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第28話 近隣諸国たち

「いいか、アマギキ殿。この森は4つの国と隣接している。」

「多すぎません?」


 天樹姫の中では精々レッロの所属している国と目の前のジークルトの納める国の2つがこの森に隣接しているのだと思っていたのだが、実際はその倍の4ヵ国と隣接していた。天樹姫が千里眼をフルに使うことができれば知ることができたのだろうが、今の彼女の千里眼は精々この森一帯しか見ることができない。故にそれ以上の景色をツェルジェノ領以外見たことないので仕方ないことではある。

 

「その隣接している国と言うのは?」

「まずこの森の北にある僕が納める魔国ノイハルト、基本的に魔族が住んでいる国だね。あ、比較すると少ないけど人族と獣人もいるからね。」

「先代が早く亡くなられてから、ジークルト様は若くして王を務めているんだ。実力主義なところのある魔族からは最初ジークルト様を侮る者もいたが、今や皆が認める王となられたんだ。」

「待って、グライア……その辺にしておいてくれよ、恥ずかしい。」


 その言葉が示す通り、ジークルトの顔は耳まで赤く染まっており、照れているのが良く分かる。それを笑って受け流すグライアからしていい主従関係のようだ。


「後は、海に面していてね。海産物が有名かな。」

「ほう、海産物!」

「そこに反応するんだね。」


 それもそのはず、天樹姫がここにきて食べた魚と言えば、美味しいとはいえ川魚ばかり。その点海には川には存在しない海産物がゴロゴロと転がっている。先の交渉で美味しいものを持ってきてもらえることになった天樹姫は、喜びを隠すことなくまだ見ぬ海産物に笑みを深めた。


「えーっと、いいかな?次はアマギキさんが行ったって言う森の東側のツェルジェノ領のあるソルード王国。この国は四季のバランスが取れていてね。非常に過ごしやすい国と言われているんだ。ちなみにノイハルトは冬が長めで夏が短いんだ。」


 四季のバランスが取れているといったところで天樹姫は、すぐさま日本を思い浮かべた。しかし、ここで話題に出すこともないと判断したので、心の中にしまっておいた。


「ソルード王国とは、昔から親交があってね。よく訪問しあったりしているんだ。だからその米も譲ってもらえるかもってね。」

「その辺は頑張ってくださいね。ツェルジェノ領の領主はともかくとして息子の方は話を聞いてみると面白いかもしれませんよ?」

「領主じゃなくて息子?……まぁ、アマギキさんが言うんだから心に留めておくよ。」


 息子と言うのはもちろんレッロの事だ。領主に関しては少し話しただけなのでよく知らないし、これといった興味もない。もしかしたら有能なのかもしれないが、天樹姫の知るところではない。


「次に南に面しているウォルーズ帝国。ここは領地拡大に執心していてね。ソルード王国も手を焼いているようだった。帝国に潜り込ませている密偵からは、この森すら手に入れようとしているそうだという報告も聞いたことがある。」

「と言うことは、この森はどの国のものではないんですか?」

「あぁ、遥か昔よりの盟約でね。強力な魔物もいるが、潤沢な資源のあるこの森は誰のものでもないということになっている。……本当に昔の話で今は微妙だけどね。」


 現に帝国がものにしようとしているのだから、言外にそう言っていた。

 それを聞かされた天樹姫はどこ吹く風。へーそうなんですか。位の感想しかもっていなかった。


「そして最後に――西に面しているカゼルメス神聖国。」

「神聖国、宗教国家ですかー……あーバチカンですね。教会が力持ってるんでしょう?」

「ばちかんが何かは知らないけど、その考えであっているよ。そして、それ故にアマギキさんは絶対にこの国にはいかない方がいい。」

「異世界の天女だからですね?」

「そう。かの国は、光の神カゼルメスを唯一神として崇め、それ以外を認めていない。信じる者には救済をってね。」


 絵に描いたような……いや、この場合小説投稿サイトに書かれたような宗教国家だなと天樹姫は思った。そしてジークルトは行かない方がいいと言っていたが、逆に興味がわいた。

 それすら顔に出ていたので、何となく天樹姫の考えていることを察したジークルトは、嘆息したが責める者はいなかった。




「豊穣の力……それがアマギキ殿の力なのか。」

「正確には天稲大神様のお力を一部頂いて行使できるというのが正しいですね。」


 近隣諸国の話と食事を終えた一行は、天樹姫の事が知りたいということでその質問を天樹姫は応えられる範囲で答えていた。答えられない範囲と言うのは、この食事している空間にある炊飯器や電子レンジ、エアコンといった地球から持ってきた電子機器だ。これに関しては天樹姫は断固として教えないし触らせもしなかった。

 見たこともない機器に、心躍らせたのはリディリだけではなくジークルトやグライアもなのだが、断る天樹姫の目が笑っていなかったので、あっさりと引いた。

 なのでそれ以外となると、天樹姫の力ということで今の話になった。


「だが、そこの狼の魔物、いや鑑定には神獣と出るんだが?豊穣とは植物に関する力だろう?その神獣は一体?」

「この子達はきっと、この空間の神気に充てられて進化したんじゃないんですかね。私も予想外の事でしたのであまり……ってやっぱり神獣になってたんですか。」


 狼の神獣というのは勿論アコとウスケの事だ。2匹も食事を終え今はアリスと仲良く戯れている。

 そして遊びながらもその話を聞いていたアリスが、何か思い出したようにハッとし、天樹姫に視線を向ける。


「あ、アマギキさん!貴女の豊穣の力と言うのは……植物型の魔物にも効果があるのですか!?」

「え?そうですねぇ、魔物と言えど植物なら効果あるんじゃないですか?この神社には魔物と言えばアコとウスケくらいしかいないので何とも言えませんが。」

「お願いします、助けてほしい子がいるんです!」

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