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交渉

 HJ2次ダメでした。その心痛で文字数が少ないのです。嘘じゃないよ(一花風に)。

《テステス。あーあー、お前様、ワシの声キチンと聞こえておる?》


 俺の脳内に、ウィンディの子供っぽい声がこだまする。


《ああ、しっかりと聞こえているよ。次は視界の同調テストだ》


《了解なのじゃ!》


 一体、俺とウィンディは何をしているのか。簡単に言えば、遠距離で五感を共有するための通信テストを実施していたのだ。


 俺はウィンディの視界を借りるため、意識をウィンディにシンクロさせる。


 一瞬のタイムラグの後、……視界がクリアになった。


《おお〜、なかなか壮観な眺めだな!》


 ウィンディの視点を介して眼下の大洋を眺めて見ると、エクスバーツ共和国の渡洋艦隊が、堂々たる隊伍を組んで、洋上を進んでいた。


《まさに『黒鉄の浮かべる城ぞ』、ってヤツだなぁ》


《……なんじゃそれ?》


 おっと。うっかり”軍艦マーチ”の歌詞を引用してしまったが、ウィンディにとってはさっぱり分からない内容だっただろう。


 ウィンディは今、渡洋艦隊の遙か上空から艦隊の様子を監視し、遠く離れた俺にその様子を伝える観測員のような役割を担っていた。


 なお、俺が今どこにいるのか。それについてはまた後ほど話そうと思う。


《ウィンディ、一応”拡声”の魔法で相手に撤退勧告をするぞ》


 俺の発言にウィンディはめんどくさそうな顔を浮かべる。


《え〜。向こうが一方的にこちら側へ攻め込んできたのじゃから、こっちも不意打ちで向こうさんに撃ち込んでも別に問題ないと思うんじゃがのぉ?》


《そりゃそうだが、俺としては甘いかもしれないが相手が撤退するに越したことはない、って思っているからなぁ》


 下手人は直接市民を襲ったヘルメス一党の騎士連中なのだから、共和国の艦隊が引き返すのならば俺としては深追いするつもりはなかった。


《お前様が言うても多分ムダじゃと思うんじゃがなぁ〜》


《気分の問題だよ、気分の》


 そして俺はウィンディを介して魔法を使う。

 ターゲットは、真ん中にある一番でかい船の艦橋付近だ。


「あ〜あ〜。こちらはフレイン王国の魔法使いです。共和国の船の人、聞こえてますか?」


 この魔法は、こちらの声を向こう側に届けるだけではなく、範囲内の向こう側の声をこちらに集音することができる優れものだった。

 すぐさま反応が返ってきた。


「き、貴様は一体何者だ?どうして我が艦隊の動向を捕捉している!?」


 ん、なかなか偉そうなヤツからの反応だな。これは当たりかな?


「俺が誰かは、ヘルメスあたりに聞いてくれ。

 んで、こちら側の要求を伝えるが、今回の拉致事件に関するお前達の国の正式な謝罪と賠償を要求する。

 民間人の犠牲者も出ているんだ。イヤとは言わせないぜ」


「……まさか貴様が五〇一部隊を……?」


 向こう側からどよめくような驚きの声が聞こえてくる。


「まぁ、そんなところだ。こちらとしてはあのヘルメスの部隊には、自衛権の範囲内で断固とした対応をとったわけだが、別に共和国全体と戦争をしたいわけじゃない。

 だから、今引き返すんなら、お前らは見逃してやる。いらん被害を出す前にさっさと帰れ」


 俺の気遣いあふれる心優しい言葉に対して、黙り込む共和国の面々。


「……船乗り生活二十年で、こんな屈辱を受けたのは初めてだな」


「ん?」


 何か予想した反応と違うぞ?


「貴様がどこの誰だかは知らない。……確かに今回の件に関する我が共和国の振る舞いは、専横の(そし)りを免れないだろう。

 だが、共和国の騎士にも誇りはある!

 どこの誰とも知らないヤツに、ここまで侮辱を受けておいて、おめおめと尻尾を巻いて帰れるものかよ!!」


 あれ、なんか怒っているぞ?


「私の名は、ジャン!エクスバーツ海軍旗艦『ソレイユ・レピュブリク』副長、ジャン・ルクレール中佐だッ!

 王国の魔法使いよ、我々は一路アルトネ港を目指す!逃げも隠れもせん!止められるものなら止めてみせよ!!」


 アルトネ港って例の秘密工作船が繋留されている港町か。

 しかし堂々と行き先を告げて、こちらに喧嘩を売ってきやがったな。

 ……騎士ってめんどくせえ性格をしているが、俺はそういうヤツは嫌いじゃない。


「分かった。船乗りは船と命運を共にするんだな。

 ……だが警告はしておく。俺は貴艦の船首側に大穴を開ける予定だ。だから、なるべくそこには人員を配置しない方がいい。これは貴君の振る舞いに対する俺なりの誠意と受け取ってほしい」


 そう言い置いて、俺は魔法を解除した。


《う〜む、交渉が決裂してしまった。一体何がいけなかったのだろうか?》


 俺は腕を組んで悩んでいたが、ウィンディの呆れ声が脳内に届いた。


《あれで交渉……お前様、完全に相手へ喧嘩を売っておったぞい》


《え、マジで?》


 ウィンディに指摘されるなんてなんという屈辱だ!


 しかしこれで力押しでなんとかすることが確定した。俺は早速、艦隊を迎え撃つ準備を始めるのだった。

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