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結社のさいご(前編)

 結社の設定が二転三転してしまい、難産でした。

 本当にしょうもないところで躓くな……

 姿勢良く、自分の席で読書に勤しんでいる男がいる。


 彼の名はロベルト・ディ・モールト。由緒正しきモールト家の嫡男だ。


 貴族の子弟の中には、学園に設置されている幼年学校から入学する者も多く、ロベルトもその例に漏れず、エリート教育の一環として幼年学校から学んでいるエスカレーター組の1人だった。


 彼は、高い魔法の素養と優秀な学業成績を維持しており、クラス1の優等生で名が通っていた。


(私のように偉大な一族の血を引く貴族は、平民どもを導くためにも常に範となる実力を養っておかねばならないのだ)


 彼は片時も努力を忘れずに、教養の研鑚に努めている努力家でもあった。


「おはようございます、ロベルトくん!」


「おはよう!」


 読書をしていたロベルトに気さくに声をかけてくる平民のクラスメイト達。

 彼らに対し、ロベルトは鷹揚に軽く手を振り返す。


 一見するとクラスでの何気ない光景だ。だがしかし、ロベルトの内心では今のクラスメイトの対応に腸が煮えくり返るような思いを抱えていた。


(偉大なる貴族の系譜につながるこの私に!たかが平民風情が気軽に声をかけやがってッ!)


 ロベルトは、その表面上の好青年ぶりとは異なり、幼年学校の貴族階級の同窓を中心に結成された貴族至上主義を標榜している、秘密結社憂国青年騎士団の議長を務めているという裏の顔を持っていた。


 生粋の貴族至上主義者である彼は、平民と同じ教室で過ごすことに対して強い憤りを感じていたのだ。


「ああ、おはよう」


 彼は内心の怒りをなんとか押し隠し、平静な態度を取り繕う。


 彼が不愉快な気分をなんとか抑えていたそんな矢先に、タイミング悪く彼の気分をさらに害する光景が再び目の前に現れた。


「おい、サキ!いい加減自分の教室に戻れ!」


「イーヤーでーす。まだまだ時間がありますから戻りませんよー」


 彼の目の前で2人の若い男女が仲睦まじい様子を見せつけている。


 長身痩躯の男の方はアルベルト・ディ・サルト。ロベルトと同じく、それなりに名の知られた貴族の家柄に生まれた男だったが、彼から見ると、ひどく無能な男だった。


(亜人の女は確かサキと言ったか)


 もう一人の女の方は、なんと亜人だった。

 身分賤しき奴隷の分際で、この学校のおかしな風習のせいで飼い主(アルベルト)と気軽に触れ合い、大手を振って歩いている、と彼は内心大変に不満を感じていた。


 しかしそれ以上に不満だったのは、平民共に対して範となるべき上級貴族であるアルベルトが、亜人の奴隷如きにいいように扱われているのが、彼にとって大変に我慢ならない光景だった。


 まるで躾のなっていない野良犬が、主人に噛み付いているようだと感じたからだ。


 同じ貴族としてあのような堕落した姿は、本当に赦せない。


 しかしロベルトは門閥貴族らしく、直接手を下すのを好まない。

 だから平民を介して、あのような愚か者をしっかりと躾ける必要があるのだ、と益々意を強くするのであった。


ーーーーー


 時間が経過し放課後となった。


 ロベルトは結社の秘密会合に出席するために、結社のパトロンによって準備された部屋へと入る。


 この部屋は彼らが幼年学校の頃より幾度も使用してきた部屋だ。結社の活動は幼年学校時代からだったので、随分と昔から使用しているように感じる。


 薄暗い室内には、フードを被り結社に属している事を証明する結社の紋章が刻まれたペンダントを付けた彼の同志達がすでに並んでいた。

 貴族主義的な調和を感じる光景に、彼は大変満足する。


「よし、全員揃っているな。ではこれより我ら憂国青年騎士団の定期会合を……」


「議長」


 彼がいつものように、主催する結社の会合を始めようしたちょうどその時、メンバーの1人が突然に挙手をした。


「どうした、ガンマ?緊急の意見があるならさっさと述べ給え」


 ロベルトは、ガンマのコードネームを与えられている少年を問いただす。

 少年は、下級貴族階級の出身であり、この結社の秩序をよく理解している幼年学校時代から参加しているメンバーの1人だった。

 だからこそ、このように議長の発言を遮るような不作法をなぜするのか理解に苦しんだ。


「はい……議長が来られる前にみんなには話したんですが……俺、もうこの組織から抜けようかと思います」


 ロベルトは一瞬、意味が分からなかった。


「すまない同志よ、私は幻聴が聞こえたようだ。もう一度言ってくれないか?」


 ロベルトはなんとか激情を抑え、冷静にガンマに問いかけようとする。しかし怒りによって声の震えを抑えきることはできなかった。


「俺、この組織から抜けさせていただきます」


 バンッ!!


 激情に駆られたロベルトは、机に両手を叩きつける。


 ロベルトはガンマが言っていることを理解することができなかった。

 この組織は貴族階級の者だけが加入を許されている特別な結社だ。

 その誇りある結社を、義務を果たさずにおめおめと抜けようなどとなぜ言えるのか、彼にはとても受け入れられる提案ではなかった。


「どういう事だ!私が納得の行く説明をしろ!」


「すいません。理由は言えません。俺はまだ死にたくない」


「死ぬ、だと?全然分からん。一体どういう事なんだ!?」


「すいません議長。言えません。すいません」


 ガンマは最後まで理由を話すことなく、結社からの脱退だけを訴えた。


 結局、ロベルトは彼を押し留めることができず、彼は結社から除名された。

 後編は早ければ今週、遅くとも来週中には投稿します。

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