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アルベルトくん14歳。カジノ潜入大作戦(1)

 サルヴェリウスさんとの面談から数日後。

 俺達は女神と直接会うために、サルヴェリウスさんの依頼をこなし始めた。


 1件目の仕事は、御禁制の物品の密輸入ルートをあぶり出すためにカジノへと潜入するミッションだ。


 なんで素人の俺達がそんな危なそうな仕事に駆り出されたのかというと、どうやら密輸入調査の部署の情報が外部に流出してしまったかららしい。


 現状では、捜査員の顔等の個人情報が犯罪者側に割れている可能性があり、捜査チームの入れ替えが必要らしいのだが、まだ新捜査チームの人選が終わっていない。


 そこで顔が割れていない俺達がひとまず潜入して、何かしら捜査の取っ掛かりとなる情報を収集する事になったんだが、素人の俺達が動いて果たして大丈夫なのだろうか?


 サルヴェリウスさんは、「現状では危ない目に遭う確率はまだ低いと思うよ?何事もやってみないとね」と、どこぞの意識高い系のような激励をくれたので、ひとまず潜入する運びになってしまった。


 潜入方法は至ってシンプルだ。


 行政側の協力で偽の身分をこしらえた上で、臨時の働き手として潜入するというものだ(意外にもカジノ業(こういう商売)は結構求人を出しているらしい)。


 そして作戦決行日当日。


 俺達は各人それぞれが店員に扮(コスプレ)してカジノにて情報収集を開始した。


ーーーーー


 カジノの中は想像以上に広くて煌びやかな、巨大なゲームセンターのような雰囲気だった。


 客層は若者から年寄りまで様々であり、みな思い思いのフォーマルな装いをしており百花繚乱な賑わいを見せていた。


 悪役貴族(アルベルト)に転生する前もカジノなんて行ったことがなかったので、文字通り生まれて初めての経験だ。


 俺は仕事の手を休めてそっとサキの方を見てみる。


 サキは、『あざとい衣装を着て客へとお酌をしながら、愛想を振りまいてバカな客に金を落とさせる』というのが仕事である(偏見丸出し)、バニーガールに扮して情報収集を行っていた。


 彼女は胸元に深いスリットの入った黒地のバニー服を見事に着こなしており、室内にいる他のプロのバニーガール達と較べてもそのスタイルの良さは際立っていた。


 時折不埒(ふらち)な客がおさわりしてこようとするのだが、どんな死角から攻撃(おさわり)されそうになってもそれを手刀で簡単に斬って捨てていた。


 時折チラッとこちらに潤んだ瞳を向けて助けてほしそうな仕草をするのだが、あれはただのかまって()ちゃん()だ。


(こっちはほっといても大丈夫そうだな)


 俺は順調に活動しているサキから目線を外し、フェリシアの方に意識を向けた。


 フェリシアの方は、カジノのディーラーに扮して客への聞き込みを行っていた。


 服装はセクシー路線だったサキとは異なり、白いパリッとしたシャツに黒のベストとズボンという、お洒落でスタイリッシュな装いだった。


 そして客と対峙する姿勢は真剣そのものであり、事前に行政側に用意してもらったイカサマトランプ(魔法道具)を駆使してイカサマポーカーに精を出していた。


「お客様、大分持ち点が少なくなってきているようですが……レイズの方は如何いたしますか?」


 流し目で客を挑発するフェリシア。相手はどうみてもカタギに見えんぞ。そんな相手にもっと賭けろだなんて普通の淑女がやる振る舞いではない。


「ふざけんじゃねぇよ!誰がビビるか!オールインだオールイン(全部賭け)ッ!」


 フェリシアの挑発に顔を真っ赤に染めて吼える客。

 その客は暴力の薫りを存分に撒き散らし、周囲のカタギのギャラリーさんを存分にビビらせていた。


「あら……それですとちょっとこちらでコールするには持ち点が足りませんから降りないといけないのかしら……困ったわ」


 そう言うとフェリシアはちょっとアンニュイな視線をヤクザな客に向ける。客はちょっとばかり冷静さを取り戻したのか途端にいやらしそうな眼差しをフェリシアに向けた。


「へへ……だったら足りないぶんはおまえがベッドの上で存分に返してくれりゃあいいぜ。

 俺はこう見えても紳士でな。哀願するお前が泣いて乞い縋るまでタップリと調教してやるよ!」


「……お優しいことですね。それでは手札の開示をお願いします……まぁ!お客様はストレートフラッシュですか!これは困りましたねぇ!」


 驚き、目を見張るフェリシア。確かに素でこの手札を手繰り寄せた客の手腕(ラック)には驚くばかりだ。

 だが残念なことにフェリシアにはイカサマ(魔法道具)があった。


「困りましたね。でもルールはルールですから、私も手札を見せないといけませんからねぇ」


「さっさと手札を見せな、ねぇちゃん。そしてその後は俺の部屋でパーティーの続きだ」


 勝ちを確信している男は、にやつきながらその粘っこい眼差しでフェリシアの肢体を舐め回す。

 なんとなくこいつの行動ってゲーム設定での俺(悪役貴族)を彷彿とさせるよね。


「それでは……まぁ、私はロイヤルストレートフラッシュでした。ふふふ、お客様の負けですね。ご愁傷様です」


 その手札に一瞬客は茫然自失し、直後に荒れ狂った。


「こんな……こんなのイカサマだッ!ふざけんなアマッ!ぶっ殺してやる!!」


 激昂しフェリシアに手を出そうとする男。周囲のガードマンが男を制止しようとする前に、フェリシアの焔を(まと)った拳が男の頬にめり込んでいた。


 ドゲシッ!!


 炎拳一閃。

 男はその一撃で床に沈み、痙攣して二度と立ち上がってきそうもない。


 驚き固まっている周囲のギャラリーに対してフェリシアは、


「皆様には大変ご迷惑をおかけしました。そのお詫びに、このお客様から迷惑代として皆様にシャンパンが振る舞われます。

 どうぞそちらをお飲みになりながら暫くはごゆるりとご歓談をお願いいたします」


 と言って賭けに勝ったチップのいくつかをさっとそばに控えていた他の店員に押し付け、飲み物を持ってこさせていた。


 あのナチュラルに人を使う姿勢はかっこいいなぁ。


 そしてフェリシアは禁制品の聞き込みをするという当初の目的を完璧に忘れて、楽しそうにその場に残っているカタギのギャラリーの皆さんと親睦を深めていたのであった。まる。


 そんな楽しそうにしている2人を横目に捉えつつ、オレは俺の仕事をこなすのだった。

 すいません。ポーカーの知識はうろ覚えなのでちょっと違うかも。

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