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 そん時、俺ぁもう廃病院のことなんかきれいさっぱり興味をなくしちまって、帰り道でこんびに(・・・・)に寄って先日発売したかりかり君のはちみつれもん味っつうのを食うことしか頭になかったんでさぁ。だから頭ん中がもうなんつうか、いかにして最も早くその病院から出て歩いて5分のコンビニに行くか、てことでいっぱいだったんです。せっかくこんな幽霊の噂がある病院に来たっていうのにネズミ一匹出やしないもんだから、あっ、猫はいやがったか。まあ、んなもんだから何事もなくその友人と病院から出て家に帰れると思ってたんですわ。早くしねぇと親父とお袋に怒られちまうもんだから。


 でも、甘かったんですわ。まだ肝試しは続いていたんでさぁ。



 それは俺が猫がにゃーにゃ―鳴いてる部屋からあいつよりも早く外に出たときのことだったんでさぁ。


「なあ、帰りにコンビニ行ってアイス買っ




 バァン!!



 んなッ!! オイ! 何だよ!?」



 俺がまだ部屋の中にいるあいつの方に振り向こうとしたのと同時に開いていた扉がぴしゃーん、と閉まったんですわ。もうびくっと腰抜かしちまってよぉ。



「んだよ、驚かせんなって。おい!」


 んでまだあいつが中にいるであろう部屋の扉をまたひゅっ、て開けてやったんですよ。


「……え」


 でも、そこにはあいつはおろか、さっきまでにゃーにゃーうるさく鳴いてた猫まで影も形もいなくなってたんでさぁ。


「おい、つまんねえ冗談やめろよ。さっさと帰んぞ!」


 ……なんの返事も返ってこなかったんでさぁ。


「おい、どこ行ったんだよ!!」


 大声で何度も呼んだんですが、これまた無反応。んで、何度呼びかけても返事が返ってこないもんだから、


「さてはアイツ先にこっそり抜け出しやがったな。チクショウ、おいていきやがってあの野郎」


 なんて早合点しちまってさっさと一階に降りていっちまったんですよ。



 そのあと病院の外に出て奴を探したんですが、これもまた見つからない。んで途方に暮れた挙句まだ電話も持っていなかったもんだから近くの公衆電話に俺の財布のなけなしの10円玉入れてあいつの家に電話したんですよ。「アイツ、もう家に帰っていますか?」って。ところがおかしなことに、あいつはまだ帰ってきていないと。んで怖くなっちまった俺はうちの家族に電話して迎えに来てもらったんでさぁ。親父に拳骨を、お袋にがみがみとした説教をたんまりともらってべそかきながらあいつがどこにいったのかを大人たちにまかして俺はもう疲れてさっさと寝ちまったんでさぁ。んだよわりぃかよ。俺だって大事な友人が行方不明とあっちゃぁ居ても立っても居られないに決まってんだろがい。


 ……ただなんかぁ、あの時ぁまるで魂っちゅうもんが抜けちまったかのように気ぃ失っちまったんですわ。今考えてみるとそれもなんかお化けみてぇなもんのせいなのかもしれないでさぁ。



 とまあ、俺の話はもうここまででさぁ。それでは引き続きあいつの方の話へと戻りましょう。

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