エピローグ(1)戦い終わって
祝40万PV!
暫くエピローグ回が続きます。
なんとか戦略魔法を使って共和国の艦隊を撃退し、それに附随したアルトネ港への津波の襲来も、(やり方はどうあれ)ウィンディの頑張りで未然に防ぐことができた。
結果だけ見ればゲームの展開とそんなに変わらないわけだが、俺の負担が大き過ぎる展開だっただろ、コレ。
二度はやらんぞ、本当に。
「ああ、何とか上手いこと対処できたが、今回は本当に疲れたな。
……しかし、派手にやっちまったなぁ。これでもう、俺達の静かな学園生活はおしまいか」
久しぶりの全力だった。
ぎりぎりではあったが、共和国の陰謀をなんとか回避することができた。
余談だが、人質となっていた親父と姫さんには、こちらからはもう接触しない事にした。
だってこれ以上国家間の騒ぎに巻き込まれるのはゴメンだもの。
あとは政治の領分でなんとかしてほしいところだ。
「ワシもこの可憐な美少女っぷりを世間に晒してしもうたわい。もう学園一のアイドルとしてちやほやされざるをえんじゃろうなぁ〜」
ウィンディが俺の独り言に乗っかってくる。
今回は本当にウィンディに助けられた。学園に戻ったら約束のケーキや羊羹といったスイーツをいっぱい食べさせてやろう。
ウィンディと二人で、有名になった後についての事をあれこれと話しながら俺達はのんびりと学園に向けて帰投した。
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「うーむ、おかしい。なぜこうなった」
「不思議じゃ。まったくもって解せぬ」
ヴェルサリア魔法学園に戻った俺達を待っていたのは、周囲の「なんだコイツは」という怪訝な眼差しだけだった。
忙しそうに働いている周りの学生に聞いてみると、どうやら知らぬ間に、あの混乱を終息させたのはサキやフェリシア達ゲームのヒロインズと、ゲーム主人公であるクリスの5人の活躍だったという事に落ち着いたらしい。
まぁ、それだけサキ達の救助活動は、人々の記憶に残るほど鮮烈だったという事なのだろうけれども、ちょっとだけ腑に落ちないものを感じた。
……しかし考えてみると、俺とウィンディは皆が何も見えていない状況で共和国の連中を叩き、切り札を使って魔法の霧を払ったのだ。
更に、その後は2人の人質を救出するために、さっさとここから飛んでいってしまったんだったな。
……全然活躍が周囲から見えてないじゃん。
その事をウィンディに話すと、妙にニヒルな笑みを浮かべ、謎のポーズを決めてくる。
「ふっ……ワシはハードボイルドな大人の女じゃからな。闇に舞う影の戦士は、衆目に姿を晒さぬものなんじゃよ……」
全然似合ってなかったが、本人的に満足してそうだったので俺は突っ込むのを控えた。
まぁ、俺の平穏が保たれたという点では、結果オーライだった……のかなぁ?
「ご主人様ッ!」
作業が一段落したらしい仲間達が、俺のところに駆け寄ってくる。
「お、サキか。お疲れ様。よく頑張ったな!」
俺は労いの言葉と共に、抱きついてきたサキの頭を撫でてやる。
「えへへ〜、ご主人様に褒められちゃいましたぁ〜」
俺になでなでしてもらい、サキは大変御満悦だ。
「建物の被害は相当なものだったみたいだけれども、人的な被害はその規模に較べて大分少なかったみたいよ。
……勿論、全員を救えたわけではないけれど、間違いなく私達は最善を尽くせた。アルベルト、あなたのおかげよ。これは誇って良い事だと思うわ」
フェリシアは俺の方を真っ直ぐ見つつ、そう言葉を締めくくる。
面と向かって褒められると、なんだかこそばゆい感じだな。
「でもクリスくんがいてほんと良かったわぁ〜。手足の骨折とかもあっという間に治しちゃいましたし、光の魔法って凄いわねぇ〜」
メアリーがクリスの活躍を褒め称えている。
やはり光魔法はこういう時に役に立つな。
「ぼくはメアリーさんみたいに、土の魔法で上手に瓦礫に埋まっていた人を助けたりとかできなかったんだから、適材適所だったと思うよ」
クリスがそんなメアリーに優しい眼差しを向けていた。
お、クリスはメアリールートに行くのか!?
ちょっとワクワクしてくるな。
「……でもぼくは今回の一番の功績は、アルベルトくんだったと思うんだ。
一番最初に困難な状況をなんとかしてくれて、ぼく達を導いてくれたんだから」
そう言うと、クリスはキラキラとした眼差しでこちらを見つめてくる。
おいやめろ、クリス。そんな美少女面で男を口説こうとするんじゃない。
俺が男の娘趣味に走ったら一体どうするつもりなんだ。
「わ、私も貴方の活躍が一番だったと思いますっ!有象無象がなんと言おうと、あなたが一番素敵でしたっ!」
テンパって早口でこちらを褒めてくるリーゼ。なんかクリスを意識しているのか、張り合っているようにも見えるぞ。
「ははは、ありがとうよ」
俺はみんなに笑顔を向ける。何はともあれ、当面の問題は解決した。
死亡フラグとか色々な問題は山積みのままだが、今はひとまずの事件の収束を祝って、仲間達と勝利の余韻に浸るのだった。




