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ワクワクデートの誘い

暫く更新間隔が長くなります。

気長に待っていただければ幸いです。

「あ〜、近頃大分涼しくなってきたよなぁ……」


 気がつけば地下迷宮探索事件から、早くも1ヶ月ほどが経過していた。


 俺の右腕の怪我もクリスの光魔法ですっかり良くなり、ようやく自由に動かせるようになっていた。


「ご主人! 今日は学園の授業が休みなのデス! ですから今日は街に出かけて美味しいケーキの情報収集がしたいのデスがッ!」


 俺が部屋の椅子でぐでっと背もたれに体重をかけて休んでいた時、唐突に現れたキリングドールの少女が、手をびしっと真っ直ぐ前に掲げて、激しく自己主張してきた。


「おい、そのポーズは止めろミーア。政治的に色々と不味いから。あと、お前は今日もユリアナの護衛だから休みなんてないぞ」


「えええええっ! ワタシ、今日も仕事なのデスかぁッ!? 月月火水木金金……エブリデイが仕事じゃないデスかぁッ!」


 余談だが、いつまでもキリングドールと呼ぶのが面倒だったので、俺はこいつにミーアという名前を与えていた。


 こいつは元々古代帝国の兵器AEEMシリーズだったので、反対から読んでMEEA=ミーアにしたのだ。安直な名前付けだった。


「黙れミーア。大体お前、ユリアナの護衛って言っても、いっつもユリアナにおやつを貰っているだけじゃねぇか。

 一応光学迷彩で姿を隠す事ができるんだから、しっかり隠れてユリアナの警護をしておけよな」


 俺はガミガミとミーアに説教をする。しかし、ミーアは神妙に聞いているフリをするだけで、どうせ今日も左から右に聞き流しているだけだっただろう。


「まぁ、どちらにしたって今日に関しては、俺自身にも仕事があったから、結局はお前を街には連れていけなかったんだけどな」


「え、ご主人も仕事、デスか?」


 首をコテッと横に倒し、疑問を身体で表現するミーア。立ち居振る舞いがとってもあざとい。


「そうだ。仕事だ」


 俺は椅子から立ち上がり、クローゼットの中から適当に私服を漁る。


「一体何をするんデスか?」


 俺はジャケットに腕を通しながら、ポツリと答えた。


「情報収集、だよ」


─────


「ア……アルくん! ま……待った、かな!?」


 待ち合わせに遅れること30分。ようやくクリスが姿を現した。


「お、来たかクリス。それじゃあ……って何だその格好は?」


 俺はクリスの姿に驚かされてしまった。なぜなら───


「やっぱり、変……かな?」


「……いや、変ではない………むしろ……可愛い?」


「へ? ……えへへへへ」


 俺の返答に、はにかむクリス。


 遅れてやって来たクリスは、いつものボーイッシュな感じではなく、非常に女の子らしい装いであった。


 髪はエクステを使って、藍色の髪をいつもよりも長めにしており、それが白を基調としたリブニットやベージュのプリーツスカートととても良くマッチしていた。


 そして一番驚いたのが、いつもはすっぴんだったクリスが、なんと薄く化粧をしてきたのだ!


(しかし、なんでクリスはこんな格好で現れたんだ?)


 クリスの可愛らしい姿は非常に目の保養になったが、やはり解せなかった。


「まぁ、いいか。じゃ、行くぞ」


「あ……ちょっと待って、アルくん!」


「ん?」


 そう言うとクリスは俺の腕に自分の腕を絡め、ピッタリと横についたのだ。


「迷子になったらさ……ちょっと困るかな、って思って」


「ふむ……まぁ、それもそうかもな」


 俺はいまいちクリスの意図が掴めなかったが、特に不都合はなかったので、されるに任せた。


(そう言えばサキも腕にぶら下がるのが好きだったな)


 ひょっとしてこういった行動が、最近流行っているのだろうか。

 ま、あまり学園に友達がいない俺には、縁のない話ではあったが。


「そう言えばアルくん。私達どこに向かっているの?」


 横から上目遣いに俺に質問を飛ばすクリス。

 なんという無意識のあざといポーズか。

 ミーアにも学んでほしいところだ。


 なお、行き先はすでに決めてあったりする。


 そこはゲームにおいて、クリスがメロメロになり、心のガードが弛くなる場所。


 あそこならば、クリスの本音が聞けて、彼女が誰ルートに向かっているのか簡単に分析できるであろうその場所。


 可愛いものがいっぱいのその場所。


「俺達の向かう先は──”動物園”だ」


「”動物園”?」


 クリスの頭の上にクエスチョンマークが大量に浮かんでいる。


 ククク。田舎から出てきたクリスは知るまいが、ここ学園のある都市には、なんと公立の動物園があったのだ。

 そしてクリス本人は未だ経験がないだろうが、ゲーム攻略者である俺はその未来を知っている。


 そのイベントで、こいつは骨抜きにされるのだ!


「ま、楽しみにしておけ」


「う、うん!」


 貴重なヒロインの好感度を上げるデートイベントではあったが、今のタイミングでこいつに俺の裏の意図を意識させずに現状の各ヒロインに対する好感度状況を聞くにはこのイベントしか思いつかなかったのだ。


(許せ、他のヒロイン達よ)


 俺は心の中でサキやリーゼ達に詫びを入れ、クリスと二人で目的地へと向かうのであった。


─────


「ご主人様が何を考えているのかは分かりませんが、私を差し置いてクリスさんとデートをするとは流石に許せませんねぇ」


 アルベルトに意識させないよう、遠距離から”視力拡大”の魔術にてアルベルトとクリスの二人の動向を監視していたサキが、物陰に身体の半分を露出させながら吐き捨てるように呟いた。


 その格好は、黒い背広の上下にサングラスといった、何かのスパイ小説の影響を直接受けているような、傍目から見るとちょっとアレな雰囲気の格好であった。


「ねぇ、別に良いじゃないちょっとしたデートくらい。サキ、それくらい許してあげなさいよ」


 付き合いで同じような格好をさせられているフェリシアが、呆れたような声音でサキにツッコミを入れる。


「何を言っているのですかフェリシア! そういった気の緩みが、ああいう風に泥棒猫の暗躍を許してしまうのですよ!」


「泥棒猫って……流石に言葉が強すぎますよサキさん……」


 フェリシアと同じく変な黒ずくめの格好を強要させられたリーゼが、ため息まじりにサキへと小声で突っ込んでいた。


「まぁまぁ。こういうのも結構面白いんと違うかなぁ? 私はちょっと新鮮で面白いよぉ〜」


 みんなでワイワイするのが好きなメアリーが、おっとりとした感じで合いの手を入れていた。


「はぁ……まぁいいです。ご主人様も移動したみたいですので、私達もあとをつけますよ!」


 付き合わされてブーブー言っていた連中も、結局は出歯亀精神でサキのあとを付いていく事となった。


 結局、なんやかんや言っても、みんな暇をしており、かつ今回の事件(?)についてもちょっとは関心があったりしたみたいで──結論だけ端的に記すと、みんなでアルベルト達のあとを隠れて付いていくこととなったのである。

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