表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
471/533

448話 犬らしくしっぽを振って

 まずい。非常に、まずい。


 いや何がまずいかってーー。



「あぁティア、見てください。あれが美味しそうではないですか?」



 コレよコレ!!!!


 その爽やかな笑顔と!

 完璧な出立ちと!!

 素晴らしいエスコート今やめてよ!!!!


 なんなの⁉︎ 何でそんなにキラキラしちゃってるの⁉︎ 眩しい太陽のせいなの⁉︎ それとも恋は盲目☆キラキラエフェクトのせいなのっ⁉︎

 


 ……どう考えても後者だよど畜生ーっ‼︎



「え、なんですかその顔は? そのジュース、そんなに不味かったんですか?」

「……たしかに、私には甘すぎたかもしれないわ……」

「ストローを噛むと吸えなくなりますよ……」


 ケバブ買ってからも、私たちは変わらず買い出し中だ。いろんな視線を集めつつ、それも気にならないくらいになってる。買い物に夢中というわけではなく。



 何故なら……このキラキラプリンス様の視界独占率が高いからかなぁ……。



 エスコートすると決めた彼は輝いている。

 およそ似つかわしくない屋台街でも。

 臆さないからか、何故か格好悪くならない。何故だ。


 心配しているその顔もすき。はい、もう好きですよ、ええ! 180度回ってむしろ、憎たらしいくらいですわよ、ええ‼︎


 わかってる。令嬢にあるまじき顔をしてると。


 コップを持ちながら、ストローを噛み潰しそうな顔をお見舞いしている。自覚はあるけど!


 まったくもう、彼は完璧なのだ。

 いっそ忌々しいほどに。

 この際、嫌なとこみせて幻滅させて欲しい。



 お願いだから、ドキドキさせるのやめて欲しいって言ってるんですよーーーー!!!!



 いや言ってないけどね⁉︎

 私の理不尽な胸の内ですけどね⁉︎

 でもあっちのときめかせ具合も理不尽っ‼︎


「おや、君は甘いものが好きではありませんでしたか?」

「まぁ……あれじゃないかな? もうちょっと冷えてたら……」

「あぁ、失礼」

「えっ」


 お茶を濁すための適当な言葉だったのに。

 だから気まずくて、視線も逸らしたのに。


 アルはそう言うなり、私の手に握られたコップに指を這わせた。……もしかして、冷やしてます……?


 頭が触れるほどの詰まった距離に、ドギマギする。


 はー、バカ! 私の馬鹿‼︎

 他意はないんだってば!

 これは親切! 親切なんだから‼︎


 あと私がこんなに暑くなってるのは、夏の太陽のせいです! そうなんです‼︎



「はい、これでどうでしょう?」



 いつの間にか少し遠のいた陰に、ほっとしつつさび……いや違うっ! 


 飲み物と買い物で荷物があるから!

 貴族的エスコート(物理)はなくて安心なの‼︎

 違うったら違うんだからもー‼︎


 いっそガブ飲みしたいのに、ストローではちまちまとしか吸えない。けれど口の中に広がる甘酸っぱさは、さっきより心地よくなった。


「……ん、おいしい。とってもトロピカル……」


 そして私の頭もトロピカル。

 南国気分でサンバモードよ。

 なににフィーバーしてるんだろうね!


 おいしいって言いながら、正直あんまり味わかってない気がする。ただ、喉を通る冷たさは気持ちいい。だからごくごく飲んじゃう。


「ふふ、やはり買って正解でしたね。君が熱中症になったら大変ですから。ぼーっとしてるから心配しましたよ?」


 無心になってちゅーちゅーしてる私が面白いのか、なにやらニコニコと見つめられている。やめて、その優しい眼差し。居た堪れない。


 あぁでも、ちょっと冷静になったかも。

 そうよね、私はうっかりデート気分だけど。

 多分アルは違うんだろうな。


 きっと犬のお散歩か、良いとこ妹……いやおこがましいな。でもなんか、からかわれつつお世話されてる感あるんだよねー。


 だからそんな、優しい目してるんでしょ?

 なんとなく、友達とは違うような。

 そんな感じのように思える。


 なんとなく、違う熱を感じる気がする。……まぁ、仮にも婚約者だもんねぇ。


「……アルってば、いいお母さんになれるわ」

「えっ父親ではなく?」


 何故かショックを受けたらしいので、フォローしておく。


「ふふっだって、そんなに心配してくれるから。私の中ではそういうの、どっちかっていうとお母さんっぽいなって」

「……君の中の母親のイメージは、そうなんですか?」


 手で少し口元を覆って、吹き出すように言ってしまつまたけれど。アルの不思議そうな顔を見て、あ、マズかったかなと思った。



 ……この世界の、貴族の、王族の母親はこんなに世話を焼かない。



 それは乳母やメイドのやる事だから。

 しかも、(クリスティア)が言うのは尚更。

 だってーー死別してるんだし。



 ここで初めて、私が思い浮かべてたのは前世だなと思い至った。



 チラッと見上げると、真っ直ぐ逸されることのない瞳と目があった。……うーん。これは。とりあえず、にへーと笑って誤魔化すけど。


「……えーと」

「ティア。君はたまにおかしな事を言いますよね? そしてそれを当然のように行います。いつかのリリーに会った時もそうですが」

「え、取り上げるとこそこなの?」

「自覚があるようで何よりですよ?」

「……。」


 あ、ダメです。

 言質取られました。

 そう言えばこの人、腹黒なんだった……!


 こーんな笑顔で! こっちの逃げ場を潰してくる人でした‼︎


 見てこの極悪非道な顔! ……に見えないいい笑顔だこと! くそう! イケメンめ‼︎ 私ならすぐ悪役名物悪い笑顔発動するのに‼︎


「……さっき、『今はいい』とか言ってなかった?」

「君の弟にダメだとご指摘を頂きましたよ。……全部今話せとは言いませんけど」


 おう……何ということよ弟よ。

 姉を売り払うとは。

 味方だと信じてたのに。


 いやまぁ、あの子は私の言う事聞くようで聞かないからなぁ……。まぁ別に、私も全部聞かせたいわけじゃないから。


 だからこそ私たちは、今まで仲良くやってこられたんだから。


「……はぁ。とりあえず、どこかに座らない?」


 私は諦めた。

 全部を隠すことを。

 だってもう、それは無理だから。


 だからまず犬らしく、ご主人様のご機嫌を取ることにした。

更新止まってしまいすみません!

とりあえず復活したので、ちゃんと更新しますがしばらく週一になるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=289234961&s
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ