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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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512話 お姉ちゃんモードは最強です

「お前ってほんと厄介。無意識に読もうとするなよ読まれたくないなら。女神の干渉も面倒だし……オレは今すぐ痛い目みせることだってできるんだぞ」


 彼ときたら、ピンポイントクリティカルヒットにより苦しんでいた私より、憎々しげに言ってくれる。


 でもそう聞いてくる人に、すぐ手を出す人はそんなにいないのでのんきに聞く。


「そうなの? えっと、別に何かしようと思ったつもりはないんだけど……ごめんね?」

「ほんと煽るのだけは上手いな!」

「ていうか無意識にってなに?」

「はぁ……これだから無知な人間は」


 まるで自分はすべてわかってますけどっていう雰囲気で、首を横にやれやれと振っている裏ノア君。人じゃないみたいな言いぐさだなぁ。


 まぁ神様でもあるまいし。

 そんなことはないのだろうけど。

 女神様を怖がってはいるみたいだしね。


 それって少なくとも、彼は無敵でも万能でもないってこと。だから無知だというわりに、私をやっかい呼ばわりするんじゃないの?


 けれど同時に、私より何かを知っているんだなと思った——と同時ににらみつけられる。



「だから読むなっていってんだろ」

「え、今私何もしてないよ?」

「……魔力が漏れてる」

「へっ⁉」



 指さされてまわりを見るけど、全然わからない……!


 すると私の戸惑いに気をよくしたらしい彼は、嘲笑うかのように言う。


「コントロールできないんだ? ヘタクソだな」

「わー! ごめんね! もしかして女神様にも言われたやつ⁉ そう私無意識をしないっていうのができなくて……!」

「……ふーんなるほど。指摘されても直せないんだ。下等だね」


 一瞬私の声がうるさかったのか耳を押さえたけれど、すぐに調子を取り戻した。この子結構反応わかりやすいな……。



 けれど次の一言は予想していなかった。




「じゃあ自分が周りを操ってるかもしれないことにも気づいてないんだ」

「……へ?」




 今、なんて言った?

 理解が追いつかない。

 私が、なんだって?



 けれど仮面のように白い肌に浮かぶ赤い3つの三日月はとても楽しそうに語る。



「なんで予知だけだと思った? 闇魔法は予知だけじゃない。お前は思ったはずだ——『みんなと仲良くしたい、嫌われたくない』って」



 思った。思っていた。

 なんならそれだけが希望で。

 それの、何がいけないの。



 静寂を急に意識して、自分の鼓動だけが聞こえるよう。暑いようで寒気がする。冷や汗が流れる。ちがう、そんなことは……。



「はは、バカってわけじゃないんだ。面白いなぁ」

「……何が言いたいの」

「わからないフリ? 気づいたくせに。人間は嘘ばっかりつく、真実は変わらないのにさぁ」



 彼はとても楽しそうで。

 私だけが緊張している。

 まだ信じたくない。



「気づいた事実から目を背けたって、気づく前には戻らない——お前だって理解したんだよね? その勘は、無意識の予知だよ」



 そして満足げに近づいてきた裏ノアくんは、格子を掴んで顔を近づけ……ついに口にした。





「そうだよ、無意識の悪も罪だろう? 周りを巻き込んだお人形遊びは楽しかった?」

「——!」




 その言葉に反論をしようと顔を見て唇を開けて……何も出てこなかった。


「あはは! そんなに睨むなよ! 自分が始めたんじゃないの? ねぇ、だって不自然だと思わなかった?」

「……なにが」

「無知なフリを続けるんだ? いいね無様で。オレはこういうのを待ってたんだよ」


 格子を押しのけるようにガシャンと鳴らして離れた彼は、そのままくるくる回りだす。鼻歌を歌いながら。



「闇使いなんて欲だらけだ。それが無意識に漏れたなら? そんなの答えは簡単だろ——周りを操るに決まってる!」

「そんな、ことは……」

「ないって言い切れるの? できないよねぇ⁉︎ そもそもそんなに好かれる存在な訳ないだろ闇使いなんて! 忌み嫌われるのが普通でさぁ!」



 視線が下がる。

 鼻歌が耳につく。

 視界がぐにゃりと回るよう。


 乗りたくないメリーゴーランドにでも乗せられたように。


「お前ってそんなに好かれる人間か? 違うよね? ()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「……。」

「ははっ! しゃべり方も忘れちゃったの?」


 ケタケタと嗤う。

 そんなことないって言いたい。

 でも本当に、そんなことない?



 それをどうやって証明するの。

 断言できないなら、あり得てしまうのに。



「これ、みんなに伝えたらどうなるんだろうなー?」

「……悪趣味」

「あはっ! どっちが⁉︎ 黙って無意識にお人形にされてたら、その方がかわいそうだよねぇ⁉︎」


 ぐるぐる回る。

 手錠がもどかしい。

 これ自体が私を悪だと示すみたいだ。


 手に汗がにじんで、気持ち悪い。まるでさっきまでと世界が違うように、すごく居心地が悪い。



「教えないであげてもいいよ。オレのいう通りにするなら」



 顔を上げると、美しいシルバーの髪から覗くアレキサンドライトの赤い瞳が愉快そうにこちらを見ていた。


 それを見て、考えて。

 目を閉じて、深くため息をついて。

 目を開いた瞬間に、食いつくように言った。



「あのねぇ! だから最初から手伝うって言ってるの!!!!」

「は……」

「こんな回りくどいことしないといけないのは人を信じてないからでしょ⁉︎ よくないからやめなよ! お友達できなくなるって言ってるでしょ⁉︎」

「む……世話焼こうとするなよ!」

「仕方ないでしょ! 私は! 根っから! お姉ちゃんなの!!!!」



 お姉ちゃんモードで全てをはねのけた私は、正座に座り直して地面を叩く。



「ほら! ちゃんと聞いてあげるから座って‼︎ 長くてもちゃんと聞くから!」

「はぁ? なんでオレが……」

「あ、そっか石畳は冷たいもんね! 待ってね、今クッションだす……はい!」

「お前中にいるくせに変なもん出すなよ!」

「おもてなしって言って! ほらふかふかだよ! あ、お茶もいる?」

「中にいるやつがもてなさそうとするなよ‼︎」


 せっかく用意してあげたクッションに、彼は座らなかった。近くの木箱に座って、クッションを踏もうとして……途中でやめて足をどけてた。



 うん! やっぱ君はいい子だと思う!

 私はそこら辺見る目あるし‼︎

 でもさっきのはちょっと悪役っぽかったよ!



 そしてお茶はというと、「敵の出したもん飲むわけないだろ……」と言われてしまった。そっかぁ残念だけどそうかも。


 しかもノリで緑茶出しちゃったし。だからごめんねと言って消したら、ちょっともったいなさそうに見ていた。隠せてないよ……。

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