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第八話 「ハーブ・シティ・ブルース③」


 元の話自体は約三年前くらいに起こったの。

 この王国、つまりオースウェストラン王国と、森を境にした領域、通称『混沌の森』で起こった『魔に属する者達』との衝突に端を発するんだ。


 混沌の森というのはゴブリンやホブゴブリン、トロールといった、人族や私ら妖精種、亜人種とは敵対する、多種族が支配する領域なんだけど、人族が支配する国オースウェストラン王国は人族の生存領域拡大を掲げて入植村なんか築いて開拓していこうとしたのさ。


 だけど森は深いし魔物は多く存在するし、それどころか国境線沿いの街や村は奴ら『魔に属する軍団』の逆侵攻受けて対応する王国の疲弊が酷くなっちゃったワケ。


 そんで国王は考えた。

 王国内の、良質な鉱山持ってる領主達から、採取される鉱石の大部分を税として納めさせて武器や装備の更新を図ろうとね。

 もちろん各地の鉱山持ってる貴族や領主達はそんなの嫌に決まってる。

 いくら今が戦時で銅や銀が大事な戦略物資でも、国王の名の元に召し上げられちゃったらそれぞれの領地の財政が破綻しちゃうよ。


 そこで、ここの領主はチョットばっか頭を振って考えた。


 何か理由を付けて、鉱山が使い物にならなくなった事にしちゃえば召し上げられずに済むんじゃないかってね。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 彼女が話しだしたストーリーはイキナリとんでもない話だった。


「ちょっとまて!それじゃ体が緑色になる奇病って……」


「もちろん仕込みさ。だいたいおかしいと思わないかい?私は体が黄色くなる病気は知ってるけど、756年生きてて体が緑色になる病気なんて見たことも聞いたこともないよ?」


 言われてみればもっともだ。

 落ち着いて考えてみれば、俺の居た世界でも、そんな病気聞いた事が無い。


「それに私、この廃鉱に入る前にその奇病に掛かったという人たちの追跡調査行って来たんだ。」


「そんでその結果は?」


「勿論、まっ黒!死んで埋められたという奴の墓穴掘って調べたけど、死体一つ見付からなかったし、奇病に掛かったっていう連中は、殆ど他の街で名前変えたりして生きてたよ。おおかた緑色の染料をドーランに混ぜて塗りたくって、奇病患者になりすましたんだろうね。領主になにがしかのお金貰って。」


 墓穴あばきまでやるなんて……貴方、悪名高い”イギリスの死体盗掘人”ですかい!?。


 ……て、あれっ?それじゃおかしいぞ?


「ちょっとまって?でもそれじゃ大っぴらには採鉱出来なくなって、領主さんにとっては結局、財政が苦しくなる事には変わらないんじゃ!?」


「そう。そこだよ!実はその事にからくりがあるのさ。」


「その理由を見せてあげる」という彼女の後ろに付き従い、私もトボトボと歩いていく。

 やがて坑道内の広く開けた場所に辿り着いた。


 その場所は確かに変だった。

 天井に埋め込まれた光る石の数が異常に多く、その光の下では緑色をしたアロエに似た多肉植物が、大量に生えていたのだ。


「なんだ!これ!?」


「『アローマディガス』、その成分を抽出し服用したものには、多幸感や強力な性的興奮効果をもたらすが、依存性も併せ持つ、いわゆる『()()』というものの原料となる薬草だよ。」


「ええ!?これ違法じゃないの!?」


「違法ではないよ。そもそもこの植物、自然界中で育つものはものすごい希少だし一般市民はその存在すら殆ど知らない。社会に出回るのも権力者や富裕層向けに極少数、勿論取引される時の末端価格は推して知るべし……だね。」


「じゃあ言ってしまえばこの植物群が、宝の山ってわけか……」


「自然界中じゃ育ちにくい”コレ”を廃棄された坑道内という閉鎖系で育てる事により、大量栽培に成功したってワケだね。違法でこそ無いけれど、利用法ゆえもともと大っぴらに販売出来るしろものじゃない。だからこそ、隠れた収入にしやすいってワケだよ。国王には鉱山が使用出来なくなったからと減税を嘆願し、その裏では……てね。収益も殆どは、ここの領主の懐行きになってるんじゃないかなぁ?」


 なるほど……違法ではない。って事になってるが、現代社会で言えば、あきらかに『脱法ドラッグ』って奴か。

 しかも取引先は極少数の富裕層相手だから口の堅い奴が多いだろうし、収入も隠しやすい……。


「ていうか……これって発見したら駄目な奴じゃないかい!?」


「う~ん……?でも、私も時々、薬の材料として失敬してるよ?」


 無自覚にヤバイ事してる奴隣に居たー!!


 その時になって私は気が付いた。


 この坑道、廃鉱になってから三年も経つというのに、ホコリ等の堆積物も少なく、新しい足跡が結構残ってた。

 あの足跡の数、この『リーテシア』さんなるエルフ1人が入ったところで、そんなに残るものなのだろうか?


「なぁ?気が付いたんだけどさ、当然あんな畑あるって事はさ、管理してる奴が居るって事だよな?」


「うん、そりゃ居るだろうけど、今までは私は出会した事はないから、よほど運悪くなきゃ大丈夫よ。」


 ………………


「じゃあさ、私らを取り囲むように立ってる、あの武装した人影は誰なんだろうねぇ?……」


 どーしてこの756歳エルフはフラグ立てるような事を言うんだろうねぇ……

 うんうん……これって詰んだって事?

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