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奇襲?

 遅れてすみません。只今最終決戦のプロットを見直し中です。

「隊長ッ! 前線の右翼が崩れましたッ! ここは俺達が踏ん張りますッ! ……隊長は最終防衛戦まで撤退をッ!!」


巫山戯(ふざけ)んなッ! てめぇ等を見捨てて俺だけが下がれるかッ! おい、玉無し副長ッ! お前はのろまな新兵を連れてさっさと後方に下がれッ!」


「は……はひっ!」


 フレイン王国の最前線部隊がモンスター軍団と接敵して早1時間。すでに戦線は最終防衛ラインに押し込まれるほどに王国側が劣勢となっていた。


「おい、悪魔はまだ戦場に出てこんのか!? このままでは悪魔とモンスターがかち合う前に我が軍が瓦解してしまうぞ!」


 王は側近達へと仕切りに悪態をついている。


 初めから他力本願な王の姿勢に軍高官は呆れた眼差しを向けているが、一方で敗色濃厚なのもまた事実であった。


「王よ。我が軍はまもなく敗北し、王都も直にモンスター共によって蹂躪されてしまうでしょう。……幸い、後継者たる王子を始めとした王家の方々の避難は順調に進んでおります。我らは敵わぬまでもここで敵に一矢を報い、『フレイン王国ここにあり』と大いに喧伝しようではありませんか」


 真顔で完全武装しているローティス侯爵が全滅覚悟の決戦を王に要求してきた。


 王としてはさっさと戦場から逃げ出したいのだが、ここで逃げると戦場で多大な犠牲を払っている貴族や軍の離反が確定してしまい王国は瓦解してしまう可能性が高かった。


 かといってここで決戦に参加してしまうと王家と王国は残るだろうが自分の死がほぼ決まってしまう。


 それ程に今回の敵は相手が悪すぎた。


 王は知らないが、ゲームでは女神達のバックアップがあったうえで各国が一致団結して戦う相手が、時の女神(クロノ)の軍勢なのだった。


 そういった意味では無理ゲーを強いられている王は、運命を捻じ曲げたアルベルトの間接的な被害者とも言えただろう。


「敵前線が我が軍の最終防衛ラインを突破しましたッ!」


「早すぎないかッ!?」


 天幕内に慌てて駆け込んでくる伝令に対して、フレイン王は思わず声を荒らげてしまった。


 早い、早すぎる!


「王よ!」「ご決断を!」


 周囲からの圧力に対して、何も決断できない王。


 目は真っ赤に充血し、緊張で顔色は真っ青だった。


(こうなったら殴ってでも馬に乗せるか)


 ローティス侯爵が娘顔負けの脳筋な決断をしようとした時、再び天幕内に伝令が駆け込んできた。


「報告です!」


「今度は一体なんだ!?」


 王は泣きそうな顔をしながら伝令に声を荒げる。正直もう伝令の声なんて聞きたくなかった。


「そ、それが……」


「なんだ!? もったいぶらずに早く言わんかッ!」


 青白い顔に狂的な眼差しを浮かべている王。そのあまりの剣幕に思わず口籠ってしまう伝令。


「君、早く言いたまえ」


 埒が明かないと思ったローティス侯爵は、冷静な声音で伝令に伝達を促す。


「はい……え〜と敵前線がですね……」


「前線が?」


「何者かに攻撃されて、崩壊しました」


─────


「ばか、ばか、ばーかっ! 何が『いくぜ』、よ! いきなり周り中が敵だらけじゃないのっ!」


 周囲に群がるモンスターを蹴散らしながらフェリシアはひたすらに俺を(ののし)ってくる。まずい、なにかに目覚めてしまいそうだ。


「いや、正直俺も予想外だった。まさか安全を期して展開しているフレイン王国軍の後方に転移したのに、そこに魔獣どもが群がっているとはなぁ……」


 俺はフェリシアに言い訳をしつつも一生懸命に手を動かしていた。


「御主人様。ここは私に任せて先に進んでくださいませ!」


「いや、だから先に進むためにはこいつ等を駆逐しなきゃいけないんだろーが」


 サキの真顔のボケ(いや、本人は至って本気か)に対して、俺は柔らかいツッコミを返した。


 あまりにも予想外の遭遇戦であったため、すでに擬態を解除して全力で魔獣どもを殲滅していた。


 本来は王国軍に魔獣の相手を丸投げしておこうと思っていたのに、まさか俺達の到着前に軍が瓦解しているなんて誰が予想できようか、いやない(反語)。


「マスター。どうやらクロノ達に我々の存在がバレたようですね」


「まぁ、いきなり謎の集団が現れて、こんだけ配下の魔獣が一気に潰されたならそりゃあ嫌でも気づくわな……」


 翡翠丸が手に持つ刀でバターのように魔獣をスパスパと斬り刻みながら、俺へと声をかけてくる。


 なお、今日の翡翠丸の格好はなぜか大正ロマンっぽい和装にブーツだった。一体この娘はどこへ向かっているのだろうか。


「お前様、第一波くるぞいっ!」


 ウィンディからの忠告の直後、クロノ達の方から遠距離魔法による攻撃が飛んできた。


「任せてアルくん! ……”極光乃大盾”よッ!!」


 瞬時に俺達の前に光魔法による巨大なシールドが展開し、そのビームのような熱線攻撃を遮った。


 なおその光の盾は効率よく敵攻撃を防ぐために避弾経始の構造をしていたため、多くの熱エネルギーは周囲へと四散していった。ぶっちゃけると俺達は無傷だったが俺達の周囲は火の海になり、魔獣はいつの間にか全滅していた。


「なんでお前が生きているんだッ!?」


 目視できる距離まで接近してきた敵勢力。その一味の一人であるクリスティンが俺の顔を見て驚愕していた。


 チッ。奇襲が上手く行ったならばそのまま(くび)れたのに。


「………生きていたか」


 以前と較べて死人のような雰囲気になっているヘルメスが、感情が伺えない声音でポツリと呟いた。


 つーか、悪魔の力で魂が枯渇した筈なのにどうやって生き返ったんだろうか。


「ありえん、ありえん、ありえんッ!! なぜ貴様が生きているッ!?」


 なんと俺の登場に一番驚いてくれたのはクロノだった。これはちょっと予想外だったな。


「さぁ、なんでだろうなぁ。まぁ、あんたには借りがある。その借り……きっちり利子をつけて返してもらうぜッ!」


 俺は咆哮し、クロノへと吶喊(とっかん)した。

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