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学園トーナメント(1)

 祝1,000pt突破。

 皆さんありがとうございます。

「以前から告知していたが、本日から学園トーナメントが始まる」


 担任のシミラー教授が、俺たちにトーナメントのルールについて説明し始めた。


 学園トーナメントは、まずクラス内で代表者を2名選出したうえで、4クラス各2名の計8名が公開の場にて、その魔法実技を一般に披露するものである。


 学園トーナメントの当初の目的は、入学して2ヶ月経った学生達の実技披露を通じて、魔法学習の進捗状況を確認することと、市井の人々に魔法についての啓蒙活動をすることだったそうだ。


 しかし、長い歴史の中で大会の目的は徐々に変質してしまい、今ではただの見世物の魔法武術大会に成り下がってしまっていた。


 なお、クラス代表者の選抜方法はいたって単純(シンプル)だ。

 まずクラス定員30人を半分に分けて、15人の山を2つ作る。

 そして、あとは各山ごとに1対1のどつきあいをトーナメント方式で行い、勝ち残ったヤツが代表者になるというわけだ。


「よ〜し、お前ら。これからクジを引け!」


 シミラー教授は一通り説明を終えると、教壇の下の方から各辺30cm程度の立方体状の箱を取り出した。

 あれがくじ引きの箱か。


 みんなだらだらと教壇の前に並んで、箱の中からくじを引いていく。


「やれやれ……俺はシードか」


 各山の人数が15人なので、一人だけシードとなり1回戦が免除されるのだ。


「アルくんはシードなんだ。すごい強運だねぇ」


 クリスがニコニコしながら俺の引きの強さに対して感心している。

 ぶっちゃけさっさと負ける予定なので俺としてはどうでも良かったのだが。


 俺にとってこの大会の重要な点は、ゲームの流れを踏襲すると、ゲーム主人公がこの大会に優勝して各種の実力組織から目をつけられることにあった。

 だからひょっとすればこの大会で、未だお目にかかっていないゲーム主人公が、その姿を現すかもしれないと俺は密かに期待しているのだ。


「アルベルト(うじ)、アルベルト氏〜。この大会で、我が一子相伝の暗殺剣術『天然温泉流』の真価が問われるのですぞ〜!」


「お前この前は『天然記念流』って名乗っていたじゃねぇか……」


「お、そうだったでござるか?

 いやぁ、我輩は数多くの剣術の真髄をマスターした(おとこ)ゆえ、どの流派だったのか忘れてしまったのですゾ〜」


 俺の嫌味を全く取り合わずに朗らかに応えるエドワード。

 こいつ精神力だけは金剛石(ダイヤモンド)クラスだよな。


「さて、貴様ら無駄話は終わりだ。各人戦闘訓練用の装備を整えて、白の9刻(午前9時)に武術教室に集合しろ。

 ひとまず解散ッ!」


 シミラー教授の気合の入った言葉の後、皆更衣室等に向かう。

 俺は一応貴族なので、自分の寮に戻って装具の点検だ。


 下級貴族や平民らは基本的に学園が支給する既製品の戦闘服を着るのだが、中級以上の貴族の子弟だとワンオフのオーダーメイド品を選ぶ傾向にある。


 俺は冒険者時代に手に入れた、古代帝国製のソフトレザーアーマーを装着する。


 この鎧は高レベルの魔獣の革を加工して使用されており、軽さの割に高い防御力を誇る一級品だ。

 一見すると刺繍の施された黒いロングコートの礼服にも見えるこいつなら実用性だけではなく、いかにも貴族が好みそうなデザインをしているため、着ていても違和感がないだろう。


 あとは試合中に使う予定はないが、仕込みの武器等をつけていく。


 これは冒険者時代のクセみたいなものだな。実際の試合では殺し合いではなく模擬戦闘なので、魔法を除けば素手か精々が木刀くらいしか使わないのが暗黙のルールだ。

 しかし長く身に付いた習性で、予備の武器や道具を持っていないと落ち着かないのだ。


 これはもう、職業病みたいなものだな。


「お前様は相変わらず戦争に行くみたいにゴテゴテしとるのぅ」


 ウィンディが呆れたようにツッコミを入れる。

 それは仕方がない。ソフトレザーだけだと軽すぎて何か落ち着かないのだ。


「装飾に紛れるように隠してあるからバレないだろ」 


「まぁ、確かに一見するとゴテゴテと着飾った衛兵みたいじゃしのぉ……しかし色が悪い。黒はダメじゃ。緑にせい、緑に」


 俺は目を瞑り想像する。緑色に包まれた俺自身の姿を。

 しかし思い浮かんだのは前世で見た陸軍の緑色のかっこいい礼服等ではなく、某コーラの桃太郎CMに出てきた孔雀緑色の羽根に包まれたパリコレにでも出てきそうな前衛的で派手な鳥の服飾だった。


「それはダメだ。完全なキ○ガイだ」


「な、ナゼじゃッ!?」


 俺が真顔で拒否した事が大層ショックだったのか、ウィンディがしょんぼりと凹んでいる。

 ちょっと悪いことをしたなと思ったので、この前買っておいた甘いビスケットをお詫びにあげた。


「ん〜、とっても美味しいのじゃ〜♪」


 もぐもぐと美味しそうに、ビスケットを口いっぱいにほおばるウィンディ。さっきまでの凹んだ姿がどこに行ったのか、一気に元気になった。

 うちの精霊王様はやはりお子様だった。


「さて、そろそろ会場に行くか」


「のじゃ!」


 俺はウィンディと連れ立って、武術教室に向かうのだった。

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