学園トーナメント(5)
祝、20万PV達成。
しかし毎日しんどいですねぇ。
クリスに呼び出された翌日。
俺はいつもと変わらずに、のんべんだらりと教室で寛いでいた。
例えクリスの探している人物があの白髪の魔女だとしても、現状では全く俺との接点がない。
つまり考えるだけ無駄だ。
そんな時は体力を温存するためにも、休むのが一番だ。
……決してズボラというわけではないぞ。
しかし、ヴリエーミアの暗躍が確認されたのだから、早くゲーム主人公を見つけてサキとフェリシア以外のどれかのルートを進めてもらわないと困るよな。
最悪、この世界自体がバッドエンドになってしまうリスクだってあるんだからさ。
まぁ、どちらにしても俺のようなモブの悪役の出番はないだろうな。あくまでもこの世界の主役は、ゲーム主人公達なのだから。
そんなことをぼんやりと考えていると、担当教授のシミラーさんが教室に入ってきた。
「生徒の諸君、おはよう。今日はいよいよ学園トーナメントの代表者を決める日だ。早速だが2回戦を突破したものは、くじを引いてくれ。
3回戦の対戦相手を速やかに決定するためにな」
気は進まないがくじを引くか。
周りは俺が3回戦まで残っている事に納得していないのか、不満な表情を浮かべている者が多い。
だが安心しろ。俺が次でリタイアする事は、すでに俺の中では決定事項だ。
ゴソゴソとくじを引く。
さて、俺の対戦相手は……
ーーーーー
「ぼくの3回戦の相手はアルくんだったんだね。
アルくんには、これまでたくさんの恩義があるけれど、そこは忖度しないで正々堂々と戦わせてもらうよ!」
ここでまさかのクリスだった。対戦する確率は3分の1だったのに、運が良いのか悪いのか。
「なぁ、クリス。俺の不戦敗で良いからさ、さっさと終わりにしようぜ」
「そ、そんなのダメだよ!正々堂々と戦わなくっちゃ!
……本気でやってくれないと、ウィンディちゃんの事みんなに話して、アルくんが実は凄い人なんだって事を大声でみんなに拡めちゃうよ?」
クソッ、この真面目くんめ。だが、ウィンディの存在がバレたところで、目立つ以外に大した実害は……ん?あるのか?
とりあえず『ロリコン』というレッテルがくっつく可能性はあるのか。
最近、サキとフェリシアだけではなく、クリスとも一緒にいることが多いため、俺に対する陰口のレパートリーに『二刀流』というヤバいワードが加わっている事を、ウィンディからこっそりと教えてもらった。
これ以上変な噂が拡がったらたまらないな。
「よし分かった。真面目にやろう」
クリスにバレない程度に真面目に手を抜こう。
「それでは3回戦、始めッ!」
シミラー教授の合図と同時に、クリスが俺との距離を即座に詰めてくる。
俺は直線的に木刀を振り下ろしてくるクリスの攻撃を、自分の木刀に当てて横に逸らして、打ち合いを続ける。
クリスの攻撃は直線的だが、重心のバランスが良いのか、木刀の戻りがとても速い。どうやら”身体強化”の魔法を薄くかけているようだ。
無意識に近い形で魔法を行使しているため、スキがほとんどない。
段々とお互いの切結びが速くなっていき、手加減の余裕がなくなってくる。
「チッ!」
俺は斬り合いを中断し、蜻蛉を切って大きく後ろに跳ぶ。
俺の修めた剣術は、本気になった瞬間に相手を容赦なく斬り刻み始める。得物が木刀だろうが関係がない。
このままだとクリスを本気で斬ってしまう可能性があったため、俺は剣での応酬を止めた。
俺がさてどうしたものかと、ひと呼吸置いたとき、クリスはこちらに時間を与えまいと素早く呪文詠唱を始めていた。
「”気弾”ッ!」
魔法力を単純に物理的衝撃へと変えただけの、初歩的な魔法だった。
ドカンッ、ドカンッ、ドカンッ!!
しかし、単純であるが故に出足が速く、こうも連続して撃たれると避けるのにも苦労する。
更にその魔法の威力はいつかの木刀を圧し折った時の威力とそう変わっていない。
つまり、俺には無害だが、闘技場に穴を開けまくる程度にはインパクトがある魔法なのだ。
観衆がこちらの試合に注目しているのを感じる。
クソッ、衆人環視でやりづれぇなぁ。
しかし、クリスのヤツ、最大魔力は多くないとの自己申告だったが、この威力の魔法を連発できるヤツがそんなに少ないとは正直思えないんだがなぁ。
まぁ、今は試合に集中しよう。詮索するのは後だ。
「”風盾”ッ!」
俺はクリスの魔法を避けつつ、ゆっくりと紡いでいた魔法を解放する。
”風盾”は、風魔法系統の防御魔法だ。風の障壁を任意の場所に展開し、相手の魔法や物理的な攻撃を遮断するものだ。
俺はその魔法を自身の前面に展開し、クリスの”気弾”の連撃を受け止める。
ドガガガガガガッッ!!
クリスの”気弾”が俺の”風盾”に真っ向からぶつかった衝撃で、俺の周囲には強烈な土煙が巻き上がる。
暫くしてクリスからの攻撃が止み、土煙の中から俺はその姿を現した。
その姿は土埃に汚れて、手にしている木刀も圧し折れ、みっともなく尻餅をついている有様だった。
「いやぁ〜参った参った。降参、降参!」
俺はボロボロの木刀を手放し、両手を挙げて負けを認める。
これだけ演出すれば皆納得するだろう。
実際に、周りのギャラリーの大半は俺達への関心をなくし、別の試合を見に移っていっているしな。
俺はそのままの姿勢でシミラー教授のアナウンスを待つ。
しかしいくら待ってもシミラー教授の終了の合図が飛んでこない。
「教授、早くコールを……」
「何をしているアルベルト?まだ10分経っていないぞ!」
俺が教授に終了を促したら、教授は俺に試合続行を宣告したのだった。
【追伸】
なんかHJ2019で1次突破したみたいです。
皆さんの応援のおかげではないかと思います。
本当にありがとうございました。




