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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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504話 黒子の意識

いつも評価や感想ありがとうございます!

***


「というわけで、フィーちゃんのことよろしく頼むわよセツ!」

「そういうのってさ、もっと早く言うべきだよね」


 大変ごもっともなことを言われてしまうと、私としても心が痛い。グサッときましたわよ。


「なんかクリスティアさんって傾向と対策甘くないですかね。テストできないタイプでしょ」

「ぐぬぅ……二度と聞きたくない単語!」

「ほんとに今学生やってる? てかさぁもっと予知したらいいじゃん使えるんだから」

「……未来を確定させるって恐ろしいことだと思わない?」

「便利じゃん」


 よし! これは私の懸念伝わらないな!


 深堀するのをやめる同時に、弟が闇落ちすることもないだろうなと思って安心もする。悩むからこそ強化される強欲は、力だけれどたぶんない方が幸せだ。


「でもフィーちゃんのことに関してはもっというって約束するよ。今後、私だけじゃ無理なことあると思うから」

「マジでそうして。当日直前に言わないで。なんでもできると思うなよ」

「大丈夫! セツは天才だから!」

「才能にも限界ってあるんだよなぁ」


 怒られながら入場すると会場中の視線が、ギラッと輝き一斉にこちらに向いたのを感じた。……え、なに? こわいんですけど。


「……あ、そういや預言師サマだったなこの人」


 セツがしらっと、視線は前に向けたまま小声で冷静に言い放つ。


「⁉ まさか私目当ての視線とか言わないよね⁉」

「ついでに未来のお妃サマだもんな。ファイト~」

「ちょっと! 言っとくけどエスコート役のセツも巻き添えだからね!」


 明らかに私を置いていなくなろうとしている弟。釘をさすと、「じゃあ『フィーちゃん』はどうすんの?」と言われる。うっ!


「は、薄情者……! いいわ行きなさい! 私は1人で戦うから‼」

「あ、父さん」


 私の熱のはいった意気込み表明を無視したひどい弟くんは、私よりも最愛の両親に目を向けた。先に会場入りしていたけど迎えに来てくれたらしい。優しいなぁ。


「良い夜だ……と言いたいところだけれどこれは大変そうだね。我が娘は美しく聡明で優れているから人目を惹くようだ」


 ロマンチックに話しかけてきたイケメンなお父様は、少しだけ視線をあたりにやって目で語った。その隣には美しいお母さまが困ったように微笑んでいる。


 2人とも黄色いシンビジウムを身に着けていた。セスの目の色とおんなじだなーなんて思う。ま、関係ないのだけど。


「クーちゃん、セス、君たちはまだデビュー前の子どもだ。最初は私たちについて挨拶に回るのはどうかな?」

「うわめんど……」

「セス? あなたもいずれ公爵家を継ぐのであれば、父の姿から学ぶのも大事なのよ? 人付き合いは貴族の基本……あなたの顔も覚えてもらわないとね」


 お母様にたしなめられ、ぶつくさ言いながらも逆らう気はないらしい。


 こんなこと言っているけど、2人は私を心配しているから最初から声をかけてきたのだろう。なんか申し訳ないけど、正直ありがたい。


 そうやってしばらく話していたら、ラッパが高らかに鳴り響く——来た。



 頭上を見上げる。

 王族用の階段の上。

 今日のメインのお出ましだ。



 重い扉が開けられ、きらびやかに登場したのは王様とお后様。シルバーと白の装いが上品。


 そしてリリちゃんとヴィンス……正式に婚約したから一緒なんだけど、なんだかんだ公式の場で見るのは新鮮だなぁ。しかも装い

が全体的にピンクだ……あとでぜひ話しかけたい。


 そして最後に、本日の主役。


 ——白に薄緑の差し色がうつくしいボリュームのあるドレス姿のフィーちゃん。さわやかだけれど華やかで、はっと目を奪われる。お姫様みたい!


 その隣にいるのはもちろんアル。白いコートに薄緑に黒の差し色のベストが見える。胸元にはオレンジの色の百合。フィーちゃんの瞳の色だ。


 腕を組んだ2人がゆっくりと降りてくる様は、見るのが初めてなのに見た記憶しかない。


 それはゲーム画面そのもので。

 いくらでも思い描ける光景。

 それはもう、この後のことまで鮮明に。


「あぁアルバート殿下は今日も素敵ですわ」

「聖女様も可憐でお似合いね。ご覧になって? あの仲睦まじい様子」

「やはり黒髪が……」

「婚約者なのにどんなお気持ちでご覧になられている事か……」


 んー聞こえてる聞こえてる!

 貴族のみなさん噂話好きだねぇ!

 そういや私の扱いって本来こうだったな‼︎


 預言師様とかもてはやされて、だーいぶ忘れてたけど。闇魔法の恐れがなくなったわけじゃないもんね! というか、恩恵を感じにくい貴族の方が実は支持されてないかも。


 とはいえ三大公爵家のうち2つ——シンビジウムとライラックは私のバックにいるようなものなので、大々的には突いてこないってだけだ。


 ローザは中立というか。

 国王様を支持してるので。

 実質味方みたいなところあるけど。


 そう考えると、悪役令嬢だったクリスティアってほぼ1人勝ち状態から転落したのか。


 まぁそれほど聖女フィーちゃんは貴重で。

 悪役は不要だったってことだ。

 そしてなによりアルの信用度ね!



 うーん預言師、なっといてよかった~~!



 なにがあっても生存確率も没落確率も格段に変わりますからねっ! やっぱ死にかけても行動するのって正解しかないな……これからも頑張らねば……。


 でも今の状態で何か疑われたりしたら。

 丸ごとひっくり返ってバッドエンドとか。

 ……ないよね? いやさせないけどさ。


「……外野の声は気にしなくていいよ。君は間違いなく、殿下の婚約者フィアンセなのだからね」


 優しいお父様がそっと囁いた。考え事でぜんぜん聞いてなかったけど、気にされるほどまだなんか言われてたんだろうか? それは申し訳ない。


「大丈夫です! 私強いので!」


 小声で笑って返すと、少しだけ微笑んでくれる。うーむ、やっぱりお父様はイケメンだわ! メロメロ‼


 実際私このお城ワンパンで壊せるからね!

 物理的に悪口言う人倒せますから!

 なんなら洗脳して信者にもできるし!


 でもしないよ。この程度のひそひそ話は、慣れたものだしね。それに全部否定できるほど、私も周りが見えないわけではない。


 ほんとにくっつかないのかな。

 こんなにお似合いなのに……。

 ……でもセツもいるもんねぇ。


 2人はありえないと言うし、うちの弟の想いも尊重したいし。この光景をみたい人の夢は多分叶わないだろうと思って、今日だけの夢の光景を見つめる。



 ファーストダンスはその日の主役が躍る。



 向かい合ってお辞儀して、お互いに手を取る。そしてダンスのための華やかな音楽が流れ始める。2人のためだけに捧げられる曲、空間。


 でもどっちにせよ慣れておかなくちゃ。

 アルは私のものではないから。

 ちゃんと逃がしてあげないとだし。


 間違えてはいけない、高望みはいけない、勘違いしてはいけない、引き際もわきまえないといけない。




 その人の幸せを願うなら——私は引き立て役でいなくては。




 乙女ゲームをいくらやっても。

 あこがれて目標にしても。

 そう簡単に変わらない。


 変わらなかったし、変われなかった。


 もう経験してわかってるのだ。だから自分の強欲で支配しないようにしないとね。私にはそれができてしまうのだから——本物を求めるのは我慢しないといけないってわかってる。


 いつもそうやってやってきた。

 今回も何も変わらない。

 道を間違えることは許されない。



 今あるのは、私の運命だけじゃないから。



 素敵なダンスを披露してくれた2人に拍手を送りながら、気を引き締めた。

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*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
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