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蔦の巨人

「俺が先行する! サキとクリスは後方より魔法で支援してくれ。あとミーア、お前はデータ収集の方を頼む!」


「「「了解デース!!!」」」


 蔦の巨人となったヘルメスとの戦端を開くべく、俺は魔術の構成を編み上げる。


 生半可な攻撃は通じまい。だから俺は初撃必殺を目指す。


「──途中式は省略! 魔法式”電磁投射砲”……起動!

 ………戦略魔法、”魔弾ノ射手”……射出ッ!!」


 マトがでかいため、簡略化した戦略魔法をぶつける。安全を構成する魔法式を取っ払ったが、今の俺の肉体なら十分に耐えることができた。


「オオオオオオオオオォォォォ!!」


 ズドンとヘルメスの胴体に大きな風穴を空いた。だが、何事もなかったかのようにすぐにその穴は蔓で覆われ修復されてしまう。


 お返しとばかりにヘルメスは大量の何かの弾丸をこちらへと飛ばしてくる。


「これは……種か!」


 俺はミーア謹製の黒剣で飛んできた種を撃ち落とす。


「うわわ! ”障壁”ッ!」「”氷壁”!」


 クリスとサキが後方にて魔法障壁を張って、種の拡散を防いでいる。


 種の放出が終わったみたいで再び行動の余力が生まれたので、俺はならばと斬撃をお見舞いしてみる事にした。


「喰らえヘルメスッ! ”絶牙断衝”ッ!!」


 俺は高さ20メートルくらいはありそうな大きさへと変貌したヘルメスに対し、防御無視の渾身の斬撃を与える。


 ザシュッ!


 蔦の巨人の右腕は斬り裂かれ、胴体から離れていく。


 が、しかし───


「やっぱり生えてくるのかよ!?」


 すぐさま喪った右腕の長さに蔦が伸び、その腕が再生される。


 しかもご丁寧な事に、斬られた右腕は緑色の蔦に戻るとあっという間にこちらへとその触手を鋭く尖らせて向かって来るのだった。


「させません! ”絶対凍結”ッ!!」


 サキが俺達の方へと向かってくるその触手を強力な水魔法で防御する。


「うわ! 完全結界なのに壊れそう……」


 水魔法の最上級カテゴリーに属する防御結界が普通に破られそうだった。


「”神盾(イージス)”ッ!」


 壊れそうになっていたサキの絶対凍結の壁をすぐさまクリスが光魔法で補強し、なんとかヘルメスの攻撃を防ぎきった。


「斬ってもダメか……おい、ミーア! 分析の方はどうだ!?」


 俺達はここまでの間に蔦の巨人となったヘルメスへと、魔法で攻撃したり斬撃を浴びせたりしてみた。


 だが、ダメージを瞬間的に与える事ができてもすぐさま回復されてしまい、ほとんど敵は無傷な状況であった。


 なお致死性の大技が飛び交うこの戦場はあまりにも危険だったので、リーゼ達には騎士団と村人達を伴ってこの場から避難してもらった。フェリシアもまだ目覚めてないしな。


「……ご主人。一応敵のコアの場所は特定できたのデース」


 ミーアの説明によると蔦の巨人の中枢部に人型がおり、その人型の右腕から膨大なエネルギーが巨人の各所へと流れているらしい。


 おそらくこのコアのエネルギーによってヘルメスが展開している現実改変の能力と結びつき、無敵にも思える超回復力として影響しているのだろう。


 そういえばゲーム時代に悪役貴族だった俺が大悪魔レライエの力で暴走した時も、ゲーム主人公達が俺から悪魔の腕をむしり取って暴走を止めた演出があったな。


 丁度悪魔の右腕がこいつの心臓部(コア)に当たるってことか。以前のヤマタノオロチ戦を考えてもそいつさえ切り離せばおそらく蔦の巨人は停止しそうだ。


 俺はその切り離す方法を考える。


 俺達の手持ち……クリスの光魔法による浄化の力、サキの限定的ながらも現実改変できる力、ミーアによる巨人のコアの位置を特定する力、そして俺の持つ様々な技術・知識という力───


「……ダメだ。一手足りない」


 俺達の能力を全て上手く連携すればコアまでは届くだろう。だが、最初の一撃。強烈な蔦の回復力を上回る攻撃を放ち、コアの能力を一瞬だけ麻痺させる要員がいない。


 俺とサキ、ついでにミーアも何かしらの手段でその一撃を与える力はある。


 だがそうするとその後のプロセスに重大な問題が生じる。この作戦は相手が反応する隙を与えないこと、すなわち全てを一瞬で仕上げなければならないのだ。


 もし作戦が失敗すればおそらくヘルメスは即座にこの作戦への対処法を思いつき、この方法は二度と使えなくなるだろう。


 だからチャンスは一度きり。


 しかし俺達の魔力の残量やウィンディ達の消耗を考えると長期戦は無理だ。時間がない。


 俺は牽制の攻撃をヘルメスに与えつつ、とりあえずリーゼとメアリーに念話を飛ばし、騎士団の中にその手の魔術が使えるやつがいないか相談をするのだった。

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