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アルベルトくん14歳。風の女神(6)

「よくぞ来おったな、お前様!

 こここそが、風の女神の心象風景の中じゃよ!」


 気がつくと、俺の目の前には()()のウィンディが仁王立ちをして立っていた。


 因みに俺も素っ裸であり、さっきまで手にしていた翡翠丸を始めとする武装は総てどこかにいってしまっていた。

 更に先ほど受けた深手の傷跡も残っていない。


 多分、女神様の精神世界の中だからかな?


 周囲を見回してみる。

 そこは一面ファンシーな世界だった。

 パステル調の色彩で空間が彩られており、デフォルメされた動物やモンスターがふわふわと宙に浮かび、牧歌的に日向ぼっこをしているような有り様だった。


「一見すると長閑(のどか)な感じに見えるのじゃが、そこが曲者なんじゃよ。

 雰囲気に誘われて眠ってしもうたら、この世界に取り込まれてお仕舞いじゃ」


 なんだか食虫植物みたいな世界だな。


「ワシはここで、この精神世界からいつでも撤退できるよう、結界を維持しておくわい。

 これ以上進むとこの世界に取り込まれそうじゃしな」


 そう言って渋面になるウィンディ。


「恐らく、その道を真っ直ぐ進めば女神の所に辿り着くじゃろ。そして女神に会えたならば……例の作戦で行けば問題ないじゃろうて。

 道のりは険しいじゃろうが、健闘を祈るぞい」


 俺はウィンディが指し示した道を眺めてみる。

 なるほど。確かにどこまで延びているのか定かではないほど、延々と土の道が続いているな。


 俺は覚悟を決めるとウィンディに手を振り、その道を歩き始めた。


 どこまで延びているか分からないが、歩ききればきっと女神に会えると固く信じて。


ーーーーー


「フェリシア様。先程のご主人様へのお別れの言葉は一体……?」


 サキは怪訝な眼差しでフェリシアを見つめる。


 フェリシアは穏やかな眼差しで、眠っているアルベルトに膝枕をしながら、その顔を優しく撫でていた。


「……アルベルト(こいつ)には言わなかったけどさ。実は我が家に伝わる”精神接続”(この魔法)って禁忌の魔法なのよ」


「禁忌……ですか?」


 サキはその語感に眉をしかめるとフェリシアに話の続きを促す。


「そ。なんでかと言うと、この魔法には重大な欠陥があってね」


 そこでちょっと言い淀むような気配があったが、フェリシアは言葉の続きを話す。


「その欠陥っていうのはね、この魔法の解除後に、その術者は魔法の反動でずっと眠り続けることになっちゃうってこと」


 サキは頭に浮かんだ疑問点をフェリシアにぶつける。


「でも別に寝ているだけでしたら無理矢理起こせば起きるんじゃないですか?

 若しくは解呪の魔法でなんとかすれば……」


「私より以前にこの魔法を使った人に関する記録によると、どんな解呪の魔法でも解けなかったみたい。

 また、この眠りは呪いの眠りだから外からの力で目覚めさせる事は難しいみたいね」


 悲しそうな眼差しでサキがフェリシアを見ていることに気がつき、フェリシアは慌てて明るい声を出す。


「あ、でも別に死ぬって訳ではないからそこは心配しないで。

 過去に目が覚めたという伝説も残っているくらいだし、そこまで悲観的にならなくても大丈夫だと私は思うな」


 しかし、とサキは考える。

 醒めない眠りというのは、実質的に死んでいるのと大して変わらないのではないか、と。


「フェリシア様は非道いです。どうしてフェリシア様はその事を先にご主人様に伝えなかったのですか?

 もしこうなることを知っていたならば、ご主人様は絶対に魔法の使用を認めなかったと思います!」


「……そうね。でもそうしたらどうやってこの世界から脱出できるの?」


 周囲は不気味な音が鳴り響いており、終末は近いのではないかという気分にさせられる。


「そ、それは……」


 真顔でフェリシアに問われ、サキは返事に窮してしまう。


「世界が崩壊しそうだって時に迷っている暇なんてなかったでしょ。

 それに私は死ぬわけではないわ。さっきも言ったけど、過去の文献によると魔法の眠りから目覚めた、っていう伝説みたいな記述も有ったし希望はあるわよ、きっと」


「ですが……」


「はい、もうこの話はお終い!

 で、サキ。あなたに1つ頼みごとがあるのだけれどよいかしら」


「私に頼みごと……ですか?」


「そそ。あんたにしか頼めないこと」


「それは一体?」


「ええと、それはね……」


 そういうとフェリシアはサキに続きを話し始めた。

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