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6.『魔法は任せてね!』


 整理しよう。

 史上初の『SSS+適性者』が、サム率いるSランクパーティ『フルグライト』のメンバーであるアーサーという男。

 史上二人目の『SSS+適性者』が、これまた『フルグライト』に加入した俺。


「なるほど、このパーティどうなってるの?」


「おっ、アレンくん。早速SSS+風吹かせてきたねー」


「いや別にそんなじゃないんですけど! でもちょっと出来過ぎてるっていうか……SSS+風ってなに!?」


「つまりよ、アレン。俺らはこの前の探索でこのパーティの最高戦力を失った。そこに現れたのがその最高戦力と同じポテンシャルを持つお前ってワケだ。そりゃあサムもほっとかねぇよなぁ?」


「はは。僕としてもアレンに断られてしまったらどうしようかと思ったよ」


 こんなパーティに心から誘ってもらって断るなんて所業はするはずもないが、この事情を聞いてしまったら尚のこと期待を裏切るなんて真似はできなくなってしまった。

 もちろん最初からそんなつもりはない。だが、実戦で輝かしい戦績を収めた経験もないし、自分にそんな才能があることすら実感に乏しい。


「改めまして皆さん、アレンです。前のパーティではヒーラーをやってました。迷惑もかけると思いますが、よろしくお願いします」


「おいおい、そんなに固くなるなよ。敬語なんて煩わしいのもナシだ。思ったことがあったらドンドン言ってくれ……って、これはどうせサムに言われてるだろうけどな。それにしても……」


「アレンくん、ヒーラーやってたの? こう言っちゃなんだけど、魔法はあんまり得意そうに見えないような……あ、魔法の特訓のために一時的にヒーラーを担ってたとかかな?」


 なんだろう。

 歯に衣着せぬずに率直な言葉を並べてくれるのはありがたいが、こうも強い人からことごとく『ヒーラーをやっていた』という事実に驚かれると、暗に俺に魔法の才能がないと言われているようで何とも言えない気持ちだ。


「あ、ごめんね! 別に変な意味じゃなくて、適材適所というか、ここではアレンくんが無理に魔法の練習をしなくても私に任せてくれればいいから! アレンくんには前衛としてのとんでもない才能があるんだから、そっちをよろしくね!」


「そ、そうだね。えっと、ルーシーはヒーラーかな? そういえばこのパーティは俺含めて4人だけど、クリスは見るからに盾役だし、サムはサポーターなの?」


「おーいおい、見るからに盾だなんて……そんなに俺の肉体美を褒めても何も出ねぇぜ!?」


「アレンはそういう意味で言ったんじゃないと思うけど……えっとね、アレン。僕はアタッカーだ。このパーティでは僕とアレン、二人で前衛に立つことになるよ」


「えっ、じゃあサポーターは?」


 危険な狩りもこなす冒険者は、基本的に4人以上でパーティを組むことが多い。

 ひとりひとりが自らの役割をこなし、仲間に任せるところは任せる。

 人間ひとりが鍛えられるキャパには限界があるため、ある程度のレベルの冒険者は自分の才能に従い、何かひとつを極めることを考えるようになることが多い。


 つまり、全てのステータスが平均的な4人がパーティを組むより、何かひとつだけを極めた人間が4人集まった方が圧倒的に強いという理屈だ。


 それはジャック率いる『闇夜の踊り子』でも例外ではない。

 ジャックは『筋力』、エリカは『魔法』、あの場にいなかったもう一人のメンバー、ケビンは『体力』のステータスに秀でていたため、自分に合ったジョブに就いていた。


 まぁ、俺のジョブだけは思いっきり間違っていたみたいだけどな!


「その考え方はもちろん『フルグライト』でも例外じゃないよ? サムは前衛が得意。クリスは盾役。それで私は魔法が得意!」


 魔法を使うジョブは主にふたつある。

 それが、『ヒーラー』と『サポーター』だ。


 『ヒーラー』は文字通りパーティ全体の回復役。

 魔法が平均以上に得意なヒーラーは、それに加えて簡単なバフやデバフもこなすと聞くが、ヒーラーはあくまでパーティの命綱。

 敵のデバフに現を抜かしている間にパーティが全滅でもしたらシャレにならない。

 必然的に、覚える魔法や鍛錬する魔法はHP回復系、状態異常回復系に絞られる。


 逆に『サポーター』は、回復魔法は全てヒーラーに任せることが出来る。

 回復魔法を最優先で鍛えなくてはいけないヒーラーと違い、細かい魔法に手を出す余裕があるわけだ。

 例えば、遺跡探索時にあったら便利な『開錠魔法』なんかは、ヒーラーが覚えるには無駄な魔法すぎる。

 そういう『痒い所に手が届かせる』存在が、文字通り『サポーター』なのだ。


「うんうん、博識だねー。って、冒険者やってる人なら常識だったかな?」


「でもこれを知らずにデバフにハマるヒーラーってのも案外いたりするからなぁ……それで?」


「ん?」


「結局サポーターは誰なの? ……もしかして、そのSSS+の人がやってたなら……」


「あ、私だよ? ヒーラー兼サポーターのルーシー。凄いでしょ? 魔法は任せてね!」

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