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61話 お帰りは微睡の中で (挿絵)

 まだ見ぬお姫様に、私心はルンルンである。


 フィーちゃんも可愛いんだけど!

 リリちゃんも可愛いんだよなぁー!


 フィーちゃんはふわふわ可愛い系だけど、リリちゃんはふわふわ綺麗系なんだよ! うふふ! このゲーム可愛い子多いから!



 ……クリスティア以外……。



 「おほほほ!」と笑う、悪役顔が頭をよぎってちょっと落ち着きました。


「あなた、そんなに浮かれてるのは良いけれど、自分のことは大丈夫なの?」


 ちょっと呆れ顔で、女神様が言う。



「自分のこと?」

「このまま行くと、あなたは死ぬでしょう? それはリリチカ・カサブランカとは別の話よ」



 あーそういうね!

 そうそうそ……ほんとだー⁉︎


 私ははたと気付いて、慌てて返した。


「だ、大丈夫ですよ! その為に仲良くなってるんですよ⁉︎ このままいけば! いえ、なんならリリちゃんも攻略して仲良くなれば!」


 そうだよ!

 アルほどじゃないけどリリちゃんも王族。

 それなりの権力を持つことになる!



 なら、仲良くなっておいて損はないです!



 考えたくはないけど。アルに追放されそうになった時に、リリちゃんに泣きつければ……。


 良いのかそれで私……。


 まぁでも私も弟かかってるので、とやかく言ってはいられない! ここは闇の使い手らしく悪どい感じで行きましょう!


 という事で、後からにんまり笑っておく。



「……あなた自身で変えられない運命なら、王子を懐柔すればいいわ」



 何故か女神様は私の反応を憐れんだかのように、少し目を細めてそう仰いました。


 ほへ? なんでアル?

 いや確かに追放するのアルだけどさ?

 それは分かってるよ?


 目をぱちくりさせてまるでわかってない私へ、嘆息気味にお話しなさいます。



「闇は欲望の塊だと言ったでしょう……その百合には、王子の魔法、つまり欲があるわ。失いたくないと思わせれば、運命をねじ曲げることもできるはずよ」



 なんと! 目が点ですよ!


 え、いやそうか考えたら……運命の反転とか言って忘れてたけど、あれただの言い訳だもんね……本質は欲……欲望……私をどうしたいかってことか。


 あのアルにそれほどの欲があるとは思えないけど……いや邪魔だから消したい、は誰でも思うときは思うか。


 それで悪役令嬢(クリスティア)はサヨナラバイバイ、ってなっちゃったわけですし⁉︎




 つまり、私は忠臣を目指すしかない!




 失いたくない惜しい部下だと!

 心置きなく任せられる家臣だと思わせればいい!

 なーんだ、変わんないじゃん! 解決!



 ではまずリリちゃんを助けて、忠臣への道を切り拓こうではないか!



「ありがとうございます女神様! 女神様って思ってたよりいい神様でした!」



 私は女神様を見上げて、屈託のない笑顔でそう告げた。


 最初はなんだこいつと思ったし、言い方がどうかと思うけどね。


 でも終わってみれば子供思いで、私にアドバイスもくれたし……いや私の前世終了の原因も、この世界に来た原因もこの神様のせいなんですけど。



 まぁけど、裏表のない人は私結構好きなのだ。



 人じゃないけど。1番嫌いなのは私みたいに狡猾なやつだからね。多分自己嫌悪だよ。


「ふ、ふん! 分かればいいのよ、分かれば‼︎」


 照れているのか腕を組んで、少しお顔を赤くされてそっぽを向かれる。子供みたいな神様ですよね。


 美神だけど、分かりやすくて扱いやす……。



「ねぇあんた、今失礼なこと思ってない?」



 目だけでジロリと睨まれました。曖昧に笑っておきますね。


 エスパーかな?

 光は別の神ではなかったかな?


「失礼なこと思ってると、ここから出してあげないわよ」


 おっと、それはいただけませんね。


「それにしても、ここはすごいですね。どうなってるんですか?」


 さっさと話を変えてしまうに限るので。私は何事もなかったかのように、辺りを見回してそう尋ねる。


 海の中なのに息できるし、歩ける。


 けど女神様の髪はまるで海の中のように浮いてるから、水はあるのかなぁと思うんだけど……。



「知らないわ。あいつらに聞いて」

「あいつら?」

「アミトゥラーシャとクロノシア」



 しかめ面のまま、そう言われた。


 あ、あいつらって、光と雷の神と時空間の神でしたか……。私は謎の動揺をしたよ。


「その二柱が女神様にくれた空間なんですか?」

「もともとはクロノシアが私とマウティスのためにくれたのを、アミトゥラーシャが改造して監視房にしたの」


 頬杖をついて、つまらなさそうに……って。


 んん⁉︎ なんか怖いこと聞こえたんだけど!



「全面光の壁なのよ。もう悪さしないようにここにいろだって。別に不便ではないけど、退屈なのよね」



 固まる私を他所に、女神様は目を閉じて心底面倒臭そうにボヤく。


 悪さってあの神話のやつなのかな……。

 え、それ何千年前……? 神様こわ……。

 いやそれほどやらかしたのかな……。


「もう破って出てしまおうかと何回思ったことか」


 って出られるんかーい!


「なんで出ないんですか?」

「そんなことしたら海が荒れて、世界の半分以上は一旦海になるもの」


 あ、人類滅亡します。ダメでしたわ。


 私の率直な疑問に、正直なお答えありがとうございます。やめといてください。


「それに、私達は基本隠れていなきゃいけないから、居場所はどうでもいいのよね。ここも、呼びたい時に誰でも呼べるし」


 そう言うと疲れたのか、女神様は玉座で体育座りをし出した。


 おいおいそれでいいのか女神様。

 威厳皆無ですけど。

 いや、いじけてんのかな?



「……まぁ、たまになら話し相手になりますよ……?」



 って神に言うのもどうかと、自分でも思うんですけどね……。


 だって私一般人なのだ。

 他に何もできない。

 だったらせめて、と。


 躊躇いがちにそう言うと、比喩でもなく物理的に大きい瞳がぱちぱちした。




「ふ……んふふふふふっ! あんたほんと面白いわ! 神に向かってそんなこと言う⁉︎」




 その件に関しては、誠に申し訳ございません。

 しかしそんな死んだ目をした私は無視して、笑い続ける。



「私なら、呼びたい時に呼び出すことだってそんな難しくないのに……! くっ……ふふふふふっ‼︎」



 女神大爆笑である。そんな笑います?


 ねぇ。私狙ってないとこでさぁ。

 人によく笑われるんですけど。

 どうしたら治りますかね……。


 笑い続ける女神様の前で落ち込む私に、やっと落ち着いた女神様が言う。


「ふふ……あぁおかしい。いいわ、じゃあここに来られるようにしてあげる」

「へ?」


 パチンッ!


 そう指を鳴らしたかと思うと、水流が女神の指先に集まっていく。



 そしてそれは、1つの、まるで女神様の瞳のような、綺麗なアクアブルーの石に変わった。



 そして次の瞬間、それは女神様の手元から消えて、私の手に握られていた。


挿絵(By みてみん)



「え⁉︎ なんですかこれ!」

「私からのプレゼント。それがあれば、いつでもここに来られるわ」



 驚く私に、ニヤリとした女神が答えた。


 破格の品であった。

 でもそれだけじゃなくて……。



「……綺麗」



 そう、ものすごく綺麗なのだ。



 その青さは、そのまま水を石に変えてしまったようである。それ自体が光を放ち、水面のように反射する。


「加工してもいいわよ。一部でもあれば、あなたならここに来られるようにしておくわ。暇な間は魂でも摘んで待ってるから」

「え、ちょっと現実に引き戻される、不穏な言葉が聞こえたんですけど!」

「やだ、ちゃんと戻ってきた子たちよ? あなたはまだ食べないわ。1度私の中に戻さないと、まっさらな魂に戻せないでしょう?」


 眉を寄せた私に、なんでもなさそうに言う。


 そういうもんなのだろうか。

 いや、しかしですね?

 私嫌な予感がしたんですけどね?


 冷や汗をかきながら、おそるおそる聞いてみる。



「お、お父様も食べたんですか……?」

「おいしかったわよ」



 こいつ神じゃなくて悪魔だ⁉︎



「しばらくすれば、新しい命に変わるわ」



 そうなのか……なんか納得いかないけど。めちゃくちゃ混乱してますけど。


 でもこれで、いいのかもしれない。

 いや、私的には理解はできないんだけど……。

 神基準とか、人間には理解できないんだけど……!



「さぁ、もうお帰りなさい」



 勝手に呼び出しといて、急に帰れという。


 そんな身勝手な神様の声は、子守唄のように優しく響きーー。



「あの子が待ってるわ……よろしくね」



 知らぬ間に私は再び眠りに落ちた。

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― 新着の感想 ―
女神様、全体的に駄女神、ヒドイン、チョロインの三要素を含んでいるように感じました(笑) それでも時空神が飽きるほど何度も何度も繰り返して頑張っているのは守護者らしくて良いですね。 色々と重たい事実が…
[良い点] 61話の感想 大丈夫、クリスティアもかわいいよ! 女神がとことん駄女神で笑う。 まぁ……ちゃんと仕事はこなしているわけですけど、性格は終わってるなーと。 セーブポイント的なアイテムをゲ…
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