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第〇話 「序」

 長らく私的事情で、作品投稿から遠ざかっていましたが、久々に精神安定剤代わりに、妄想をまた懲りずに書き殴りはじめました。

 この手の作品が楽しめる方は、どーぞ面白がってやって下さい。

 人間っていうのは、長く生きていると、己の罪深さに恐れと嘆きを感じるように出来ているらしい。


 若い頃は、己の自意識という存在に、不可思議を憶え、己の存在が無くなる『()』というものを、ただ理由なく恐れたものだった。


 自らの行為に罪の意識などというものは無く、世間に対して我儘いっぱいに振る舞った。

 そして、それに対する世間からの反発に対し、『()()』こそあれ罪悪感などというものは、小指の先程も存在するものでは無かった。


 目上のものからの、お小言やお叱りなど、ましてや「()()()()()()()()()()()()()()」などというお題目など、絶対信じやしなかったし、あれはただの『虫の居所が悪いから、ストレスの解消先として俺を選んだのだ。』と信じていた。


 社会人として働き始め、自分よりはるかに年上の部下を持たされ、それらを叱咤する立場になると、「『アレ』はそうではなく、本当だったんだな。」と判るようになる。

 

そして年上の部下を叱る度に、心の奥に鉛のような罪悪感が沈み込んでいくようになっていくのだ。



 何かのオカルト的な与太話によると、人の魂は皆シリウスから地球に、愛を育むという任務を遂行する為にやって来るのだそうだ。

 だが、嫁さんどころか彼女ひとつ出来なかった俺は、どうやら任務失敗したらしい。


 ただ、生きていくうちに罪だけを重ね、沈み込んでいくような想いを心の奥底に蓄え、救いを求めようにもどうしたら良いのか判らない。


 そんな毎日をおくるだけの存在になり果てるのだ。


 それはあまりにも悲しい。


 仲間をつくり共にに騒ぐも、『それは一時の逃避行為だ。』と、何処か醒めた心の部分で理解しているせいか、後から虚しさだけが付いてまわる。


 人生は、年数を重ねただけ、ささやかだが美食も快楽を追求し体感していく程、『コレ以上』という新たな感覚に感動を覚える事も無くなっていく。


 そして、焦りをおぼえはじめるのだ。


()()()()()()()()()()()()()()()』に。



 街を歩き、本屋の看板を覗けば『何百万部発行』『観客動員数何百万』とかの煽り言葉で彩られた、本・ラノベ・映画・アニメ、最近流行りの異世界転生or召喚モノ。


 そして手にとって視聴、もしくは読んでみれば、『なぜこれが売れるんだ!?』と、頭を抱えるような作品に出会う事が多くなると、その焦りは段々と強くなっていく。



 だからといって理解しようとする努力を放棄するワケにはいかない。


 部下や上司、取引先にも、若い『()()()()()()』というのは存在し、社会との繋がりを続ける限り、それらと断絶するワケにもいかなくなるのだ。


 とはいえ、営業の為とはいえ深夜アニメを毎週十本以上無理して観るようになったら、身体が拒否反応起こすようになったのか?とうとうドクターストップが掛かるようになってしまった。




 まぁそんな自分の近況をつらつらあげつらってもしょうがない。

 そろそろ本題にはいろう。




 出張中、『U()F()O()』に攫われ消息を絶った社員、ここは仮に『A()()』としておこう。

 部下であった彼の私物の引き取りと、仕事の引き継ぎの為に、私がアメリカくんだりまでやって来た事だ。


 日本にいる時、「アメリカでは年間10万人以上の人間がUFOに捕まり、拐われている。」なんて記事が、某オカルト雑誌に掲載されてはいた。


 しかし、まさかそんな与太話が、現実に私に関わってくるとは思わなかった。


 そもそも何故?「彼がUFOに拐われた」と判ったのか?


 会社で報告を受けた時、ツッコミをいろいろ入れたかったのだが、どうやら彼は数十人の警官を含む大衆の面前で、UFOに拐われっていったかららしい。


 現地を案内してもらったが、その場所は以前にもUFOによる誘拐事件が多発し、ご丁寧にも、”UFOに連れ去られる車”の図が書かれた『U()F()O()()()()()()()()()』という道路標識が立てられていた。


 といっても、こんなもの『注意』されても防ぎようが無い気もするが、メリケンなお役所としては何もしないわけにはいかなかったのかもしれない。



 それともアメリカらしく、『U()F()O()()()()()()()()()()()()()』という事なのだろうか?



 ……話はズレたが、なんでもその日、そこでは大統領のパレードが行われ、出張でやって来たばかりのA君は、運の悪い事に物見遊山としゃれこみ野次馬の中に混ざっていたらしい。


 そこへ全長10メートル程のUFOが飛来、怪しげな光でA君を空中へ吊り上げ、大統領や多数の警官を含む、パレードに集まった人達全員の眼の前で拐われたとの事だ。


 その様子は、テレビ局や地元メディアのテレビカメラ、多数の市民らの携帯でも動画撮影され、アメリカ国内では連日報道され大騒ぎだったらしい。

 日本ではそんな報道とんと無かったので、日本のマスコミはスルーしたか、いつものように”報道しない自由”を行使したのかもしれない。


 アメリカでは、大統領の代わりに拐われたのではないか?という仮説まで飛び交い、映画化の企画までもが進行しているという。



 すごいなA君。一躍君、アメリカの英雄だよ。

  但し公開は日本を除くだけどな



 会社経由でその事を伝えられた時、私の頭の中では、『出張中の事故(?)なので労災は適用されるのか?とか……そもそも誘拐って労災扱いなのか?とか……残された家族(A君は独身なので、その両親というトコか?)への補償や……そもそも報告はどうなっているのか?』等、思考がゴチャゴチャと空回りし、短絡思考(ショートサーキット)状態になった。


 現地へ到着し、現場までの案内をしてくれた現地社員の説明も、正直あまり頭に入らず(まぁ訛りの酷い英語だったからかもしれないが)その日は一旦、『A()()』の私物が預けられている出張先のアパートへ向かう事にした。



 案内されたのは入り口にゴチャゴチャと大量の鍵が取り付けられた、A君が泊まっていたアパートの個室。

 その日からその場に泊まり込み、A君が残していった”彼の仕事”、現地クラウド・サーバーの保守に取り掛かった私は、サーバーの端末機として繋げられたままになっていたA君私物のPC内から、奇妙なデータを見付けた。



 A君というのは偏執狂的なトコロがありながら、かと思えば抜けているトコロは思いっきり抜けてるという、この業界に有りがちな少々性格が破綻した人物であった。



 繋がってるサーバーへは、ログインするのに思いっきりエゲツないパスワードな要求をするくせに、端末機本体に内蔵されてるHD領域へのアクセスは、ケーブルを引っこ抜き再起動を掛け、起動するOSを画面上に表示される選択肢から選んでエンターキーを押してしまえば、パスワード入力無しでログイン出来てしまうという。

 今まで彼が利用してきた私的な領域は覗き放題というセキュリティ的にはトンデモ仕様だった。(露出趣味でもあったのだろうか?)



 他人の、それも故人(?)となっている可能性の高い人物の、私物PC内を覗き込むという行為は、その人物の日記と遺書を同時に盗み視ているという気分になり、言い知れるものではない興奮と、冒頭で述べたような罪悪感という複雑な感情が私を支配した。

 しかし、この場での業務は、この”A君の遺産を活用する事が最速”と頭の中で結論付けた私は、彼自身の私的なデータと思われるテキストファイルが大量に詰まったドキュメントフォルダを開き、一つ一つその内容を確認していったのだ。



 その中の一つに、その奇妙な文書フォルダは存在していた。


 なぜそのフォルダは”奇妙”なのか?

 それはそのフォルダの来歴にあった。


 A君はご丁寧にも、自らの個人的領域にあるフォルダには、コメントファイルとでも言うべき、中にあるそれぞれのファイルに対する説明や来歴、Downloadした日付など詳細に記録を残していた。

 それによると、このフォルダの元々存在した場所というのは、よりによってウチの社で、管理運営しているクラウドサーバー内だったのだ!


 ウチの会社というのは、クラウドデータセンターをやっている。


 いわゆる、顧客からのバックアップデータ等を預かるアレだ。

 たとえ違法なデータだとしても通信の秘密の保護という法律上、例えサーバーの持ち主である我々でも中身を確認する事も出来ないし、サーバー自体を海外に置いてる為、国内司法による開示命令でも従う必要は無いに等しい。


 もとより、そういった信用があるからこそ、こぞって我々のような会社に、月額いくらだかを払って利用する顧客だかがいるワケなのだが……


 このフォルダはよりによって、永らく更新されない特定の顧客が使用していた領域に残されていたデータだったのだ。


 つまりこのフォルダが、このPC内に存在している事が、会社的にも法的にも真っ黒な”違法”という事だ。


  なにコレやばい?


 勿論、本来は私ごときが観閲してはイケナイ筈なのだが、残念ながらその来歴が記録されてたコメントファイルに気が付いたのは、そのフォルダ内に有る文書を端から端まで全部読み切った後。

 缶コーヒー片手に休憩中の事だったので時「既に遅し!」だった。


 はたして?その文書の内容は?と言えば……まぁその内容の真偽を知る可能性のある唯一の人物、”A君”がUFOに拐われたままになってしまってるので私自身はコメントする立場には無い。


 正直、出来の悪い書きかけのラノベか、”なろう”にでも投稿しようとしていた私的小説かなんかだと思ってた。


 ただ、気になるのが、文書中やたらと「私が『向こうの世界』で体験した」という文言が多く散見される事だ。

 そこで私はこの文書フォルダを、自ら持ち込んだUSBメモリに移し、A君の遺品(?)となるPCから削除した。

 なんとなく、このフォルダの元の持ち主である、”永らく更新がない特定の顧客”とやらを探してみたくなった為だ。


  私個人としては、この文書フォルダの内容がA君失踪前の渾身の悪戯だろうが、特定顧客の体験した事実であったとしても、どちらであったとしても残して置きたい。


 ただ、そんな気分から、内容を若干読み物風に書き換え、いつか私のような粗忽者がこのフォルダを見付け読んでくれる事を願い。ネットの渦の中へも放流した。



 賢明な君たちは、気付いたと思うが、『()()』が、その物語である。

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