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アルベルトくん14歳。砂漠の蚯蚓(4)

 突撃することなく、砂の上をうねうねと這うようにして近づいてきたデスサンドウァームは、突然大きな口をぱかりと開け、ギザギザの歯とぬめぬめ光るのど奧を俺達に見せつけてきた。


 キュォォォォッ!!


 甲高いスキール音が聞こえてきたと思った直後、デスサンドウァームはその大きく開いた口で勢いよく周囲のものを吸い込み始めたのだった!


 「おっと!」


 俺はとっさに風の障壁を俺自身とサキとフェリシアに張り、その吸い込みに対抗する。


 しかし時間的に風の障壁を張る余裕がなかった駱駝もどき達には悲惨な運命が待ち構えていた。


 ガリガリバリバリボリボリ


「「キャーッ!!」」


 目の前のスプラッターな光景に思わず悲鳴を上げる女子2人。


 掃除機に吸われるゴミのように、化け物の口の中へと吸い込まれてしまった哀れな駱駝もどき(被害者)達は、悲鳴を上げる暇もなく、みな一様に骨が砕かれ、肉がミンチとなってデスサンドウァームの胃袋の中へと格納されていった。


「にゃーん」


 咀嚼の終わった化け物は、にじりにじりとこちらに近づいてくる。


 俺達の移動手段が喰われてしまった今、こいつから逃げ切ることは難しい。


(2人を抱えながら砂漠を横断するほどの長い時間、飛行魔法を使い続ける事ができるかどうか正直微妙だしなぁ)


 逃亡の不確実性に賭けるより、ここでデスサンドウァームを倒しきった方が確実だ。


 しかし中ボスをゲームが始まる前の状態で迎え撃たなければならないとは、実に困った状況だ。


 ゲームを思い出す。


 確かゲームでは、ゲーム主人公とその仲間達に混じって仲間に加わっていた正体を隠した水の精霊王さんが、デスサンドウァームを足留め&弱体化してくれたお陰で、その間に主人公とその仲間達がタコ殴りして倒したはず。


 まずいな。ゲームよりも条件が悪すぎるだろ。


「イヤァァァッ!え、”炎熱衝”ッ!」


 目の前で起こったデスサンドウァームの蛮行にビビりまくっていたフェリシアが、破れかぶれで炎系統の魔法を撃ちこむ。


 しかし、まだ本格的な訓練を受けていない今の彼女程度の魔法強度(ちから)では、デスサンドウァームの厚い皮膚に欠片も傷を付けることはできなかった。


「むむむ。”極大氷結弾”!」


 一方、サキの放った強烈な一撃は、デスサンドウァームに痛烈なダメージを与えることができた。

 しかしそこは流石に中ボスで、まだまだHPに余裕があり(元気が余って)そうだ。


「”翡翠丸”、俺の力を吸え!くらえ、”絶牙断衝”!!」


 俺もとりあえず刀で斬りつける。

 なお”翡翠丸”とはサルヴェリウスさんから刀に銘を付けるよう促され、俺が名付けたこの刀の銘である。


 なんでも、銘を付けた方が力の上昇値が上がるらしい。どんな理由があるのだろうか。


 ガシュッ!


 しかし硬いなぁ。

 俺の斬撃は、デスサンドウァームにかなりの深さまで切り込みを入れたが、それでも切断までには至らない。


 一応手傷を負わせることはできているが、倒すのに何回斬りつけが必要なのかイヤになるレベルだ。


 分かっていたことだが、現有戦力(面子)が少なすぎる。


 今の俺達の面子だとサキはともかくフェリシアはゲーム初期以前の状態なので戦力にならない。


(正攻法での戦い方では正直ミミズを倒しきるのは苦しいか。……仕方がない。”アレ”を使おう)


 俺は切り札を1つ切る事にした。


 俺を破滅に導く女(死亡フラグ)達の目の前で切り札を見せるのは今後の展開上はっきり言ってイヤなのだが、背に腹は代えられない。


 だがしかし、”アレ”は動き回る目標に対してはちょっと使いにくい。なんとか化け物を足止めすることができないもんかなぁ。


「サキ。”絶対凍結”、”永久凍柩”、”空間置換【水】”のどれか使えるか?」


 ダメ元でサキに聞いてみる。今挙げた3つの魔法は、ゲームでも最終盤あたりで覚える、水系統の魔法の中でも超高難度の魔法だ。


 普通なら今の時点で習得している訳はないんだが……


「すいません、”永久凍柩”しか使えませんでした。

 ……ご主人様!次の機会までには他の魔法も必ず使えるようにしておきますので!」


「うわ、自分から言っといてなんだが、本当に使えるのかよ……」


 止めろ。今挙げた3つの魔法は王国の宮廷魔術師の中でも最高導師レベルにならないと使えないレベルの秘奥だぞ……


 単純に魔力を使った火力勝負だと、もうこいつ相手には勝てる気がしないな。


 だがまぁ、とりあえずこれで足止めの目処が立った。


 俺は、何回かの攻勢で警戒を強めている化け物から少し距離を取り、サキやフェリシアと並んで立つ。


 切り札を使う目算は整った。


 細工は流々。あとは仕上げを御覧じろってもんだ。

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