表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、思い出す〜バッドフラグはここから始まった〜
6/533

4話 前置き (挿絵)

「せつは私だって、どの時点で分かったの?」


 どん底気分から回復した私は、ふと思った疑問を口にした。私が気付いたのは、記憶が戻ってからだけど……。


「いや、なんか池に落ちたのがあの時とダブって……。そしたらなんか、そうじゃないかって直感というか? ……あとは()()()の位置かな」

「あぁ……これか」


 そっと左手で目元に触れる。

 それはちょうど泣きぼくろがある位置。

 見覚えがあって、見覚えがないはずのもの。


挿絵(By みてみん)


「……クリスティアこんな位置に、ほくろなかったと思うんだけどな」


 髪型的に、隠れていた可能性は否定できないけど――クリスティアの左側の髪はウエーブしているから、いい感じに隠れそうな位置なんだよね。実際、知っている人じゃないと私のほくろもわからないはずだ。


 セスはどうだったかなぁ。

 彼は本当にサブキャラだったから。

 あまり見た記憶ない……。


 声すらもあまり聞いた覚えがない。本当に脇役というか、おまけというかモブというか。クリスティアの取り巻きみたいな感じでちっちゃくついて出てくる感じだった。だからそんな細部までわからない。


 当然専用スチルとかないし!

 書き下ろしイラストとかないのだ!

 知りようがない! 悩んでもわからん!!!!


 私がそうやって頭をひねっているとをしていると、発言に違和感を覚えたらしい弟が疑わし気な顔で聞いていた。


「ねぇ。なんかこの状況になった原因とかしってんの?」


 ……まぁ知ってるといえば知ってはいるんですけども……。


 うーん、でもこうなれば仕方ない。

 弟に話すのもアレだけど。

 とても気が引けるんだけれど……。


 そうも言ってはいられないから、腹を据えて向き直る。



「私の考えが正しければ」

「正しければ?」

「ここは乙女ゲームの世界である!!!!」



 恥ずかしさを勢いでごまかしておしきり宣言する。


 そう。この名前、設定。

 私がやっていたゲームにとてもそっくりである。

 ……夢だと疑いたくなるくらい。



 それでも現実なんだと思うのは、完全に目の前にいるのがセスじゃない(せつ)だから。



 これが現実じゃなきゃ説明がつかない状況……だから受け止めてるけど。しかしよりによって弟に趣味がバレるとは——今すぐ舌を噛み切れってことかな! この世界の神様は鬼畜なんでしょうか! まぁそうも言っていられないんですけどー!


 への字の口のまま、弟の様子を伺うと。



「マジかよ……。なんかあの王子とかデジャヴ感あるなと思ってたら! あれゲームのパッケージで見たやつだったのか……!」



 一気に絶望の淵に立たされたように、ため息をついていた。


 なんだよう。そりゃ転生は嫌だったんだろうけど。

 姉との再会よりショック大きそうで若干不服を申し立てたい。

 あとキミ、私のゲーム勝手に見てたね? いつ見た?


 いろんな不満が込み上げたけど、とりあえずのみこむ。私はえらいお姉ちゃんなのである。


 にしても君、状況受け入れんの早くない?

 もうちょっとこう、疑わないの?

 私が言えたもんでもないけど。


「なんか漫画漁った時に机の上にやたらきらきらのやつ置いてあるなとは思ってたけど……つかこの世界に来たのくー姉のせいかよ!」

「あ、なるほど。勝手に漁るな。そしてその件に関しては面目ない」


 まぁ漁られたのはこやつめと思わないでもないけど。そこに置いてた私も悪いか。いやでも特装版特典付きでダウンロードとかでは買えなくてですね……? というかそんなバカなとは思うけど、もしかしてここにうちの弟いるの、パッケージを目にしちゃったせいだったりする?


 それだったら私の責任かな? 申し訳ない……と思いはじめたのに——。




「どうせなら、オレ好みのRPGとかそっちの異世界が良かった‼︎」

「!!???そっちなの!!????」




 我が弟君ときましたら心底悔しそうな顔で、拳をボスンッとベッドに叩きつけております。


 おぉーいそこかよ‼︎

 転生は良いのかい‼︎ 私の涙を返してよ‼︎

 あとそれには姉、賛同できません‼︎


「考えなさいよせつ、それは危なくない? だってせつの好きな世界って、大抵銃撃飛び交う世界じゃん‼︎」

「いや剣の場合もあるし!」

「うん、そこじゃないねぇ!!!!」


 申し訳ない気持ちもどこへやら。気付けば私は、ただ必死に訴えかけていた。

 

 こやつのやっておったゲームは知ってますけど!

 壁越しにボイスチャットの声がしてたからね‼︎

 友達と遊ぶリア充め!!!!


「大丈夫。転生者はチート持ちだって相場が決まってる。それがセオリーだから」

「そんなのわかんないでしょ……」

「ラノベ読んでたオレに死角はない」


 なぜか自信満々にうなずく彼へ、白い目を向けた。


 何を言ってるんだこの弟は。

 もっと危機感とか無いのだろうか。

 ていうか、チートとか夢見すぎだ。


 だから「でも私たち、今何も能力ないじゃん」と言ってあげた。恨めしげな目を向けられた。解せぬ。「いやでも隠された能力が」とか「無能認定から別のチートとかあるし」とか、ひとしきりあーだこーだ言って、飽きたのか、急に真面目な様子で言われた。



「で? どういう世界なのここは」



 その問いはオタク心に火をつける着火剤だ。


 よくぞ聞いてくれましたっ!

 てかやっとだよ!

 やっと本題に入れるよ‼︎


 そこで私は語りだした——乙女ゲーム『王立学園プリンセス〜麗しの花園〜』と、その素晴らしさについて。


 だって転生してしまったなら、なんとかして楽しむしかないじゃない?

 しちゃったもんは仕方ないじゃない?

 ……たとえそれが悪役側だったとしても、弟と一緒でも。




 そう、人はこれをヤケと言います!!!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=289234961&s
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] ちょっとずつ気になる要素が出てきましたねぇ。 これからが楽しみです。
[良い点] 今回もイラストが素敵ですー! 特に表情がぴったりマッチしていてすごいっ! ついに乙女ゲームの世界、確定なんですね(´⊙ω⊙`) セスくん、異世界転生なら良かったのね笑 ラノベも読んでたとか…
2021/10/17 06:25 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ