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7.『居心地がいい』


「あ、私だよ? ヒーラー兼サポーターのルーシー。凄いでしょ? 魔法は任せてね!」


 なるほど。Sランクパーティともなれば2つの役職をひとりでそつなくこなして然るべきか――


「そんなわけはない……よね!? マジでどうなってるのこのパーティ!」


「ルーシーは類稀なる魔法の才能があるんだ。別に大魔導士の生まれ変わりとか、代々王宮に仕える宮廷魔術師の血筋とか、そんなバックボーンは一切ない。はっきり言って謎だ」


「なんかふわっとした才能だなぁ!」


 サムの説明になっていない説明で無理やり納得した俺だが、このパーティのツッコミどころに律義にツッコミ続けていたら日が暮れてしまうのでこの対応で正解のはずだ。

 幸い、『フルグライト』というパーティのことは何となくわかってきた。


 一言で表すならば、『規格外』。

 あるいは『理不尽』。


 そこにどうやら俺も入っているらしいのがむずがゆいものだが。


 さて、話題を変えたい思いと、パーティメンバーとのアイスブレーキングも兼ねて提案した、


「そういえば、せっかくだから皆の適性も見てみたいんだけど……」


 という俺の一声が、『フルグライト』大適性自慢大会開催の引き金となるのであった。 




-------------------


名前:ルーシー

年齢:18

性別:女

職種:ヒーラー/サポーター

筋力適正:B

体力適正:A

魔法適正:SS+

弓適正:A


-------------------


「――SS+?」


「んー? SSS+のアレンくん、何が不思議なのかな~? ひょっとして、魔法の才能があるって言ってた割にSS+止まりかよ、なんて失礼な事考えてないよね~?」


「いや全然! 全ッ然そんなこと考えてないです!」


 危ない。

 もちろんそんな不躾な発想に至ってはいないが、それに近いことは考えていたのだ。


「ただ、ルーシーほどの魔法使いならSSSくらいはあるのかなーと……」


「あっ」


「えっ」


「おぉ……」


 失言、だったのだろうか。

 少なくとも、俺の言葉で部屋全体がなんとも言えない空気に変わったことは間違いない。

 早速やらかしてしまったのだろうか。

 そんな不安に苛まれていると、見かねたルーシーがその口を開いてくれた。


「アレンくんは今まで適性とか見てこなかったんだろうし、わからなくてもしょうがないと思うけど……SS+って言ったらそれこそ王国筆頭魔術師クラスなんだよ!? って、SSS+くんに言っても言い訳がましいけどさ!」


 怒った風だったので焦ったが、ルーシーがそう言い切った後に笑みがこぼれたのを確認し、少なくともその怒りは冗談の類だとわかり少し安心した。


「ルーシーの言った通り、通常は適性がSS+もあればその国のトップを張れるだろうね。例えば、偶然酒場でルーシー以上の魔法使いに出会うのはほぼ不可能だと思うよ。その上、丁度パーティから離脱を強いられていて、こちらの勧誘に乗ってくれそうな人となるとなおさらだ」


「まぁもちろん、適性は適性。同じ魔法適正SS+の人でも、私ほど魔法を使える人はいないんじゃないかなー」


「と、言うと?」


「そのままだよ。私の魔法はSS+の限界地のほぼ100%引き出せる。相当気合入れて鍛錬しても、ここまで鍛えられる人は中々いないんじゃないかなー」


 なるほど、俺の『適性』という数値に対する解釈はそう間違ってはいなかったようだ。


 例えば、魔法の才能が同じ『SS+』だとしても、1日で1時間の鍛錬をする者と、10時間も鍛錬をする者では、魔法の威力に10倍の差が出る。

 なんてそんな単純なものではないだろうが、簡単に考えるとこうだろう。


 加えて言えば、『魔法適正:SS+』の魔法使いによる1時間の鍛錬では、『魔法適正:A』の者の10倍の伸びを見せたりする、といったところか。


「アレンくんも言うようにそんな単純ではないけど、大体はその解釈で合ってるよー。私、頑張ったんだよ?」


 なんて軽く言ってはいるが、文字通り血の滲むような努力を続けてきたに違いない。

 ルーシーは俺より年下とはいえ、その姿勢は尊敬に値するし、見習わなくてはいけない。

 その軽い口調と絡みやすい態度についつい忘れてしまいそうになるが、ルーシーは王国筆頭魔術師級であり、Sランクパーティ『フルグライト』のメンバーなのだ。


「俺も本気で気合入れて鍛錬しなくちゃな……」


「あはは。頑張ってね、未来の英雄くん! 期待してるぞー!」


 なんて茶化されてしまったが、これがとても居心地がいい。

 何より、仲間に期待されるのは、悪くない。


 冒険者になると息巻いて家を飛び出し、早5年弱だろうか。

 もしかしたら俺は、初めて仲間の温かさに触れているのかもしれない。

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