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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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517話 狂信者

 ひとまず一件落着した。

 ……そう思えたらいいけど。

 私としては、それ以上に疑問がまだある。



「えっとあの……そこの人たち大丈夫ですか……?」



 そう例えばそこに積まれてる人たちとか!

 多分死んではないはずなんだけどな!

 骨とか折れてたり……しないよね?



 しかしこれには、思ったよりも勢いのある反応が返ってきた。



「‼︎ (あるじ)が我々を認知してくださっている⁉︎」

「主様! すみません我々が不甲斐ないばかりに犯人を取り逃がし……!」

「くそぉ! 予定では華麗に捕えて首を上げるつもりだったのに……! 主様申し訳ございません……!」



 うーんと……。

 人間団子がなんか喋っている。

 しかもなんか、主呼ばわりされてる……?



 ……えーと。あんまり考えたくない。考えたくはないけれど、私を主だと呼びそうなのって、うちの家のメイドや執事と、その他あるとしたら……。


「……なるほど。あなた達、シーナの諜報隠密部隊の人たちね……」

「なんと! さすが我らが主!」

「私たちの仕えるべきお方は賢くてあらせられます!」

「ご挨拶が遅れて申し訳ございませんが、我々は……」

「あーあー、ちょっと待って」


 何がどう駄目なのか分からないけれど、団子のまま話し出そうとするのを一旦止める。


 えーと、賢い人たち……のはず。

 なんだけどな?

 そのはずだったよね……?



「まず落ち着いて話が聞きたいから……そもそもここから出てからゆっくり聞きたいかも。クロ、その人たち起こすの手伝ってあげて?」



****



 牢屋の鍵は床に落ちていた。どう考えても意図的としか思えないけど、運が良かったということにして外に出た。ついでにピアスも拾った。


 しかしあれだけ踏まれても傷ひとつない。

 けっこー踏んづけられてたよ?

 うーんやっぱお金かかってるだけある……。


 ちなみに牢屋の入口は崩れかけていて、外に出たら埋まってしまった。……というか、外に出て気づいたんだけど、ここは。



「あそこって図書室の地下だったのか……」



 盲点といえば盲点。

 振り返っても、今はただ本棚があるのみ。

 あるっていうか、倒れた先が埋まってる?



 どうやらあそこまでの道は、カラクリ式になっていたらしい。



 この前の小屋への道みたいな感じかな。そういうカラクリが、実はお城のいたるところにあるのかもしれないなと思った。


 出た先の図書室は、コトリカスvsうちの子(クロ)(現在狼人間の変身は解除させた)の乱闘によりぐっちゃぐちゃに本が散乱していた。なんなら棚も倒れている。


 あぁ貴重な資料が……。

 これどうにかなるのかな。

 駄目になってないといいけど。


 直せない場合は私がなんとかするかな……と思いながら、となりでぽよぽよ跳ねてるクロを見る。うん、クロじゃ直せないよねぇ。


 ここは限られた人しか入れない、王室の図書室だからどれもそこそこいい年代のいい本ばかりだろうと思いつつ——気になった事がある。



 ……これ、あんまり気づきたくないな。



 あんまり気づきたくないけど、私の勘は告げている……あの闇使い用の牢屋は、王室御用達だったんじゃないかって。



 つまり飼い殺しにされてた?

 公的な牢屋じゃなかったってこと?

 うーん、便利な資料かペットみたいな感じ?



 図書のように隠すってそういうことじゃないかなぁとか、変な思考が駆け抜けていく……。



 この王国、実は結構闇が深いかもね!

 もう私は乙女ゲームに夢を抱けないぞ!

 夢見るぴゅあぴゅあ女子にも戻れない‼︎


「ていうかあの子はどこでこの情報強いれたんだか……」

「あの子……ですか?」


 黒いローブに仮面……のシーナの手下の青年? が尋ねてきた。


 あっやばい。

 独り言をつい声に出してしまった。

 どうしよっかな〜!


 しかし私ももう土壇場に取り繕うのは慣れている! そう、こういう時はね、偉そうで落ち着いてる——アルみたいなのが有効なのよ!


「あら、失礼。私をあのようなところに閉じ込めた人が、どうも子供のような口調をしていたものだから」

「なるほど! さすが主様!」

「やはりご慧眼‼︎」

「あのような場面でそこまで気づかれるなんて!」

「お、おほほほ……」


 やめて〜〜!???

 反応良すぎて罪悪感!!!!

 やりにくすぎるー!!!!



 ていうかなんでこの人たち、私のことになるとポンコツっぽいの⁉︎



 どう考えてもこの短時間であそこ見つけるの大変だったよね⁉︎ 戦い方もアーツっぽくて息が合っててスタイリッシュって感じだったのに!


 ……とは私も口には出さないけどね!


 こういう私が世間的に望まれてるわけじゃないのは、自覚ありますしね。一応預言師で殿下の婚約者としての振る舞いはわかってる。


 裏ノア君(あのこ)も私も嘘つきなのだ。

 だからずっと、何かを演じている。

 その皮を剥がないと、真実に辿り着けない。



 あのニセモノっぽい三日月笑いを剥がさないと……。



「……そういえば、もう祝賀パーティーは終わったのかしら」


 窓の外はまだ暗い。私が気を失いすぎてたのでなければ、まだ夜が明けていないことになる。そして、大騒ぎになってる様子もないから——。


「間も無く終わる頃かと存じます」

「……そう。よかったわ、滞りなく行われて」


 後ろから女の子? の声がして、それに返事をする。そういえば身長が少し小柄かな? フィーちゃんよりはあると思うけど。


 パーティーが止まらなかったということは、他の人たちは私のことを知らないだろう。アルたちも……そのまま会場にいるはずで。


 だからこそ彼らが来た。

 まぁ下手な部隊動かすより優秀だし。

 戦力もクロなら普通の人間に勝ち目ないし。


 そしてクロがいるということは、みんながこのことを知ってる証明でもある。知った上で、滞りなくパーティーは行われている……。



「……なるべく早く家に帰りたいわ。色々あって疲れているから」



 会場から離れたここではあまり音も聞こえなければ光もない。だからこそ人も来ないので、隠し場所には最適だったんだろうけど。


 けど、なんだろう。

 ここが静かなせいなのかな。

 望んでたのは確かに私。


 自分がいなくても変わらない世界を感じたからか。むしろいない方が迷惑にならないかもと思ってしまった事にも……ちょっとなんていうか。


 なんというか運命(ストーリー)も意識しちゃって。


 うーん……今の私、ダメモードだ!

 とても人に会いたくない。

 いや会えないか、()()だし。


「主、しかしその手枷が……」

「そうね……一旦家に戻ってから考えてはダメかしら?」


 そう、まだこれが残っている。

 この手錠、なんと鍵穴がなかった。

 魔石をどうにかするか物理破壊しかない。


 そして私とクロではまず外せない——対闇魔法専用だからね。本当は彼らに頼んだんだけど、金属だからそう簡単に壊せないらしい。


「うーん、ブランか、土魔法が得意な人になんとかしてもらうか……」

「なりません! 白魚の御手に傷がついてしまう恐れが……!」

「聖女様にお願いいたしましょう! 聖女様であれば魔石を壊す事ができましょう!」

「え〜? いやそんな大事では……」

「十分大事でございます‼︎」


 あ、うん。ダメだこれは。

 私1人なら幻惑で誤魔化しもできたけど。

 もう見ちゃってるもんな〜。


 逃げ道を塞がれた私は、仕方なく彼らに従う事にする。というか聞かないと収まらなさそう。ちょっと面倒だなと思いながら、図書室を後にした。

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