43話 主人公補正
「あ、ごめんなさい! 知り合いと間違えたみたいで……」
あー! やってしまった!
こっちが一方的に知ってるだけだからね!
フィーちゃん知らないから!
「そうでしたか。大丈夫です」
にっこり微笑むフィーちゃんは、そりゃあもう可愛い。
あーあの髪とかふわふわで柔らかそうだなぁ。
撫でちゃダメですかね。ダメか。
私は自慢じゃないけど、割と面食いである。
男女問わず面食いである。
美しいもの、可愛いものに目がない。
自分の事は棚に上げます。
そう、『学プリ』も顔面からーーそれもフィーちゃんから入った。
乙女ゲームってやったことない人は、分からないかもしれないんだけど。まぁイケメンと主人公ちゃんが、イチャコラするわけじゃないですか。
少女漫画みたいな展開が、もしこの人となら、みたいなI Fの世界として。何パターンもできるって感じかな。
だからね。
なんだかんだ1番目にするのって。
攻略対象じゃなくて主人公なわけね。
乙女ゲームなんて沢山あるわけで、攻略対象がかっこいいのなんて前提条件だ。そこに付加価値を付けられるのが、私的には主人公だと思っている。
顔よし、性格よしだと!
超応援したくなるからね!
いや何様だよって感じだけど!
まぁ、私みたいに俯瞰的じゃなくても。主人公は可愛い方がいいんじゃないかな?
しかもフィーちゃんは名前も変えられる設定だったので、正に自分の分身になるわけだよね。そいう人にも需要高いよ。
私は変えないタイプけどさ。
入り込む人もいるわけでさ。
どっちにしてもまずは顔ですよ。
実際乙女ゲームなのに、主人公の人気もすごかったんだから!
人間は視覚情報に、五感の8割を割いているので!
面食いは仕方ないんだよ!
見た目いいに越したことないんだよ!
そう、正当化だよっ‼︎
乙女ゲームなんて、自分の欲望をぶつけるゲームよ。ていうかイケメン売りにしてる時点で、そういうことだよ。顔で金を得ているのだよ! (語弊)
私は悪くない‼︎ むしろ正しい‼︎
とまぁ、そんなことは置いといて。
問題はこのちっちゃいフィーちゃんだよ。
「それにしても……よく気付きましたね、私が困ってるって」
お気付きだろうか……今の私の姿は。
両手でケバブ!
両腕にたくさんの袋!
中には食べ物いっぱい! 食い意地‼︎
なわけですよ……めっちゃケバブ食べてるんですよ……。どう見ても祭りを楽しむ人間なわけで。
たぶんね、十中八九は迷子だって思わないんじゃないかな。私も冷静だし……。慣れって悲しいね。
だからこそ、変だと思う。
なんで、話してもないのに気付いたんだろ?
「その、色が……」
「色?」
「心が、不安げな色をしていたので……」
ココロガフアンゲナイロ。……不安?
「へぇ……魔力のせいで分かるんですか?」
「おそらく、そうなんだと思います」
光の魔力属性の特性は治癒と浄化、なはずだけど。
でも私の闇もそれだけじゃなかったしなぁ。それなら光も、それだけでは終わらないってことかな。
主人公補正チートかぁ。
うわぁあり得そう。
無意識に使ってるのかな。
あとで王子に聞こうと思いつつ、話を続ける。
「お連れの方はどなたかいらっしゃるのですか?」
「えっと……私、今日は教会の出す屋台のお手伝いできているので。今は少し休憩だったんです」
……ああああ! そうだった!
この歳じゃまだフィーちゃんは孤児院だね!
孤児院の運営、協会がしてるもんね!
ていうかこれも引き取り手探しの一環だったり……。
え、ほんとに多分そーじゃん! この後どこかで、ラナンキュラスに引き取られるわけじゃん!
でもね、ゲームやってれば分かるんだけど。
引き取られても、まともな扱いをされないのだ!
具体的にいうとシンデレラみたいな感じね!
……えっあそこ送りになるの見守るの?
知っていながら? 嘘でしょ?