表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/205

アルベルトくん12歳。暗き森の死闘(前編)

 俺が自身の運命にあらがい始めてからすでに2年が過ぎ去った。


 今は独りで領内の森に来ている。


 ピーン


 俺が仕掛けた魔術結界の一つに反応があった。


 風の魔術で足音等の気配をごまかし、獲物の方向に移動する。


 魔力で拡大した視力に獲物の姿をはっきりと捉える。


 この森の代表的な魔物であるエルギだ。猪に似た外見を持ち、その鋭い牙は油断すると一噛みで人間の四肢を破断する。


 だが今は俺の存在に気がつかず、無防備に弱点の腹を曝している。


 掌を相手の急所に向けて慎重に魔力を練る。

そして充分に高めた魔力を相手の急所へと差し向ける。


「”風刃”」


 真空のかまいたちが高速度でエルギに襲いかかる。

 何も気がついていなかったエルギは堅い毛皮に覆われていない無防備な横っ腹に、無慈悲な真空の刃をめり込まされた。


 ふさぐことのできない大きな傷穴からは内臓がはみ出るほどの深手を負っていた。


 エルギは痛みにひとしきり暴れた後、ドゥっと横倒しに倒れ込んだ。


 俺は死臭が周囲に伝播する前に手早くエルギに対する処置を始めた。


 皮を剥ぎ、魔法で傷ついていない部分の肉を切り分けて手早く袋に仕舞い込む。


 残った臓器等は森の連中が処理するだろう。

 俺はさっさと自分のベースキャンプに戻るのだった。


─────


 森でのサバイバル訓練を始めて5日目。


 心配する家族に魔法道具にて定期連絡を終えた後、俺は改めて今の自分を顧みてみた。


 12歳になった現在、かなりの長身になってきた。

 ゲームではデブの大男だったので、上背はもっと伸びるだろう。


 そしてぼんやりと焚き火の火で照らされた自分の手足を眺めると、それはすらりと伸びており、子豚だった頃の名残を感じない。


 すでに体力的には騎士のボナディアからもOKサインが貰えていた。


 魔法や小剣を主に使っての実戦訓練も順調にこなしてきた。


 あと周囲の侍女からの評判を聞く限り、俺の顔は美形の部類なんだろう。

 鏡で自分を見ても多少の自惚れはあってもまぁ同じような評価だ。


 だがここで一つ大きな問題にぶち当たった。

 屋敷で訓練していると近頃多くの見学者が現れだしたのだ。


 中には12歳相手に身体の関係を求めてくるメイドまで現れた。そして俺にちょっかいを出してきて訓練どころではなくなってきたのだ。


 だから最近ではほとぼりが冷めるまでこういった野外演習を増やしている。


 将来の冒険者生活を考えると相当に実践的だな。


 今日採ったエルギの焼き肉を頬張りながら俺は周囲の音に耳を澄ます。

 満天の夜空に虫の鈴なり。本当に素晴らしい開放的なアウトドア環境だ。


 そうして一人悦に入っていたとき、それは突然やってきた。


 ドガーンッ!!


 少し離れた場所だが明らかに何か大きな衝突音が聞こえてきた。


 俺は身体強化と視力強化の魔法を使い、素早く手近にあった背の高い木の上によじ登った。


 距離にして1kmくらい先だろうか。何か大きな獣が一直線に木々を薙払いながら進んでいた。

 そしてその少し先に人間とおぼしき小さな影が一目散に逃げている。


 まだ大きな獣との間には多少の距離があるが、その距離は段々と近づいており、木々を気にせず薙払っているその恐ろしい膂力の前には絶望的な未来しか見通せなかった。


 見過ごせない。


 素早く木から降り、片手にカンテラをひっつかむと、俺はその騒乱が聞こえる方向へと全速力で駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >俺は死臭が周囲に伝播する前に手早くエルギに対する処置を始めた。 ◇ ◇ ◇ いやいやヾ(°∇°*) 死んだ直後に死臭は無いでしょう? 生き腐れの鯖だってそんなに早くないって。『死…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ