アルベルトくん14歳。エピローグ(1)
祝・10万文字達成
俺達がサル・ロディアス市に帰還してから3日が過ぎた。
その3日間を使って、女神とウィンディと翡翠丸は、正規の手続きによる”世界創造”の解除儀式を行っていたらしい。
きちんと解除が行われれば、この世界に捕らわれていた総ての魂が、元の世界のそれぞれの器へと帰れるとのことだ。
そしてこの世界の記憶は夢のように忘れてしまうらしい。
なお、俺、サキ、フェリシアの3人は別だ。
だって俺達は肉体ごとこの世界に迷い込んでしまったイレギュラーな立場なので、そのまま返してもらわないと大変な事になってしまうからな。
そんなわけで、サル・ロディアス市庁舎の壊れていない一室に俺達は集まっている。
「えぐえぐ……私、あなたに手紙を書くからねぇ……」
「女神様、天界から手紙なんてだせるわけないじゃないですか……」
俺達はここでお別れとなる女神様やサルヴェリウスさん達と、さよならの挨拶をしていた。
そして何故かは知らないが、えらく俺に対して未練がありそうな女神様と、別れのハグをする。
……ハグってよりも抱きつきのような気もするが、まぁいいか。
「うぇーん、寂しいよぉ……」
「女神様、キャラ違ってませんか?」
「あはは、アホじゃのうお前様。このババァは年甲斐もなくお前様に盛っておるんじゃよ。
昨日の夜も部屋でこっそりと、オゴォッッ!!」
女神の肘が綺麗に入ったウィンディは、一瞬で10mは離れている壁にめり込んだ。瞬間移動芸みたいだな。
そんな2人を尻目に俺はサルヴェリウスさんと握手をする。
「アルベルト君、キミには世話になったな」
「いえ、こちらこそ帰還のために色々と手伝ってもらい済みませんでした」
「では達者でな」
「さようならサルヴェリウスさん」
男同士の別れなんてこんなもんだ。
一方、女側の別れのシーンなのだが……
「女神様、うちのご主人様が大変お世話しました。
さっさと天の座に引っ込んで、私とご主人様の明るい未来を遠くから指をくわえて眺めていてくださいね」
「あなた確かサキ、と言いましたか。
……彼、結構テクニシャンだったわよ」
「!……おかしいです!ご主人様からはあなたの臭いはしなかったです!
あなたは嘘を言ってます!」
「好きに解釈して良いわよ。まぁ、一時的に彼を預けておくわ。
彼が死んじゃったら、彼の魂は私が貰っちゃうけどね」
何か身に憶えの無いことで、サキと女神様の間でプチ修羅場が形成されているが、気にしないでおこう。特に最後の一言は。
「え、えーと助けていただきありがとうございました、サルヴェリウス様」
「フェリシア。これからもローティス家をしっかりと盛り立てていってくれたまえ。
……天の加護があなたにありますように」
サルヴェリウスさんとフェリシアは、なんだか親子みたいな会話だな。
偶然か必然かは分からないが、同じローティス姓なのでひょっとしたらフェリシアはサルヴェリウスさんの子孫なのかも知れないな。
「さて、女神よ。天の座に帰ってしっかりと結界の維持に努めるのじゃぞ。ではまたな」
「は?何を言っているのです、ウィンディ。
あなたも天に帰るのですよ」
「え、ワシは帰らんぞ?
折角移動に融通が利くアルベルトが手に入ったのじゃ!
もっとこっちの世界で遊ぶのじゃあ!!」
「何であなただけ遊ぶんですか!帰りますよ!」
「ぎゃあぁぁ、アルベルト、助けておくれぇぇぇ!!」
無理矢理にドナドナされていくウィンディ。
ちょうどそのタイミングで、世界全体の輪郭がぼやけていく感じになった。
「時間です。名残惜しいですがここでお別れのようですね。
アルベルト、そしてその他のどうでもいい皆さん。さようなら~!」
「さよなら!」
「ふん、毒婦めっ!」
「さようならぁ!」
「さらばだ」
「え、ワシまじでこんなんで終わりなの?」
「………………」
眩しい閃光が辺りに広がり、目が開けていられなくなってくる。
そして一瞬の浮遊感の後、俺達は長い年月の経過が感じられる、苔むした廃墟の上にいた。
「ここは……?」
サル・ロディアス遺跡に帰ってこれたのだろうか?
「何となく見覚えのあるサル・ロディアス遺跡のような気もしますが、人の気配を全く感じませんね」
「私は護衛に囲まれて歩いていたから、あまり地形とか判らないわね」
とりあえず俺達は、ここが見知った遺跡であることを信じて、遺跡の入り口に歩を進める。
人の気配を感じず不安になり、どうしても早歩きになってくるのが否めない。
「おかしいです。この遺跡がこんなに静かだなんて。やはりあの女神が何かミスをしたに違いありません」
サキは女神様に対して当たりがキツすぎないか?
広い遺跡ではあるが、所詮は一つの都市に過ぎない。
そして30分後、俺達は遺跡の入り口に到着したのだった。
【追記】
誤字報告ありがとうございました。




