表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/205

アルベルトくん14歳。砂漠の蚯蚓(3)

 翌日の調査については割愛する。

 なぜなら、何も成果が得られなかったからだ。


 そしてさらにその翌日。

 調査最終日の3日目。


 すでに時刻は午後を回り、残すところあと数時間といった有り様で、俺達の間には本格的な諦めムードが漂い始めた頃だった。


 いつものように笛を吹き、慣れからか笛の結果を確認する時間も惜しんで、すぐに移動の準備を再開していたちょうどその時。


 奇跡は起こった。




 最初は、サキの一言から始まった。


「ちょっと待ってください?」


 突然、サキが叫ぶと、その大きな獣耳をピーンとそばだたせた。


「……今はっきりと聞こえました!『にゃーん』て!」


「なんだと!」


 興奮気味にまくし立てるサキ。俺も探検隊の気分だったためテンション高くそれに応じる。


 俺は魔法で聴覚強化を図り、静かに耳をそばだたせる。


 にゃーん……にゃーん……


 聞こえる!確かに聞こえるぞ!


 だがその発信源がさっぱり分からない。


 しかしその声は間違いなく俺たちに段々と近づいてきており、それに伴い、最初は気のせいだと感じていた地面の揺れが、今でははっきりと自覚できるまでになってきた。


「ご、ご主人様!何か凄くイヤな予感がします!」


「予感も何もないでしょ!コレ!」


 揺れは収まる気配が無く、ついには地面が激しく波打ち、立っているのもやっとという状況になった時、ついに”そいつ”は現れた。


「にゃーん!」


 急に地面が盛り上がったかと思うと、盛り上がった砂の先端から、太さが直径3mはありそうな超巨大ミミズが地中から顔を出したのだ!


「「キャアッッ!」」


 あまりの迫力に思わず悲鳴をあげる女子2人。


 無理もない。砂の中から出てきたのは、事前に予想していたような小さなミミズもどきではなく、地表に出ているだけでも20mくらいはありそうな、明らかに巨大な化け物(モンスター)だったのだから。


 大ミミズの全体の色は普通のミミズっぽく小豆色をしているが、それに赤茶けた砂漠の砂が付着し、色違いのきなこ餅のような見た目になっていた。


 また、その先端の口に該当する部分には、ぐるりとギザギザした怖ろしい歯が並んでおり、そこから覗くぬめぬめとした口蓋部がより一層気持ち悪さを助長しているのであった。


 なお、先日見せてもらった写真に写っていたミミズの顔の部分は、単なる体表の模様であり、ミミズの大きさも相まって不気味さをより一層際だたせていた。


「たまげたなぁ……」


 その迫力は筆舌に尽くしがたい。


 驚いて茫然と見上げていると、地中から這い出してきたそいつ(たろうちゃん)は、一度鎌首をもたげるように先端部を屹立させた後、もの凄い速度で俺に向かってその頭を振り下ろしてきた。


「危ねぇッ!」


 ドッパァァァァンッ!!


 周囲の土砂が大量に巻き上がるほどの衝撃を与えたその攻撃を、俺は間一髪、横っ飛びで避けることができた。


 しかし、化け物(たろうちゃん)が地表に頭部を打ちつけたことによって巻き上がった物凄い量の砂を完全に避けることはできず、直近にいた俺のみならず、比較的離れた位置に退避していたサキやフェリシア、駱駝もどき達までも砂の被害を受けていた。


「ぺっぺっ。こいつは一体何なんだ!」


「こ、こいつって多分、”デスサンドウァーム”なんじゃないかしら!」


 髪の毛に付いた砂を払いつつ、フェリシアが言ってくる。


 地中の中からにゃあにゃあと大変不気味な鳴き声が相変わらず聞こえてくるが、フェリシアが指摘した通り、確かに特徴的な顔のような紋様やこの不気味な鳴き声さえ気にしなければ、うん、こいつはデスサンドウァームで間違いないと思われる。


 デスサンドウァームというと、結構昔から有名な、砂漠地帯を横断しようとする旅行者に恐れられていたモンスターだ。


 ものの本によると、砂漠でコイツと出逢うと高確率でエサにされるというえげつないモンスターであり、ゲーム時代の中盤頃に登場したボスモンスターの1匹でもあった。


 ゲーム登場時は普通にデカいミミズだなぁと思っていたが、まさかその正体が砂漠に棄てられた古代帝国時代のペットの変わり果てた姿だったとは夢にも思わんかったわ。


 と、そんな刹那、再び俺めがけてデスサンドウァームは突撃を仕掛けてくる。


「一体、何でコイツは俺ばっかり狙ってくるんだよ!」


 俺の嘆きに対して、ちょっと遠くに離れているサキがポン、と手を叩いて納得していた。


「多分今のたろうちゃんの行動って、笛によって躾られた飼い主への抱擁なんじゃないですかね?

 ほら、ペットってご主人様とじゃれ合うのが好きじゃないですか!」


 マジか。

 確かに犬とかは飼い主見かけると興奮して突撃を仕掛けてくるよな。


 どうでもいいが、前世の俺ん家ではウェルシュ・コーギー・ペンブロークという種類の犬を飼っていたんだが、短い手足をバタバタさせながらよく突撃を喰らったものだ。

 因みに意外と図体が大きく、すばしっこいんだよね。


 化け物は俺に対して何度か突撃を仕掛けてきたが、一向に俺が捕まらない(ハグしてくれない)ことに業を煮やしてきたらしく、新しいアクションに打って出た。


 今度は突撃することなく、化け物は砂の上をうねうねと這うようにして近づいてきて、大きな口をぱかりと開け、ギザギザの歯とぬめぬめ光るのど奧を俺達に見せつけてきた。


 キュォォォォッ!!


 そしてその口で勢いよく周囲のものを吸い込み始めたのだった!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] たろうちゃんに引導を渡せ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ