異世界へ行く夢
夢を見ました…
異世界へ行く夢。
親切な人に拾われて、手に職もつけてもらって、魔王を倒すだの領地を盛り上げるだのもなく、日々平和に暮らしました。
そろそろ独り立ちかというタイミングで目が覚めて、そしたら日本では時間が過ぎたということもなく、相変わらず頑固者の亭主がいて、アレを食べたいだのワイシャツにもっと糊を効かせろだの言う毎日。ハイハイとこなしながら、専業主婦に戻りました。
そのうち、また異世界へ行く夢を見たので、今度は亭主も一緒なんてどうかしら? と思い、独り立ちで暮らす予定の家に、二人で住みました。
異世界での暮らしはなにかと大変で、食事の支度に使う薪は割らなきゃいけないし、服は大切に着ているのでマメな繕いが必要、玄関前の小さな畑の世話や、嵐の後の屋根の修理など、夫婦で力を合わせないと、とても生きてはいけません。
お互いの仕事を手伝い、よく喋って、長い月日を楽しく暮らしていたけど、やっぱり目が覚めたら日本に戻っていました。
頑固者の亭主は、縦の物を横へも動かさないので、食事を作り、世話をして過ごしていましたが、ある日、具合の悪くなった亭主が入院し、病院のベッドの傍らに付き添っていると、ボソボソと話し出しました。
ずっと日本で会社勤めしていたはずなのに、どこか自然のなかの小屋で暮らした気がすると。
慣れない大工仕事や、農業めいたこともしたと。
お前と二人で、一緒にいろいろやって、そんなはずないのに、ありえないのに、それが正しい気がする。その記憶に置き換わっていく。
そう言って、腰に抱きついておいおい泣き出した亭主の、白髪まじりで少し薄くなった頭を見ながら、私は迷っていました。もう一度異世界の夢を見てあげようかな、どうしようかな…。
異世界ものの小説を読みながら寝入ると、こんな夢になるわけで…
読んでいた小説との類似点は、拾った人が親切、魔王倒しに行かない、領地盛り上げない、の部分ですね。
しかし結婚とかしてないのに、何故夫婦設定(しかも定年間近)だったのだ!しかも別に好みの顔の亭主とかでもなかった…不思議です。