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アルベルトくん14歳。風の女神(11)

 サルヴェリウスさんがバルガスの身体を乗っ取った後、蛮族側、市側の両方を上手く指揮する事によって、無事にサル・ロディアス市の都市機能の停止作業が行われ、残った住人2割の脱出も成功した。


 当初蛮族の部隊では、追撃戦を主張する者が数多くいたが、バルガス(サルヴェリウスさん)が「支攻部隊の我々が安易に戦線を広げるのはまずい」、と戦術的な問題を指摘して上層部を納得させて、分遣隊を組織して地域の掌握を優先する事になった。


 そしてバルガス(サルヴェリウスさん)は地域の有力者の地位をほぼ安堵する事で、無血でその勢力を傘下に収め、結果として、大きな混乱もなく地域を安定させる事に成功したのだった。


 その功績によりバルガス(サルヴェリウスさん)は、この地域の支配権を手に入れ、政略結婚でこの地域を支配していたローティス家(彼の元の実家)と姻戚を結ぶことで、大きな混乱もなくフェリシアの家系が出来上がっていったのだった。


 ……そうか、バルガスがフェリシアのご先祖様なのか。そりゃあ、武闘派になりそうだな。


「アルベルト……」


「ん?」


 憑き物が落ちたかのように、落ち着いて話しかけてくるヴェルテ。


「人の上に立つ者の気概を……初めて教えてもらった気分がするわ。

 私は人間という種を……定命であると見下し過小評価していたのかもしれないね」


 彼女にとってもこのサルヴェリウスさんの行動は何かしら心に期するものがあったようだ。


「別に見下していたわけではないだろ?

 もっとも、サルヴェリウスさんと同じような状況で、ここまで果断に的確な判断が下せる人間が何人いるか正直分からないけどな。

 まぁ、上に立つ者の理想像として、今回のケースを認識しておけば良いんじゃないかな?」


「……そうかな。うん、そうする」


 両手を絡ませて、うーんと上体を反らしストレッチしながらはにかんだ笑顔をこちらに向けるヴェルテ。


 緊張のほぐれた俺は、今更ながら俺とヴェルテの格好に気がついて頬を朱に染める。


 そういえば精神体であったが故にずっと裸だった。


 素の精神状態に戻ってしまったため、今更ながら羞恥の心が目覚める。


「……じゃ、じゃあ女神様。そ、そろそろ精神世界から抜け出して女神様が構築したサル・ロディアス市に戻りましょう。

 この世界で大分時間をかけてしまいましたから、早急に”世界創造”の魔法を解除してもらわないといけませんからね」


 こちらが急に目線を逸らし、顔を赤くしているのを見て、最初はキョトンとしていたヴェルテだったが、何かを察したのかいきなりニンマリと小悪魔的な笑顔を浮かべる。


「大丈夫だよ、アルベルト。この世界は言ってみれば私の夢の中。時間感覚は外と違うし、大きな傷がつかない限り、肉体への影響もないよ」


「そ、そうなんですか。でもお互いこんな格好ですし、さっさと戻った方が良いんじゃないですかねぇ女神様」


「あれぇ、私の事はヴェルテって呼んでいいって言ったでしょ?

 あとさっきからどうして私の方を見ないのかなぁ?

 さっきまで情熱的にキスしたり抱きつい(ハグし)たりしてくれたのにぃ~」


 目を逸らす俺の顔を両手で包みながら、ウリウリぃ~と、わざと大きな胸の膨らみを俺の肌に密着させてくるヴェルテ。


 ダメだって!そんなことすると……


「お、口では色々ごまかしても身体の反応は正直だねぇ~。

 よしよし、今回の功績を祝して、お姉さんが直々にアルベルトを男にしてあげよう!」


 すげぇ上から目線でとんでもない提案をしてくる女神(ヴェルテ)


「え!?いや!結構ですっ!俺まだ、そういうの早いと思うから!」


 そう断ろうと口では提案しているのに、何故か勝手に彼女を抱きしめる我が身体。


「御免ねぇ。実は私の方があなたを欲しがっているの。

 あ、安心して。これは夢みたいなものだから、ちゃんと精神世界から現実に戻ったらキレイサッパリ記憶から無くなっているから!」


 安心できる要素がねぇ!俺は抵抗を試みるが、柔らかくて気持ちの良い感触がそれを邪魔してくる。


「それにほら、私はこれで天の座に戻らなければいけないから、最後にちょっとだけ良い思い出が欲しいかなぁ……って思ってね。

 別に現実世界の方で何か有ったわけではなく夢の世界の話なんだからさ、大目に見て。ね?」


 軽い口調の中に切実な想いが見え隠れしてしまい、軽く言葉を返せなくなってしまう。


(今までずっと苦しんできたんだから、ちょっとした我が儘くらいには……)


 俺は自分の意志で口づけをヴェルテに返す。

 咄嗟の行動でキョトンとしているヴェルテに告げる。


「ちゃんと後で記憶消してくれよ。これは夢なんだから現実でしこりが残っても色々と困るから、さ」


 何でしこりになるのか自分でもよく分からなかったが、とりあえず言っておく。


「おっけぇ~」


 軽い感じでヴェルテは返事して、ガバッと俺に襲いかかる。

 普通男女で立場が逆じゃないかなと思いつつ、受けとめる俺。


 …


 ……


 ………………


 結局俺とヴェルテはどこまで進んだのか……俺にはその後の記憶がないので今ではもう分からない。

次の投稿は6月24日です

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