表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/205

学園祭④

「あ、フランチェスカとブルーノだ!」「わ! フランチェスカ役の人って、近くで見ても本当にすっごく可愛いな〜!」


「あはは〜、ありがとね。今日も劇をよろしくお願いしま〜す」


 見知らぬ学生から声援を貰う俺とクリス。

 ……もっとも声をかけられる比率は、圧倒的にクリスの方が多いわけだが。


「ねぇ、アルくん。私達ちょっと目立ちすぎなんじゃないかなぁ?」


 フリル成分多めの劇の衣装をつまみながら、苦笑を浮かべるクリス。


「仕方がないだろ。クラスの奴が言うには、『宣伝にはこれが一番』だって話だからな」


 学園祭2日目。


 俺とクリスは初日大好評だった劇の勢いを受け、こうして二人で劇の衣装を着たまま、広告塔として学園内を練り歩いていた。


「でもこれだけジロジロ見られていると、正直何もできないよね〜」


 俺達の一挙手一投足が、誰かしらに見られており、中々心休まらない感じだ。


 俺とクリスが一緒に屋台を冷かそうものなら、途端にギャラリーから声援が贈られてしまうのだった。


「あはは、なんだかちょっと恥ずかしいよね。

 ……でもこうして揃いの衣装で二人で歩いていると……なんだか本当のカップルみたいに見られちゃうよね」


 クリスがちょっと頬を赤く染めながら、ぽつりと呟く。


 カップル、か。中々良い響きだ。


 ───変な死亡フラグとかが無ければ、純粋に今の状況を楽しめるんだがなぁ。


 この時ばかりは、俺が悪役貴族の役柄である事を、少しばかり呪うのだった。


─────


「さて。今日は誰の所を覗きに行くかな」


 劇の広告塔として存分に敷地内を練り歩き、足が棒のようになったところで晴れてお役御免となった俺は、用事のあるクリスと別れた後、ゲームヒロイン(仲間)達のクラスを今日も覗きに行こうと考えていた。


「……って、あれ? 何でクリスがいるんだ?」


 着ている服が先程とは違っているものの、遠目でも判りやすい藍色の髪。


 俺と別れた後もクラスにて衣装のバージョンアップに協力させられる羽目になっていたはずのクリスが、なぜか外をフラフラしていた。


「……あ、向こうに行っちまったか」


 建物の中へと入っていってしまったクリス。


 今更追いかけるのもちょっとヤボだなぁと思い、俺は一人で移動するのだった。


─────


「……中々雰囲気が出ているな」


「お、お前様! 今病室の患者がこっちをジッと見つめておったのじゃッ! あれ絶対ヤバい奴なのじゃッ!」


「ご、ご主人! 何か扉の向こうに引きづられたような跡があるのデスッ! ここの病院は絶対に死体を使って何かをしているのデスッ!」


 ここはフェリシアのクラスの出しものである、お化け屋敷『殺人病棟20✕✕』。


 ファンタジー世界なのに、なぜか近代的な病棟が再現されていた。

 後でフェリシアに聞いたら、「古代魔法帝国時代の施設を再現した」との事。

 ゲームデザイナーの想像力の貧困さが良くわかる出来事だった。


「お、お前様! 早くここから出るのじゃッ! 次はワシらがあの白い変なのに連れてかれるかもしれんのじゃッ!」


「ご、ご主人! あの白い布でぐるぐるになっている人は、さっきから下位古代語で同じ数値をブツブツ呟いているだけなのデスッ! めっちゃ怖いのデスッ!」


 途中暇だったらしく、また俺に食べ物をたかりに来たチビ二人をだまくらかして、俺は三人でフェリシアが監修したと言う気合の入ったお化け屋敷へと入場していた。


 最初は全然大したことはないと舐めた口を叩いていたチビ二人ではあったが、それから歩く事わずか数分で、チビ共はすっかりそのお化け屋敷のクオリティにビビってしまい、左右から俺にピッタリとくっつき、ぎゃあぎゃあ喚くだけのお子様に成り下がっていた。


「ほれ、お前ら。そろそろ出口だからいい加減俺から離れてくれ」


 涙と鼻水をぽろぽろと流し、俺へと密着している二人。

 力が入り過ぎていて正直ちょっと痛かった。


「ほんとじゃな? ほんとにあの扉で終わりなんじゃな?」


「あ、出口と書いてあるのデス! ……ハッ! 最初はどうかと思いましタが、正直そんなに怖くなかったのデース!」


 半信半疑のウィンディと、さっきまでビビりまくっていたのにすでに言葉だけはふんぞり返っているミーア。


「ほらほらさっさと歩け」


 俺は二人から距離を取り、後ろをついていく。

 確かゲームと同じ仕掛けだったなら、扉を開けると───


「ご〜る───って、ギャアアアアアアァァァッッ!!」


 ダッシュして扉を開けた二人を待ち構えていたのは、白衣を着込み、無駄に特殊メイクを重ねていたフェリシアだった。


 確か扉の向こうからはこちらの様子が見えていて、最後にお客さんが扉を開けたタイミングで直接タッチしてビビらせるんだよね……


「はい、お疲れ様みんな! ……って、ちょっとあなた達大丈夫?」


 フェリシアだと知らずに白衣の何かに触れられたチビ二人。


 ウィンディは立ったまま硬直し、ミーアはバタリと地面に倒れ込んでいた。


 この時代、まだ年齢制限とかの概念がなかったため、このお化け屋敷によって何人もの被害者が出ることとなるが、俺の死亡フラグには全く関係がないため、詳細は省かせてもらおう。

 今回登場したお化け屋敷については、映画『武器人間』とか、ハウステン○スにある監禁病棟等がイメージソースだったりしますので、是非機会があったら映画を見たり、ハ○ステンボスに足を運んでくだされば、と思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ