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アルベルトくん14歳。閉じた世界(6)

 ウィンディはこの世界の成り立ちについて俺達に説明してくれた。


「ここは、本当の歴史ではすでに滅んでおる”サル・ロディアス”を、女神がその何もかもを複製する事で、あたかも皆が平和に暮らしておるかのように見せかけておる女神が創り上げた仮初めの世界なのじゃよ」


 やはりここは過去に飛ばされていたわけではなく、風の女神によって創られた世界だったのか。


 余談だが、ゲーム設定上の俺達の世界は、創造神が残した世界(システム)を、6人の女神が力を合わせて維持している、というものだった(なお、創造神は世界創造後に次元の彼方に去っていった)。


「風の女神は、とある制約により召喚に応じて地上に降りることができんかった。

 しかしそれを知らぬサル・ロディアスの民は、蛮族の攻勢が激しくなると必死に逆転の一手として風の女神の召喚を行おうとしておったのじゃ。

 喚んでも来ぬ者をいくら喚んでもやはり来ぬ。だから当然ながらサル・ロディアスは滅びたんじゃよ」


 遠くを見つめながら独白するウィンディ。


 こんな見た目(ロリっ子)でも恐らくは悠久の永きに渡ってずっと生きてきたんだ。

 数限りない文明の勃興を見つめ続けてきたんだろうな。 


「これは言ってみれば、どこにでもあるただの歴史じゃ。今までも同じようなことは何度も有ったわい。

 じゃが、他の女神以上に情の厚い、風の女神は。それを受け入れることができんかったのじゃよ……」


 ここで1つため息を吐くと、ウィンディはぼそりと告げる。


「……それで風の女神は、他の女神の制止を振り切り、禁忌とされておった創造神の魔法”世界創造”を使ったのじゃ」


 創造神の魔法”世界創造”か。

 しかし、今の世界を複数人で維持するのがやっとな女神の力で、どうやって世界を単独で創れたのかな。


「なぁ、ウィンディ。いくら女神の力が強いと言っても、流石に世界は創れないんじゃないかな。

 だって普段の女神達の仕事って創造神が作った俺達の世界の維持だろう?明らかにオーバーワークだと思うぞ」


 俺の疑問にウィンディはこくりと頷く。


「その通りじゃ。無理なのじゃよ。

 今でも風の女神は、自分の存在を削りながら足らぬ分の魔力を捻り出し、無理矢理に世界の維持に躍起になっておる。

 ……しかし、お主やけにこの世界(システム)について詳しいのぉ?

 誰ぞ我等が関係する者に聞いたかえ?」


 おっと、しまったな。

 うっかりゲーム知識で話してしまっていた。後ろで今の急展開についていけてないサキとフェリシアが胡乱な眼差しを俺に向けてきているぞ。


 俺の内心を知らずにウィンディは語り続ける。しかし話が長いな。今まで誰も話し相手が居なかった反動だろうか。


「しかし恐らくもう限界じゃ。所々世界に綻びが目立ってきておる。この世界が崩れるのも時間の問題じゃろうてな」


「崩れるって、私達どうなるのよ!?」


 フェリシアは、ふんふんとウィンディの話を聞いていたが、世界が滅びると聞いて絶句している。


 安心しろ、俺もだ。


「多分一緒に崩壊に巻き込まれて、消えてなくなるのじゃろうなぁ」


 あっけらかんと言うウィンディ。

 おいぃぃぃぃっ、どぉぉぉぉすんだよぉぉぉぉお!


 いきなりの女神限界宣言の後は、俺達の破滅の予告と来たもんだ。

 うーん、困ったなぁ。


 するとサキがススッと俺のヨコに寄り添い、耳元に囁きかけてくる。


「ご主人様。どうやら世界はもう終わりみたいですね。

 こうなったら潔く諦めて、世界が終わるその瞬間まで、ベッドの上で私と一緒にずっと楽しみましょう。

 ご安心ください。私はご主人様が行くところでしたら、天国でも地獄でも、どこにでもお供いたしますから」


 そう言って朗らかに笑いかけてくるサキ。

 怖えーよ!

 どう考えてもヤンデレ的な発想じゃねぇか!


 バッドエンドを迎えたくないから死ぬ気で頑張っているのに、まさかその前に死の危機を迎えるというのか。


 そんなこと納得できるもんか。


 だから何とかならないもんかと、ウィンディに相談してみることにした。


「そうじゃのう、ワシが直接に女神の所に行ければなんとかなるかも知れんのじゃが……如何せん、今はこの要石に拘束されておる状態じゃからなぁ。

 どこかに代替えとなる器があれば……って、んん?」


 ウィンディが俺の胸あたりをマジマジと凝視してくる。


「なんじゃあ、その歪な魂は。……ふむ、よく見ればお主、実に面白い魂のカタチを持っておるのぉ」


「……面白い?」


 ウィンディの言葉に面食らう。人の魂になんて事を言うんだ。


「うむす。お主の魂にある魔力の器自体は、ほれ、そこの娘っ子達のような大きさ位あるのに、なぜか実際に注がれておる魔力はその半分位しかない。

 天然でこんな魂が創られるのかのぉ……実に不思議なのじゃぁ~」


 俺はそのウィンディの言葉を考える。


 恐らくはアルベルト()のゲームプログラム的な雛型が、多分他のヒロインなんかと同じだったんだろうな。


 けれど俺は雑魚の敵キャラだから一部数値に制約を設けたとかそんな所だろうか。


 しかし俺の最大魔力(キャパシティ)って、サキやフェリシア達の半分位しかないんだな……

 客観的な絶対量が分かったのは良いことなのか悪いことなのか、正直判らんね。


「……じゃがこれでワシの移動の問題は片付いたぞい」


「え、マジで?」


 俺の魂を見て、移動問題が解決したと宣言するウィンディ。


「ワシの存在(精霊力)を、この要石からお主の魂の隙間へと移す。

 それだけの空間があれば、この要石に固定されておる精霊力分位ならばまぁ、なんとか収まるじゃろうてな」


 つまり、今要石にあるウィンディの精霊力を、俺の魂に同居させるってことか。


「さぁ、どうする?」


 ウィンディが俺の覚悟を問うてくる。


「答えは勿論OKだ。やってくれ」


 是非もなし。

 世界崩壊が確定している中で、俺達が助かる手段があるのならば、それが何だろうと使ってみせるさ。

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