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矜持(中)

 まさかの3分割です。

 長く書きすぎちゃった……。

「まずいわ! ミーア、サキ、即座に敵キリングドールの迎撃に向ってちょうだい!」


 戦場のど真ん中に突如として現れたミーアではない銀色のキリングドール。


 すぐにでも対処しなければこの戦線が崩壊してしまう。直感的にそう悟ったフェリシアは、躊躇せずにミーア達による迎撃を指示した。


「性懲りもなくまた現れましたね、木偶(でく)人形! こんどこそ確実に粉微塵のスクラップにしてさしあげますよ!」


 どちらが敵なのか分からない台詞を吐きながら、サキは大魔術を行使すべく魔法の詠唱に入る。


「壱号機ぃぃぃッ! 貴様はいつまで間違ったあるじに仕えているのデスかぁぁっ!」


「参号機ぃぃぃッ! いい加減死人に(みさお)を立てるのは止めるのでアァァァルっ!」


 手四つで向き合う黒と銀のキリングドール。


 当初互角と思われたその力勝負は、決して互角ではなかった。


「……!? ど、どういうことデスかっ!?」


 徐々に優勢になっていく銀のキリングドール( 壱号機 )。そのボディからは尋常ではない魔力が漏れ出し、それどころかボディのサイズまでもがミーアのそれを大きく上回る大きさへと変貌していた。


「ククク! 我は以前のスペックとは違うのでアルよ、参号機っ! クロノ様より(たまわ)りしこの新たなる”力”! まさに我は伝説の【マークⅡ】になったのでアルっ!」


 本来は互角であったはずのミーアとの同型機対決。


 だがシーアは、時の女神による謎パワーによって得られたドーピングを使って力勝負でミーアを圧倒し、そのことをドヤるのであった。


 このまま力競べでミーアの腕が折られるかと思われたその時、ヒヤリとするようなサキの声音がシーアの音声受信部に届いた。


「───ならばこれに耐えられるか試してみましょう。……”絶対凍結”」


「む、それは!」


 以前シーアが打ち破ることができなかった水系統最上位の魔法が、背後から接近していたサキから放たれた。


 一瞬で氷漬けになりかかるシーア。だが今回のシーアは一味違っていた。


「うぉぉぉぉぉッ! 燃え上がれ我がエーテルリアクターッ!! お前の限界の先を、我に見せるのでアルゥゥゥッ!!」


 サキの魔法に対するシールドを展開するため、クロノから貰った魔力を燃料にして臨界点寸前まで回るシーアの魔導エンジン。


 焼ききれそうなほどフル稼働した末に、ついにサキの魔法の無力化に成功したのだった。


「ハァハァハァ……… フ、フフ…… フハハハハっ! 耐えた! 耐えたのでアァァルっ! ククク、木っ端猫耳め! もうお前の攻撃なんて恐れること能わずなのでアルっ! バーカ、バーカっ!!」


 テンションマックスなシーア。過去のサキとの対戦で酷い目にあっていたため、強気な態度とは裏腹に内心はビクビクしていたのであった。


「脅威は去ったのでアル。あとはみんなまとめて魔獣達の食材にしてやるのでアール! ……”爆導筒”全弾射出ッ!!」


 パワーアップしているシーアから放たれた爆導筒の数は、明らかにミーアのそれよりも弾数が多そうだった。


「……ちっ、厄介ですね! ミーア、私は次の魔法の詠唱に入りますので、貴女アレをなんとかしなさいな」


「す、凄い無茶振りが来たのデェェスっ!!」


 慌てるミーアを無視し、サキは本当に魔法詠唱に入ってしまった。


「はぁ……」


 ミーアは一つ嘆息すると、空を睨みながら考える。


 ミーアが対抗して”爆導筒”を全弾射出しても、発射速度と弾幕数の関係でシーアが放った全ての”爆導筒”を相殺することは不可能であろう。


 だからミーアは仲間を頼る選択を決断する。


「クリス殿! レーザー……もとい、光系統の攻撃魔法を指定した座標に全力で撃ってほしいのデースッ!!」


「よく分からないけど了解だよ!」


 クリスはミーアの依頼を受けると間髪入れずに全魔力を使用した呪文の詠唱に入った。


 考える事はフェリシアやミーアに任せている。クリスは彼女自身が出来ることだけを精一杯やるのだと割り切っていた。


「”極大熱光”ッ!!」


 クリスの両手から放たれた物理法則完全無視の魔法製レーザービームが、ミーアに指定された場所へと射撃された。


「ここデスっ! ……”反射(リフレクター)・爆導筒”ッッ!!」


 ミーアによって空に撒かれた無数の爆導筒。通常の爆導筒とは違い、それらには内蔵された魔力によって鏡面加工がなされていた。


 つまり光を任意の方向に反射させる事ができるのだ。


「なんと!?」


 流石のシーアも度肝を抜かれた。


 クリスが創った魔法製のインチキレーザーを、ミーアが無数の爆導筒()を使って反射させまくり、その分かたれたレーザーによってシーアが事前に打ち出していた爆導筒を全て迎撃させたのであった。


 空一面に咲く、花火の如き爆裂の華。


 恐るべきは光魔法の真髄、恐るべきはキリングドールの弾道計算能力か。


「しくじったのでアルっ! だがまだまだ我にも奥の手があるのでアルッ! 最終モード:”黙示録(アポカリプス)”、起動でアァァルッ!!」


 ミーアと同系統のキリングドールであるシーアにも、最終モードが搭載されていたのであった。


「ミーアちゃん! 貴女も同じことができるでしょ? なんとかしてよ!?」


「うげぇ、クリス殿からもすごい無茶振り来たのデェェス! こちらはご主人に敗れて以降未だ修理中の身なので壱号機と同じ最終モードは使えないのデェェスよぉぉっ!」


「えぇぇぇぇぇッ!?」


 キュインキュインと警告音を発しながら最終モードへと変形していくシーア。


「くくく、我は女神に祈る時間も貴様らには与えないのでアール。次回からは新番組『機械美少女マシナル★シーアちゃん』が放送される予定なのでアール♪」


「「新番組って、何ぃぃぃぃっ!?」」


 そして変形は完了し、シーアは最後の一撃を与えにかかる。


「”黙示録”砲…………発───」


「───そして世界は書き変わる。大禁呪、”コオルセカイ”。発動」


 シーアの声に被せるように、絶対強者の声が凛と響いた。


 瞬間。世界は【シロ】に染まる。


「へ?」


 それは誰の呟きだったのか。


 一瞬で世界は銀世界に染まり、発射寸前だったシーアの”黙示録”砲は沈黙。また、多数の魔獣達もその大半が行動不能となっていた。


「すごいよ、サキさん!」「ヤッたのデース!」「助かったわ、サキ!」


「……まぁ、代わりに私の魔力はすでに空っぽなんですけどねぇ」


 クリス、ミーア、フェリシアから賞賛の言葉が、地面に頭からぶっ倒れているサキへと贈られる。


 聖歌隊や生き残った兵士達からも歓声が上がっていた。


「なんとか生き残れそうね……」


 強敵を降し、ほっと一息つくフェリシア。


 そこに少し油断があったのかもしれない。


《──見事な手腕だ。だが詰めが甘い》


 瞬間、ゾワッとした感覚がフェリシアを襲う。その時、彼女は無我夢中で防御のための術式を無意識に編んでいた。


「うわ!」「なんですか!?」「くっ……」


 だからだろうか。彼女は不意に襲った超重力の攻撃をギリギリで防ぐ事ができたのだった。


フェリシアを除いた仲間たちが、全員地面に倒れ伏す。魔力が残っていればなんとかなったのかもしれないが、先程のパワーアップしたシーアを退けるために、みんな全力を使っていたため、その魔術に抵抗することができなかったのだ。


《ふふふ、久しいな女よ》


「時の……精霊……」


 忘れるはずもない。そこに悠然と現れたのは、以前にヒノちゃんと力を合わせて退けた、女神の腹心にして眷属、憎き時の精霊だったのだから。

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