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アルベルトくん14歳。サル・ロディアス遺跡(2)

 遺跡の第3層は広い割にあまり人がよりつかないエリアだった。


 何故ならば遺跡にはセキュリティ機構の作動後、定期的に侵入者撃退用のゴーレムが巡回しているのだが、その頻度が第1層や第2層に較べて極端に多いからだ。


 ぶっちゃけ4層以降と大して変わらないのだ。

 そのためすでにめぼしいお宝が掘り出された感があるこの層を避け、初心者等はもっと浅い階層を。ベテランはもっと深い階層を選択する傾向にあった。


「ご主人様、今日もあの入口から地下に入るんですよね?あれってギルドの人とかに報告しなくていいんですか?」


「報告の必要はない。この層と繋がっているのだから、あそこもきっと3層だ」


 勿論そんなことはない。俺が”見つけた”3層にある隠し扉から繋がっているのは第12層。

 出てくるセキュリティゴーレムの力も獲られるお宝のレベルも相当高い。


「でも不思議です。あの隠し入口って凄く複雑に隠されていたのにどうしてご主人様は簡単に開けられたんですか?」


「単に昔読んだ文献に古代帝国時代の同じ様な構造があったんだよ。後は……まぁ偶然だ」


 勿論必然である。単に俺の前世知識でこのダンジョンの構造に対してある程度精通していただけだ。


 本来は学校(本編)が始まった後に、ゲーム主人公とフェリシアが、何かしらの重要アイテムをゲットするために遺跡を探索する話だった。


 確か依頼主は精霊だったか女神だったか、とりあえず凄い存在が裏で糸を引いていたはず。


 まぁそれは置いといて、裏技的に断片的ながらこの遺跡の知識がある俺は、それを活用して破滅ルート対策の一環で武装や便利アイテム、資金回収のために忍び込むことにしたのだ。


 なおこれは知識の活用であり、断じてチートではない。


 しかしこの2年の間に結構な数の遺跡に挑んできたため、気がつけば一般の冒険者へと与えられる5段階ある冒険者評価のうち、上から2番目に数えられる銀等級へと昇格してしまっていた。


 死のリスクがある破滅エンドを迎える前に、自分から家名なんかをオミットして冒険者稼業に身をやつした方が安パイな気もするが、実は魔法学校への入学はある程度以上の魔力を持つ貴族の子弟にとっては義務だったりするわけで、中々簡単に拒否することができなかったりする。


 そんなわけで俺はサキを連れてちんたらと目的地の隠し入口に向かおうとしたところ、丁度俺達の行く手を遮るように柄の悪そうな数人の男達が道を塞いできた。


「おい兄ちゃん。流石に今日のクレアさんに対する馴れ馴れしい態度はいったい何なんだ?

 我ら”クレアさん親衛隊”に対する敵対行動と見做していいのか!?」


 いきなりリーダーと思わしき男が因縁をつけてきた。


 どうやら朝のクレア嬢とのやりとりを見られていたらしい。


 以前冒険者の真似事を始めたばかりの頃はしょっちゅう見知らぬ輩に因縁をつけられていたので最近はハードボイルドな態度をとってそういった面倒事を避けていたのに、最近はあまり絡まれる機会が無かったことから逆に対応がなおざりになってしまっていたかな。


 ちょっと反省。


「おい、返事はどうした兄ちゃん!? あんたが銀等級だからってこっちが引っ込むとは思うんじゃねぇぞッ!」


 こっちが無反応なのが気に入らないのか、男達は更にヒートアップしている。


 なお俺の後ろにいるサキは、小声で「ご主人様があんなビッチにふらふらしていたからです。自業自得です」とぶつぶつ呟いていた。


 いつもだったら面倒事を避けようと色々と交渉をするのだが、いい加減面倒な気分になってきたんで俺はこいつらに宣言する。


「御託はいい。さっさと掛かってこい」


 そうして相手に対して手招きしてやった。


 一瞬キョトンとした男達は、その後烈火の如く怒り出し、俺に突進してきた。


 とりあえず一番近くにいるリーダーらしき男に狙いを定めた。


 直接的な動きで俺にナイフを打ち込んできている。


 俺は瞬時に左手で相手のナイフを持つ手を叩く。

 俺の掌打は相手の予想以上に強い力で手を叩いたのであろう。男はたたらを踏んでバランスを崩す。


 即座に残った右手で相手の顎に掌底を食らわす。


 強い衝撃で頭部にダメージを喰らった相手は、くずおれるように地面に倒れ伏した。


 次の相手は俺が即座にリーダー格を無力化したために棒立ちとなってしまった後ろにいた男だった。

 右足を捻り込むようにして相手のすねに強烈なローを叩き込み、思わず姿勢を崩してしまった相手に対して容赦なく右足をしならせて頭部に鞭のようなハイキックをお見舞いする。


 これで2人目。


 僅かな時間の攻防ですっかり戦意を失ってしまった相手に対して、「さっさとこいつら連れて帰れ」と促したところ、頭をペコペコ下げながらすたこらさっさと帰って行った。


 ああいう変わり身の早さが冒険者を続ける秘訣なんだなとちょっと感心してしまう。


 本格的な遺跡探索の前に軽いウォームアップが出来たのはまぁ良かった。


 俺達はこれ以上ムダな横槍が入る前にさっさと隠し入口から12層へと向かうのだった。


追伸


誤字報告感謝です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここ2、3話で地の文に無駄にキザったらしい言葉を使うようになったのはなぜだろう。 言葉の実験でもしてたのか?
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