ー閑話ー 素朴なチートデイ1
閑話は読まなくてもいいですが、読んだ方が楽しいかもしれないものです。今回は日常の姉弟回です。
「さぁこの日が来たわよ弟よ!」
「待ってましたわーわー」
テンションのやたら高い姉の掛け声に、テキトーな棒読みと拍手を受け取った。こんなんでもこのノリに乗ってくるだけ、実はセツのテンションも高いんだよなぁと思う。
まぁそれもそのはずで。
今日は不定期開催の!
なんでも食べれる日なのだ!!!!
つまり、私がお望み食べ物を魔法で出してあげるよって日です。
和洋中なんでもござれ。これでもかとばかりに闇魔法を使いまくり、思い出の味もインスタント食品もなんでも——この世界で手に入らないものを食べちゃおう! という日なのです!
この世界の食事がまずいとか。
そういう話ではなく。
そもそも存在しないものが多いの!
材料や調味料もそうなんだけど、やっすいけどあれが好きだったとか、あのメーカーのお菓子が食べたいとか。もう食べれないと思うと、食べたくなるものって無性にあったりするんだよね。
そういうのを闇魔法なら出せちゃうのだ!
いつかは作れそうなものはあるけど、絶対自分じゃ再現できないものも食べることができるのは闇魔法の強みです。面倒なことが多いけど、唯一いいことかもしれないと思ってる!
「いやぁ今回も今日のために出かけるって嘘つきまくったよ」
「あらお客様~いつも根回しいただきありがとうございます~」
「まぁここ、オレが来なきゃつぶれちゃいそうだからな~感謝してよシェフ。お代はいらないよ」
「まぁお客様からお代いただいたことないんですけどねー?」
へんてこな茶番をくり広げつつ、弟のはしゃぎ具合にほっこりもする。
学園が夏休みの今日、公爵邸に帰っている私たちは出かけていることになっている。もちろん実際は出かけてなくて、公爵邸の空き部屋で1日パーティーするのが恒例なのだ。
まぁほんとは、私がかるーく屋敷のみんなに幻惑をかけて、近寄ってこないようにとかもいろいろやってるんだけどね! このくらいで弟の鼻をへし折るとかはしない、お姉ちゃんですので。
「お昼何食べたい?」
「とりあえず、からあげちゃんくれ」
「それコンビニのホットスナックじゃん……」
もっといいもの頼めばいいのに……と思いながら。銀の光の中から、からあげちゃんを出した。ジューシー肉と油、そしてスパイスの香りが漂うと「お、これこれ~」といいながら受け取る。
「いっこ食う?」
「いいよ。セツのために出したのだから、食べな」
「いぇーい。マジで久々だなー便利なお姉サマがいるとお得っすねぇ」
「うるさいよ」
姉のことを自販機か何かだと思ってる弟は、そのままからあげを食べて小さく「うまっ」と言った。
でもセツも偉いなと思う。
これで味を占めるとかないから。
普段は私にたかりに来ない。
たまに密売取引みたいに「次の時、あれ用意してほしいんだけど」みたいに囁いて去っていくときはあるけど。ちなみに前回おねだりされたのは、麩菓子だった。なぜか急に食べたくなったらしい。
「これさぁ部活の帰りに腹減りすぎたときにたまに買っててさ。で、見回りの先生に見つかって超怒られたんだよね」
「あんた何やってんの……」
「それで中学全体コンビニ禁止になった」
「ほんと何やってんの?」
「いやだってめっちゃ腹減るんだよ部活帰り。友達とめっちゃダッシュしたけど特定された。見つけたのが顧問だったからさぁ」
なんでもないことのように言う雑談で今更発覚した弟の校則違反だけど、あきれつつも怒れないのは、あぁそういう日々を奪っちゃったのかもと思うからなのか。
もしかしたら高いものとかをねだってこないのは、そもそもそんなものを知らない子供だったからかもしれない。
そう思うと、少し胸が痛んだ。
本日17時ごろに続き投稿予定です。




