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5.『二人目』


「SSS+が、存在しない――?」


「存在しないって言うとちょっと語弊があったかなー。存在してるとは思わなかった、かな。少なくとも、過去にSSS+の冒険者がいたって記録は聞いたことないよ」


 少し図太くなりでもしたのだろうか、この上ないほどに俺の秘めた力の価値を思い知らされたわけだが、狼狽はしなかった。

 それよりも、疑問がとめどなく溢れてくる。


「でも、その『鑑定』スキルにしっかりとSSS+と書いてありました。つまり『鑑定』スキルはSSS+をしっかり認識してるってことですよね」


「あぁ、そうだね。僕の『鑑定』スキルが嘘をついたこともないよ」


「SSS+に前例がないなら、『適性:SSS+』という数値自体に疑問が湧くはず。いや、もっとわかりやすく言うと――」


「つまり、適性はSSSかSS+で打ち止め、ってのが共通認識じゃないとおかしい、ということだね」


 そういうことだ。

 『SSS+』という数値自体が幻なら、なぜ『SSS+なんてすごいねー』なんて反応ができるのだ。

 『SSS+!? SSSよりも上があったのか!?』という反応になるはずではないのか。

 このことから導き出せるのは――


「――公に広まっていないだけで、SSS+の適性を持つ冒険者が存在した……? それか、SSS+の適性を持つ人が存在すること自体、王国にとって都合が悪いとか……」


「ふふん、アレンくんだっけ? キミ、鋭いねー。でもちょっと顔が怖いよ? まるで世界の秘密に触れちゃったような顔してる」


 だってそうだろう。

 公になっていない最高戦力の冒険者なんて、国の陰謀かキナ臭さしか感じない。


「別にそんな大層な話じゃねーよ? ただ、俺らにはもう一人仲間がいたんだ」


「ちょっと、その話するの?」


「いいじゃねぇか。アレンももう仲間なんだろ? それにいずれは話さなくちゃいけない話だ」


「そうだけど……」


 もう一人仲間がいた。

 いた、か。先が気になるところではあるが、少しばかり踏み込んでいいものか迷ってしまう。


 口論というほどではないが、クリスとルーシーの掛け合いで少し居心地が悪くなってしまった。


 困った俺がサムに目配せをすると、気付いた彼がしっかりと応えてくれた。

 彼の一声は、いつだってすぐに場を静めてくれるものだ。

 それは想定していたよりも、遥かに重い話で。


「――『世界洞地下400m』。そこに、僕たちのもう一人の仲間を置いてきてしまった。彼の名はアーサー。君と同じ、SSS+の適性を持つ男だ。君は、歴代でも二人目のSSS+ということになる」

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