表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
511/534

485話 困った子犬

「……でもよく考えたのですが」

「えっアルもまだ検討中だったのっ⁉」

「やっぱりもったいないと思うんです」

「ムシ⁉ 私の発言を無視した上で人権も無視⁉」


 思わず振りかえれば、私の肩越しに憂いと寂しさを漂わせる美しいお顔と対面した。う、麗し……いやダマされるなっ! こんなにキラキラしてるけど、話してる内容首ちょんぱの話だよ⁉


「首を切り離してしまったら、こんなに愛らしくきゃんきゃん子犬のように吠えてくれることもなくなってしまいますし……」

「おっと雲行きがあやしい、逃げよう」

「こんなにか弱い力で抵抗しようとするところも見られなくなってしまいますし……」

「ふんぬぬぬぬぬ! ぬけられない! なんで! こんな! 憂い顔しながら力あるのぉぉぉ‼」

「逃げても無駄なんですから、逃げなければいいのに……」

「逃げるよ! 命の危機を感じるもんんんん!!!!」


 さてはこやつ楽しんでおるなっ⁉

 こんな方向でドSを披露しないでいただいても⁉

 真剣に困ってる人で遊ばないでくださいます⁉


 それでもまだ頑張ってたら、くすくす笑う声がして腰ごと引きよせられた。いきなりでたたらを踏んでよろけたら、そのままごんとアルの胸に頭がぶつかった。


「わっごめんぶつかっちゃった‼ 大丈夫⁉」

「……最初に心配するのはそこなんですか?」

「え、だって頭ぶつかったら痛いでしょ?」


 あわてて見上げてると、まるで小さな子供が新しいものを見たように丸い目をして不思議そうにしていた。痛さを自覚していないとか? でもさすろうにも場所が場所だし……捕まっているこの状態では何もできない。チラチラ見てみるけど、服の上だしよくわからない。た、多分大丈夫そう……?


 そんなことをやっていたら、また頭の上からくすくすと笑う声がした。


「……何がそんなに面白いの。もー。こっちは心配してたのに……」

「あぁいえ、それは大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「じゃあなんで笑ってるんでしょうか」

「怒らないでくださいよ……君はそんなだから、捕まってしまうんですよ?」


 どういう意味でしょうか。遺憾の意!


 口をへの字に曲げて抗議していたら、捕まったままの手首をさすられた。ん? と思ってみたら、抵抗しまくったせいで赤くなってしまっていたらしい。あら、気づかなかったな。


「やりすぎましたね……」

「そうです! 反省してください!」

「もっと早く腕の中に収めてしまうべきでした」

「私の期待してた回答とちがう……!」


 そんなこと言ってる間に手首が冷たくなってきたから、どうも気にして冷やしてくれてるらしい。気持ちいいけど、そこまでしなくても大丈夫だけどなぁ。


「……痛くないから大丈夫だよ?」

「そういうわけには……ティアは自分の痛みに鈍感すぎではありませんか?」

「あは、それさっき私もアルに思ったからお互い様だね」


 近くにいると、考えが似てくるのかな?

 そうだったらうれしいのになぁ。

 ……いや、アルに限ってそれはないか。


 影響を受けているのはきっと私の方なんだろう。アルは気が回るから、そこまで背伸びしなくていい気がして……いろいろと錯覚してしまいそうになる。こういうのが、よくないんだろうけど。


 だけど心配してくれているのは本当だから、なんだか面白くて笑ってしまう。


「……はぁ。嬉しいですが、君は自分のことを後回しにするところを直すべきだと思います」

「えー? そんなことないけど。アルもじゃない?」

「ありますよ。それと、私はもっと自分の欲に忠実です。君よりもね」


 そんなことないと思うけど……。

 アルはいつだって王になる者の意識がある。

 自分勝手にやってる私とは違うと思う。


 私は……結局、私の小さな居心地のいい世界を守りたいだけ。それだけが大切で、私が頑張れる範囲でしか頑張らない。だけど私の限界はたかが知れてるから、それすらうまくいかないときもあってもどかしい。


 もっと……もっと、ねぇ。

 これも強欲のひとつか。

 自分に高望みしすぎているのか。


 さっさとあきらめてしまえたら楽なのにな。



「……お兄様ばっかりずるいですのよ」



 ぬっと、目の前に壊れていたリリちゃんが正気になって迫ってきた。よかった戻って!


わたくしもお姉様にぎゅーってしたいですの! 」

「おや。首だけ飼うつもりだったなら身体はいらないのでは?」

「む⁉ 意地悪を言いましたわね⁉ 元はといえばお姉様がいけなかったのに!」

「私がいけないのか~……そうかな?」

「そうですのよ! そもそも、高貴なものが下賤のものに手を触れてはなりませんの!」


 そういいながら前からも抱きつかれたので、これじゃあおしくらまんじゅうというか団子というか……でも言い方はよくないけど、要は自分の身分を考えないとっていう忠告だったのねこれは。


「ふたりとも……勘違いしてるよ?」

「「?」」


 ふふっと笑って言った。



「私がなでてたの、子犬とか子猫だもん」



 もちろんたくさんの子の頭をなでてはきた。けど、それはどっちかというと前世の話――つまりクリスティア目線で言うと、この言葉に嘘はない‼


 というわけで豪華王族サンドイッチを食らいながらも、私には余裕があるのだ!


 美しい兄妹は、まるで合図するかのようにお互いの目を見た後に私の方を見て固まった。よかったー、首の皮は繋がったようね!

遅くなりましたすみません!

次回投稿は明日か明後日あたりになると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=289234961&s
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ