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20 決戦!! 【漆黒】の"剣士"ミランダ 前編



 最強の剣士と名高い、【漆黒】の剣士、ミランダ。彼の持っていた、魔法を完全に拒絶し、あたかも発動させないようにする、剣に秘めた能力。


【氷炎】は完全に姿を消した。

 宿っていた剣自体は大破してしまい、刀身はすでに鉄屑と化している。


 ただ、ヴィリスが"剣士として"のミランダとの戦いを望んだことで。

 絶望から立ち上がり、魔法と剣でぶつかり合うことを決意した。


「さあ、剣と魔法、どちらが強いかをここに示すときがきた!」


 ミランダはそう叫ぶ。

 う

「四対一ですか」


「いや、炎魔法師は除外させろ。先程の勝負の続きがしたい、長身のエルフは何の取り柄もなさそうだが、一応はじめにいた女だからいてもいなくても変わらない。ゆえにいてもいいとしよう」


「おにいさん、それは相当偉そうな態度、シてるね。いつもなら、ここでエッロいこといってしまいたくなるものだけど、今はあなたに対しての怒りしかないわ。何? 人をイラつかせる天才なの?」


 意味深な発言ばかりをしてヴィリスたちを常に困らせるアイロスだが、どうもミランダの言葉が気に食わないようであった。


「この不毛なやりとりは、生産性と効率を著しく低下させますが、まさか続けるおつもりですか」


【炎舞】のリーナの怒りも限界に近づいていた。強く無駄を排除することに拘る彼女にとって、不毛なやりとりこそ最も嫌いなものであった。


「では、改めて!!」


 左手に持った剣を、ヴィリスやフライスに対して標準を合わせる。


「いざ!!」


 左後ろに捻った体の反動を生かし、ミランダは走り出す。

 踏み込まれた土が砂埃を起こす。よほど地面を強く蹴り出しているためか、ミランダは砂塵を纏う。


「ヴィリス、いくよ」


「もちろんです」


 そういって、急いで魔法を展開していく。


「【氷柱】!!」


「【光の矢】!!」


 はじめにミランダと戦ったときと、同じ技の構成。

 連続技が、走っていく道を塞ぐはずなのだが。


 魔法を撃たせない能力を失ってもなお、剣で魔法に対抗しようとする姿勢があった。


 飛び交う氷魔法を両断し、斬れた後の氷も見事に躱し。

 光魔法も体のこなしで一発も当たることなく距離を詰めていった。


 しかも、地面に横たわる人を踏むことなしに。


「甘い。甘い甘い甘い。【氷炎】を失おうとも、この俺は、【漆黒】の剣士。剣技に関しては一流なものでね!!」


「くっ!!」


 フライスはどうにかミランダの行動を予測して魔法を放ち続けるのだが。

 それにも関わらず、ミランダは見事に避けていく。


 ヴィリスも同じだった。一発一発の魔法を放つ間隔を縮めているはずなのに、魔法が当たらない。


 まるで、ミランダが魔法を拒絶するかのように。


「信じられない…… 腹のタつおにいさん、すっごい……」


 何もできないアイロスは立ち尽くしながら、つい本音を漏らしてしまう。


「なるほど、結局は魔法師もその程度ということか!! 同じ魔法じゃ、こちらもつまらないな!!」


「どういうことなんだ」


 本当なら、ここから新たな魔法に切り替えたいところだが。


 そうすると、次の魔法発動までの時間が空いてしまい、さらに早いペースで距離を詰められてしまう。

 新たな魔法発動に前に斬られてしまえば本末転倒である。


 魔法など気にせぬ様子で、軽々と地を駆ける。


「空気ですら、俺に味方しているように思える!! 頬を斬る風が、俺の走行を後押しする!!」


 いつの間にか、踏み込めば斬りつけられる距離まで詰まっていた。


「いかせてもらうぜ」


 地面を蹴り上げ、飛び上がるミランダ。

 表情は、興奮と熱狂、そして純粋な喜びに満たされている。


 剣士として、魔法と戦えていることを心の底から楽しんでいる男の顔だった。


「ゼアァァッッ!!」


 ヴィリスの胴を、斜めに斬りつけようと、向かう剣。

 迫りくる、体。


 氷魔法を放ち続けるも、空中ですら剣を振り続け、氷を両断する。


 常人の技ではなかった。


「【氷結】!!」


 瞬時に放った、凍結魔法。

 一瞬、剣先を凍らせることに成功したヴィリスは、迫りくる体を避ける。


 攻撃を避けることに成功したものの、数秒ののち、氷を断ち切り、剣が地面に食い込む。


 体勢をさほど崩すこともなかった。


「やるじゃないか、氷魔法師! すぐに勝てると俺が侮っていたのが間違いだったらしい。まだまだ楽しませてくれるか?」


 一瞬のうちに新たな魔法を展開すること。それは、魔力は膨大に秘めているが、魔法を放つ能力に劣るヴィリスにとっては強い負荷のかかることであった。


「まだ、まだです」


 息切れを起こし、どうにか言葉を絞り出す。体が一度ぐらりと揺れたものの、一応戦えることには戦えそうであった。


「そうだよな! 剣と魔法のぶつかり合い。まだこんなものじゃ満足できない。俺が求めるものは、最強のみ。自分を真っ当に倒せる人物を求めてきた。もしかしたら、それは貴様らかもしれない。そのため、今の俺は激しく興奮している!!」


 勝負を楽しむ。

 強くなりすぎた【漆黒】の剣士には、その心を失いつつあった。


 より上へ上へと向かい、勝てないと思っていた相手を負かせる愉しさ。


 それを追求するべく、戦ってきたのに。

 強くなればなるほど、勝負はつまらなくなっていた。


 勝てない相手がいなくなれば、強さを追い求めていたときの’、純粋な勝負への興奮は薄れてしまう。


 必ず勝てると思っている相手との勝負、それの何が楽しいというのか。

 弱いものに見せつけるための力ではない。


 自分より強いものと戦うための力。


 それを思い出したミランダ。


「ああ、この時が永遠に続けばいい。貴様らに出会えてよかった!! さあ、もっともっと、全力をぶつけろ!! そして、根が尽きるまで戦い狂え!!」

vsミランダ戦は前中後編の豪華三本立てです! 「長えよゴラ(でも面白そう)」「さっさと倒せよミランダのこと」 「勝手にしやがれ」 など思った画面の前のあなたの、ブクマ登録やポイント評価、感想などお待ちしています!!

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