85話 悪魔の裁判
あの後はもー大変だった。お城が。
約束を取り付け終わったので、女神様召喚(映像)を解除して。混乱に乗じて、とりあえずうちの家族を引っ張って馬車で帰ってきたんだけど。
お城の周りもね、人がすごくて。
殺到しててさぁー……あははーやりすぎちゃったかなー? ってちょっと思った。
あれはまだ集まりそうだったから。
早く出てきて正解ですね。
帰れなくなっちゃうよ。
ま、これで予定通り噂にはなる事でしょう。
城から出た馬車も注目されてたから、目敏い人は関係があるって考えると思うし。そこから私の話が割れたら、もうすぐだよね。
でもそうなったらマズいかもしれないのは。
公爵邸まで観光名所になっちゃう事だ。
平穏に暮らせなくなる。
というわけで。私はこの辺一帯に、興味本位でうちに来る人は何故か迷って来れない魔法をかけた。
バリアみたいな壁じゃなくて、イメージは霧。
魔法の霧が吸い込んだ者の脳に、幻影を見せるって感じかな。うん、我ながら闇っぽい魔法だ。
ちなみに馬車の中でも、シーナ以外には質問責めにあった事をご報告致します。けど私が答えたのは「見たまんまだよ」だけなんですけど。
ということでね! これで当日まではほぼ自由よ‼︎
いや作戦会議とか当日の指揮を、本当に任せてくれるなら少しは忙しいかもしれないけど……そこまではどうかな。
あれは提案で、強制じゃないし……言ってしまえば家でもできるからね。いつ突撃か分かれば。いつかっていうのは多分シーナが教えてくれるしなぁ。
ってところでアルから連絡が届きました。
逃げてきちゃったもんね……私暫くはお城行かない方が良いよねー。当日以外は混乱しちゃうし。そう思ってたのだけど……馬車を出すから来いとな?
あー今度は何を質問責めにされるのやら……。
それとも、婚約破棄の話でも出たかな?
まーここまでやらかしたらねぇ……。
婚約者で良かった! って人と。
危ない人物では? って人で分かれるよね意見が。
運命の強制力があるなら、あの日までは婚約者だと思うけど……どの程度の強さか私には分からないし。
何故か今回はセツも一緒に、との事なので。
「え? いや今城に行くなんて、無駄に注目浴びそうでやなんですけど……」という、私そっくりな思考の弟も引っ張って来ました。
もう数日経ったので、さすがにお城の前の人だかりはなくなってた。
良かったー! これまだあったらうちの家と同じ事、お城にもしなきゃかなって思ってだんだよねぇ。
でもお城は公共の場所じゃないけど、シンボルだからそれはそれで問題かなと思ってたのだ。一安心。
そのまま馬車を降りたら。
メイドさんたちに連れられて。
いつもの部屋へ……入る前に思った。
そういえば、アルならうちまで迎えに来そうだけど、来なかったなー?
これはいよいよ婚約破棄も視野に入るのか……? それはねーこんな得体も知れない人間、置いときたくないよねぇ。
でも、部下になるのは許してくれないかな……と思いながら扉を潜ると。
「へ? 何でみんないるの?」
部屋にいたのは何とアルだけではなくーー。
「殿下に1人じゃ手に負えないから、助けてって言われたんだよ……僕は悲しいよクリスティ?」
「いやなんか聞いた話だと、クリスがこの間の城水浸し事件の犯人だって言うから、気になるだろ?」
「今日こそ逃しませんからね? 話が終わってからじゃないと、リリーに会わせませんから。リリーは早く会いたがってましたよ?」
うーーーーん! 何で呼んじゃったかなぁ!
怒られるじゃん!
アルだけじゃなくて!
ブランにまで私怒られるじゃん!
ヴィンスはまぁいいか、ある意味今だけは清涼剤……よね? ヴィンスも怒ったりしますかね……?
けど何より、隣にいる弟の視線が1番痛いんですけど……何? 君は現場にいたでしょ? え? ブラン困らせてる事で怒ってるの?
アルが1人ソファー、そこに向かい合うソファーへヴィンスとブランが座っていたんだけど。
アルがヴィンスの隣に移動してくれたので……はい。座ります。セツも連れて座ります。
すごいなぁこの陣形……逃げ場ないなー‼︎
あーもう! こうなったら‼︎
シュバッと手を挙げる。綺麗な挙手!
「はい! あの、私の話を聞いて下さい!」
「ええ、もちろんです。その為の集まりですから、ねぇブラン先生?」
「……本当に申し訳ございません殿下」
あれ、いつの間にブラン先生って呼ぶほど仲良くなったの? よかったね!
「おいクリス。何でここでニコニコしてるんだ」
「え? 仲良しだなーって」
「すみませんうちの姉がバカで……」
「なんで⁉︎ 何で突然弟から罵倒が⁉︎」
「クリスが空気読めないから」
「そうそう頭が悪いから」
「頭が悪いは余計なんですけどっ⁉︎」
君たちも仲良しだなっ⁉︎
その目を合わせて、ねー? ってするの可愛いけどやめろ!
「それではあの日、中で何があったかーー洗いざらい、話して下さいますよね?」
わぁ。オージサマのステキなスマイルー……黒いなぁ……。
「クリスティ、お願いだからこれ以上迷惑掛けないでね?」
「ブラン兄ちゃん大丈夫?」
「僕は今日君たちが失礼な事をしないか、とっても心配で」
「え、オレもなの?」
「もう怖い」
ぶ、ブラン先生の採点がリアルタイムで行われる、だと……っ⁉︎
だ、大丈夫大丈夫……うん。
とりあえず失礼のないようにすれば良いのよね。
うん、うん……帰りたい!
「それでは申し開きを伺いましょうか……あの日、ティア何をしたんですか?」
「嘘を吐かずに答えてくださいね?」と言って、悪魔の裁きが始まった。