、騎士団長は興味を抱いていた。
ゆえに、ヴィリスたちは呼び出された。
「まだ名を述べていなかったね。私の名はアルクリオ。みんなよろしくね〜」
「どうぞ、よろしくお願いします」
いつものように、堅い口調で話すヴィリスを、アルクリオはあまりいい風には思わなかった。
「もっとさー、僕の前では肩を上げずに友好的に。そして対等な関係で。よそよそしくされるのには慣れていないからさ」
「そうですか、それは失礼しました」
「僕はそういうのが得意じゃないっていったんだけどなー。直せそうにないようだし、じゃあちょっと語らせてほしいな。ヴィリス君のことを」
自分の名前を呼ばれ、ついビクッとしてしまうヴィリス。背筋が伸び、これから説教されるのではないかと思わせるような姿勢だ。
「君が【漆黒】のミランダを、倒したのかい?」
「そうですが」
「それは誇るべきことだよ、ヴィリス君。ミランダを倒せるような逸材は、片手で数えられるほどしかいないんだ。その半分以上は、戦う前にミランダが一歩引いているから、ミランダはほぼ負けなしだったんだよ。現にこの騎士団長もミランダに
勝てたことはない」
正直、ヴィリスはミランダの実力を甘く見ていた。それほど強くはなかった印象があったのだ。厳しい戦いを強いられたものの、長身エルフのアイロスのセクシーさと己の剣術だけで、彼を突破できたのだから。
もし、アイロスによる体のみせつけがなかったら。勝ち目のない戦闘だったのではないか、とヴィリスは思ってしまう。
「あれは、僕ひとりの力ではなく」
「それでも、君が勝ったことには変わないでしょう? 勝負は勝った方が正義。負けた方が文句をいうのは格好が悪い」
ミランダの考えはここからきたのだな、とヴィリスは思った。