表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/574

69話 飼い主泣かせ

 絵本はリリちゃんが持っている。


 一応アルが読んでいるけれど、そもそも文字が少ない本みたいだ。絵がメインで、それが大人の目から見ても綺麗だ。


 内容としては、生命の神セイレーヌ様と創生神マウティスの、恋愛の様子を描いたもので、神罰落されるとこの手前で終わってるハッピーなやつ。



「リリー、この女神様になりたいのー」



 本物の女神様はほぼ白と言えるようなブロンド、加減によっては、プラチナブロンドにも見えた。そこに美しいアクアマリンの瞳だった。


 そして素材の良さが生きる出立。


 でもこれは絵本だからか、セイレーヌ様盛り盛りである。


 乙姫の羽衣みたいなの付けてるし。

 アクセサリーも多いし。

 ヒレがヒラヒラと沢山ある。女の子好みだ。



 そしてこの絵本のセイレーヌ様、ちょっとリリちゃんに似ていた。



「リリーは『愛し子』だから、良い子にしてればこんな風に素敵になれますよ」

「うん! リリーいい子にする!」


 兄妹のそんな睦じい様子に微笑ましくなりながら、気になった単語について聞く。



「アル、『愛し子』って何?」

「『愛し子』は王族の中でも、風と水と火の魔力が強い者のことを言うんです。先祖返りに近いって」



 ああ、神話の最初の人の子に近いってことなのかな? じゃあ見た目も近いのかなぁ?


 でも見た目は、アルとリリちゃんそっくりだよね。



「……少しくらい水が使えたらよかったのに」

「え?」

「いや……なんでもないですよ。リリーは女神様にきっとそっくりだなって思っただけです」



 一瞬暗く見えたその表情を逃さなかった。

 尋ねても、もう元に戻ってしまったけれど。


 ……気のせいじゃなければ、水の魔力の話?


 そう言えば、使えないって言ってたっけ。大したことじゃないと思うけどなぁ。



 何か引っかかるけど、あんまり聞き出すのも……。



「ひらひらかわいいの〜」


 リリちゃんは女神様の絵に夢中だ。ニコニコと笑いながら撫でてみたりしている。


 そんなリリちゃんが、私は可愛いけどねー。


 ちっちゃい女の子はお絵描きも好きだよねー。

 従姉妹とか、可愛い女の子描くと喜んでくれてたっけ……あ、じゃあ。


「リリちゃん絵、描こうよ!」

「絵? クレヨンもってくる!」


 そしてまたダダダッと走って行ったーーあれ幼女のスピードじゃないぞ?


 もう魔法使ってたの?

 普通の魔法って、詠唱いらないっけ?

 まさかまさかの無詠唱?


 困惑している私に、アルは話しかけてくる。



「……リリーはすごいんですよ。あの加速(アクセラレーション)も、教える前にできました」



 扉を眺めながら。アルは少し、悲しそうな顔をしている。


「でも、アルだって使ってたじゃない?」

「私は最初からできたわけでは……それに、みんなが使えるものなのに、私は水が使えませんし……」

「みんなって誰?」

「王族は使えるのが普通くらいなんです……だから」


 問えば問うほど、その表情は歪んでくる。


 ああ、それで気にしてるのか。一般人とか使えない人ザラにいるのに、と思ったけど。


 つまり誰かがアルに言ったわけね。

 何で使えないんだって。

 もしかして、妹と比較されてるのかな。



 うーん、分かった!



「アル」

「はい、なんですか?」

「諦めよう」

「はい?」



 スッパリ言った私に、アルはポカンとしている。


 驚きで時が止まっているとこ悪いけど、私は優しくないので事実は言うよ。


「あのね、使えないものはどんなに頑張っても使えないよ。羨んでも妬んでも、自分の物にはならないの」

「そ、それは……」


 瞳を逸らし戸惑われても、止めない。


「私だってアルたちが使ってる風、使いたいけどそもそも風の魔力がないから、できないよ」

「……そう言えばそうでしたね」


 思い出したかのように、こちらに視線を戻された。


 忘れないでよー!

 私にとっては結構ショック案件なんだよ⁉︎



「でも、ティアは闇の魔力を持っているじゃないですか……」



 アルの悲しそうな発言に、私もなんとも言えず。困って微笑むしかない。


 ……これの正体知ったら、どう思うんだろうね。

 少なくとも、見る目は変わっちゃうよね。はは。

 だから私は、濁すことしか出来ない。


 こんなのは、闇の魔力なんて、持ってない方が幸せだと思うよ。知らない方が良い事は世の中あるのだ。



 まぁそれが分からないまま、生きた方が幸せだけど。



「……そうね。そう。だから私は誰にも笑われないでしょうね」


 忌み嫌われる事はあるかもしれないが、とはここでは言わないでおく。


「そうですよ……だから」

「その通りよ、なら他のものでカバーすれば良いわ‼︎」

「は?」



 そう、今は()()()ではない。



 惚けた顔は気にせず、こんこんと話し続ける。


「アルは風と火が使えるよね?」

「……火は君の前では使ってないのでは?」

「お父さんに聞きました!」


 必殺! ゴリ押しアタック!

 不思議そうにされてもガンガン行こうぜ!


 話を遮りそのまま進むよ‼︎ 押し流すのじゃー‼︎


「それでね、その力にはどっちも限界あるかもしれないけど、組み合わせれば幅が広がると思うの」

「組み合わせ……ですか?」

「出来ない訳じゃないでしょう?」

「そうですけど、そんな人はあまり……」


 そう、この国では魔力はそれぞれ単体で使うことが主流だ。


 組み合わせても弱い魔力でしかしない。

 単純に制御が難しいから。

 だから、純粋な魔力差がモノを言うのだけれど。


 よくあるじゃないですか、漫画とかアニメとかだと……!



 ないなら技を、作れば良いのよ!

 つまり、合体技だよ‼︎

 夢とロマンの塊だよ‼︎



 本家『学プリ』ではなかった展開なんだけどね。あの時のアルは、もう自分の火の魔力に自信持ってたし。


 だからほっとけば、解決する問題なんだけど……私ね。困ってる人の顔、見てるの嫌なのよね。



 という訳で、またもやエゴです!

 闇使いらしくね!



 そんな迷いは押し流してしまえ!



「魔力があれば魔法は使えるんだから、大技の組み合わせるのだってできるよ!」

「で、ですが……」


 ツン!


 言い訳ばっかりのお口に指でアタック!



「いいですか、女神様も仰いましたーー魔法の基本は『疑わずに出来ると信じる事』‼︎ それさえあれば、大体できるよ!」



 まぁこれは闇の魔力に対して言ったことなんだけどさ。でも、アルの魔力量が少ないとはとても思えない。



 なら、足りないのは自信だよ!



 人は直接言われるより、人伝いに話を聞く方が信じやすい。これぞ心理学。噂話なんかそうだね。


 というわけで女神様のお言葉、お借りしました!

 神の言葉とか、信憑性すごいもんね!

 むしろ疑ったら罰当たりだわ。



「大丈夫! アルならできる! 私が保証しましょう……だってアルが頑張り屋さんだって、私知ってるもん‼︎」



 この歳にしてあの知識量なのだ。

 頭が良いだけじゃない。

 知識は、学ぼうとしなければ手に入らない。


 だから私は、自信を持って言います!


「足りないなら、補えば良いの! 私も何かできることがあれば手伝うーーアル?」

「君はいつもそうだ……」

「え?」

「私の言うことなんて聞いてくれなくて……いつも無理やり引っぱって、予想外なことばかり言う」



 そう言って……瞳からポロリと落ちるその滴はーー!


 あああああ⁉︎

 また子供泣かせたぁああぁ⁉︎


「え! ごめんごめんなさいアル! どうしたの? 指ツンそんなに痛かったの⁉︎ それとも私が自分勝手すぎたのっ⁉︎ そんなつもりじゃなかったのー‼︎」


 一頻(ひとしき)りアワアワした後、ええい! もうままよ! というわけでギュッと抱きしめる。



 まただよ‼︎

 またやっちまったよ‼︎



 経験上背中に手が届かないのは知っているので、今度は頭を撫でつつ肩をポンポンしました。


 私、お姉ちゃん失格かも……。

 忠犬は確実に失格!

 ごめんよ主ー‼︎



 頑張るから捨てないでー‼︎



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >つまり、合体技だよ‼︎夢とロマンの塊だよ‼︎ 分かってるじゃねぇか……。 合体技楽しみ(∩´∀`)∩ [一言] ついに泣かせてしまった。 その後、ぎゅっと抱きしめるとか……。 コイツ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ