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第30話 力の一端

前回、リディリとグライアが転移魔方陣を設置しに外に出ましたが、アリスもそれに同行するよう加筆いたしました。


「一応、ノイハルトの近くで言うと、闇龍がいるけど彼女は比較的温厚な性格でね。進んで生物を攻撃するなんてことはないんだ。」

「そうですか……少々残念ですが仕方ありません。」


 本当に残念そうにほうとため息をつく天樹姫にこの場にいる全員が苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 災害の象徴ともいえる龍を喰らおうだなんて、蛮勇ともとれる発言だが目の前の神の使いならやりかねない。というか絶対やるだろう。そしてその標的がノイハルトの守護龍である闇龍にならなくて安堵もした――その時だった。引き戸が開きパァンと破裂するような音を立てた。突然の音に天樹姫除く一同が音の方向に視線を向けると、肩で息をしながら小さな植木鉢を持ったアリスがそこに立っていた。


「お、お持ちしました!」

「アリス……君一応王族なんだからもうちょっと」

「お兄様は黙ってください!アマギキさん、この子です!」


 苦言を呈する実の兄であり王の言葉を一蹴し、アリスは急ぎ植木鉢を天樹姫に手渡す。

 受け渡されたそれをのぞき込むと……確かにそこには小さな命があった。生えたばかりの新芽の葉の間に小さな、本当に小さな人型のものが見えた。

 その人型はまるで赤子のように丸まって、しかしその体は震えていた。明らかに弱っているのが見える。


「これはいけませんね。急ぎ庭に植え替えてあげませんと。」

「お願いいたします!」

「ウスケ、先に行って小さな穴を掘っておいてください。」

「ウォウ!」



 神社の庭へと出た一同。天樹姫は残って茶を楽しんでていてもいいと進言したのだが、貴重なものが見れそうだと思ったため、全員が外に出ていた。ちなみにリディリも転移魔方陣を設置し終わり、天樹姫の力の一端が見れるということでグライアに肩車させ、すぐに来た。

 全員が、天樹姫の一挙一動に注目するのだが、その注目の的である天樹姫からしたら別に植え替えるだけなのだからそんな注目しなくてもとやり辛かった。


 さて、庭――魔癒草のすぐ近くにウスケによって掘られた小さな穴がある。天樹姫はそっとドライアドとその周りの土を掘り起こし、穴に埋めた。そして手を合わせ呟いた。


「天稲大神様に仕えし天女、天樹姫が命じます。土よ、水よ、光よ。そしてこの地に息づく小さな命のともがら達よ。彼の小さな命に生きるための力を与え給え。」


 その瞬間、一陣の風が神社を巡り、魔癒草や畑の数多の野菜の葉が揺れ、ドライアドを植えた土の周りが比喩ではなく本当に光輝いた。

 異常事態にマハータは、キョロキョロ見渡し、グライアは額に冷や汗をかきいつでもジークルトを護れるよう足に力を籠める。リディリは興味深そうに光る土に目を落とし、ジークルトは天樹姫が見せた力の一端に口角を上げ、そしてアリスは胸の前で手を組み祈った。天樹姫に、彼女が仕えるという天稲大神様に。

 その祈りが届いたかどうか――いや、少なくとも目の前に確かにいる天樹姫には届いただろう。そしてその祈りは天樹姫の力となり光は一際強く輝いた。


「さぁ、生きたいのであれば目を開けなさい、小さな命よ。この地は貴女を歓迎します。」


 一帯に広がった光は次第にドライアドを中心に収束し、ドライアドを包む。小さくなったと思いきや光は膨れ上がり人の形を成し、消えたころには天樹姫に向けて跪く葉の服、いやドレスを着た小さな少女の姿がそこにあった。

 誰もが成功を悟り、アリスの目からは涙がしたたり落ちた。


「気分はどうですか?」

「ひゃい。わらひをおしゅくいいたでゃきありがとちょうごじゃいまひゅ。」

「おやおや、まだ言葉をうまく扱えていないようですね。」

「もうひわきぇありまひぇん。でぃぇすがちゅかいうちにまひゅたーひたひましゅ。……しょりぇとわがきゃみ。わらひはもうおひちょかたおりぇいをもうひあぎぇなければかちゃがごじゃいまひゅ。」

「えぇ。アリスさん?こちらにいらっしゃってください。」


 呼ばれたアリスは小さく返事をすると袖で涙を拭い天樹姫の隣に立つ。

 先ほどと比べ見間違うほどに成長したドリアードは立ち上がり、前に出たアリスの足元にギュッと抱き着いた。


「わらひを、ちぃさなわらひをちゃしゅけてくりぇてありがとちょうございまひゅ。おきゃあひゃま。おきゃあひゃまのきょえはいひゅもわひゃひのとでょいちぇいまひた。」

「良かった……良かったですぅうう!」


 アリスは膝をつきドリアードを抱き返し涙を流した。今まで諦めず世話を続けて声を掛け続けていてよかった。自分のしてきたことは、無駄ではなかった。そのことが嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。

ドリアードの言葉は頑張って解読してくださいね!

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