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招待状

祝200万PV。みなさんありがとうございます。

なお仕事の関係でしばらく低浮上です。更新は低頻度になるかと思いますがご了知お願いいたします。

「王家主催のクリスマスパーティーへのお誘い?」


「はい、ご主人様。何でも以前第二王女を助けたお礼にという事で、王女様の名義で我々へと招待状が届いております」


 俺が学園に復帰してから数日が経過したとある日。俺達のもとに王家からパーティーのお誘いが届いた。


 王家主催のパーティーって、普通の貴族が頻繁に行っている私的なパーティーなんかよりもかなり格式が高くて面倒なんだよなぁ。


 俺は形の上では宰相の息子というかなり貴族でも上位クラスの人間ではあったが、死亡フラグを折る事だけを目標にこれまで鍛錬に生きてきた。


 そのため、実際のところほとんどパーティー等へ参加した事がなかったりするので正直格式ばったパーティーは苦手だったりするのだ。


「……しかし嫌だと思っても、王家からの好意による招待を無下に断るわけにはいかんよなぁ」


 本音を言えば面倒だから参加したくない。

 しかし今回のヴリエーミア達への奇襲事件に関する俺への寛大な処分に関しては、間違いなく王家や宰相(親父)の意向が働いたため、理由なく招待を断る事はできなかった。


「はぁ〜。気は乗らないが参加することにしようか」


「じゃあ参加の返事をしたためておきますね、ご主人様。今回は奴隷の私もゲスト側との事ですので、ちょっとおめかしして行きますね!」


 サキは結構パーティーに乗り気みたいだな。


 よくよく考えればサキもまだ16歳の女の子だ。色々とおしゃれ等にも興味があるのだろう。


 そう考えると例え俺の奴隷といえども、ずっと俺なんかに付き合わせてしまって、ひたすら修羅の道連れにした事は正直申し訳ない気持ちがある。


(まぁ成功しても失敗しても。あと少しで俺の戦いは決着がつくだろうけどな)


 戦いの結末は正直俺には見通せなくなっている。それでも俺の戦いは終わりが近いのではないか。そう俺は予感するのであった。


─────


「なぁ、ウィンディ、ミーア。人の魂を複製し、他者に移すのって魔法的に可能なのかな」


 王家への返事をサキに託したあと、俺は以前から考えていたクリスを救うアイデアについて、ウィンディやミーアと相談することにした。


 こいつ等2人はアホっぽそうではあったが、片や精霊魔法のエキスパートであり、片や古代帝国の技術に精通したエキスパートであった。


 そして様々なアイデアを検討した結果、俺はクリスを救う手段として、例え女神の力でクリスの魂が消されたとしても、彼女の魂のコピーを別の肉体に移す事で彼女を助ける事はできないものかと考えたのだった。


 この方法ならば例え彼女の存在がなかったことにされたとしても、彼女の生前の思考や記憶が引き継ぐことができて本人とまさに瓜二つだ。


 よくゲームなんかでも出てくる設定だったのでこれは行けるんじゃないかと思ったのだが───


「ん〜、どうかのぉ〜。精霊や神、悪魔なんかは魂が肉の器に左右されない不滅性を持っておるから、魂を別の身体に移す事は可能じゃ。しかし、ワシら精霊でも魂のコピーなんてできんわい」


 ウィンディが呆れたように説明してきた。


「え、魂のコピーはできないのか?」


「できん。ワシは精霊王の分御霊であり、魂の一部を分けているのであってコピーではない。じゃからもしワシが消滅してしまうと本体はワシの分だけ魂に欠損が出てしまうんじゃよ」


 そうだったのか。俺はてっきりいくらでも替えの効く便利なコピー品程度だと思っていた。


「お前様、めっちゃワシに対して失礼な事を想像しておらんかの?」


 俺はとりあえずウィンディを無視し、今度はミーアに聞いてみた。


「そうデスねぇ……我が帝国では確かにそのような研究はしておりましたデスなぁ」


「お、マジか! それでどうなった?」


 どうやら俺のアプローチはあながち間違っていなかったようだ。期待に胸が膨らんでくる。


「結論としては魔術による魂の解析は一部成功ってところデスかねぇ。結局のところ魂の完全コピーはできず、人間の魂をコピーして作り上げられた人造人間の最後は、発狂か人格崩壊してしまう事例ばかりだったのデス。

 その失敗を教訓に人間ではなく精霊を使って研究を進めたのが人工精霊計画であり、ヒト種の魂とは別アプローチで人型の兵器として生まれたのが私なのデース。見た目は人間っぽくても、ヒト種如きと一緒にされるのはとても心外なのデース」


 うわ、こいつさり気なく人類ディスってんな。


「次に魂の解析の不完全性を乗り越えるため、生きた人間の赤子に解析できた魂の一部を焼き付ける実験が行われたのデス。別名”転生の赤子”計画デスが、こちらは一部成功ってところデスね」


「どういう事だ?」


「はい、ご主人。簡単に言いますと結果がかなり運の要素に左右されるのデス。ほとんどの事例では転写前の人格とは似ても似つかないような粗暴な性格になったりするのデスが、極たまに実験が成功となったりします。

 しかし成功率の低さがやはり如何ともし難く、同じデータを転写しても成功率は極わずか。更に結局この手法にて出来上がるのは生前と瓜二つの人間ではなく、生前の知識を持つ性格が似ているだけの他の誰かに過ぎないわけでして、実験は結局失敗。凍結となったわけデース」


 古代魔法帝国ってかなりマッドな国だったんだな……


 しかし二人と身のある議論をしたお陰で、俺の考えついた手法だとクリスを助けられない事がわかった。


 しかしならばどうするかなぁ……


「魂のコピーはできんが、死んだ人間の魂を救い上げて、別の人間に転生させることじゃったらできる奴を知っておるぞい」


「何!? 一体誰がそんな真似できるんだ!?」


 魂の転生だと? そんな奇跡を使える奴なんてそれこそ神様しか───


「うむす。風の女神ヴェルテじゃよ」


 本当に神様だった。


「神様にそんな真似ができたって、俺には手に負える相手じゃ───」


「なんかヴェルテの方が、お前様と少し話をしたいそうじゃ。ちょうど良かったのじゃ。ちょっとお前様の精神だけ天界へと飛ばすぞい」


「え?」


 俺が返事をする暇を与えず、ウィンディは強制的に俺(の魂)を天界へと運ぶのだった。

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