表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
397/565

384話 思ったよりも

遅刻しましたけど950ブクマ記念感謝祭刊行しますよ!!!!

あと2回更新するまでは寝れない!!!!

「それにしてもアルは、私のこと信じすぎだと思うけどね……。後で裏切られても知らないんだから」


 つーんとした顔を作りくるっと方向転換し、奥に進んで行く。


 割と本気で言ったのに、クスッと笑った声が聞こえた。そして、足音も後ろからついてくる。


「そんな事するつもりなんですか?」

「わからないでしょう、未来のことなんて」

「でもしないでしょう?」


 その答えは、すぐに口からは出てこなかった。


 実際、どうなんだろうか。

 今までのあれやこれだって。

 見方によっては、裏切り行為なのだから。


 私は結構、自分で自覚があるくらいには嘘つきだ。そうやって今までも、アルからしたら振り回されてきたことだろう。



 そういう意味では、これからもきっと……。



 そのまま答えることなく、視線を彷徨わせる。いい答えは見つかるはずもない。


 別に、嘘つきたいわけじゃないのよ。

 つかなくていいなら、つきたくない。

 でもきっとこの先も。


 私は嘘をつくだろう。


 確信にも似た想いは、口から出るどころか口に戸を立てるだけだった。


 そのままぼんやり店内を見ていれば、子供連れや女性のお客さんが目についた。しかし人形を売ってる割に身なりはバラバラだ。


 一般的にテディベアって高いのよねぇ。


 考えることなんて、なんでも良かった。

 答えを先延ばしにできるなら。

 だからそのまま、思考と歩を進める。


 機械なんてほぼない世界なので、人形の大半は手縫いなのだ。そして子供のおもちゃとは、なくてもなんとかなるものである。


 つまり裕福な層が買う事が多いんだけど……ここは、そうでもない?



 その疑問は、奥に進んだことで解かれた。



「これは……パッチワークね」


 外からは見えないところに並ぶのは、パッチワーク……つぎはぎでできたテディベアたちだ。こうなれば、材料費は削減できそう。


 しかし驚いたのはそれだけではなく……。


「洋服や小物まである! あとミニサイズもあるし……なるほど。小さければコストは削減されるから、値段も安くなるのね」


 それは子供が持つにしても、小さいテディベアの数々。手のひらにも乗りそうなサイズだ。


 通常バージョンとつぎはぎバージョンと。

 そしてそれぞれに、小さなマントも別売り。

 まるでお洋服屋さんみたいだ。


 それはまるで、テーマパークのお土産売り場のような光景だった。


「いい考えですね。作りは変わらないですし。このサイズ感なら、値段もそこまでではありませんから庶民も手が出しやすい」


 アルも後ろから覗いて、感心している。


 貴族というのは大きいのをよしとするところがあるので、こういう小さいのは好まれない。大きいほうが手間がかかって高いから。


 だけどこのサイズ感は。

 リーズナブルかつ可愛い。

 絶対そう思う。


 そう、子供じゃなくても欲しくなるほどに。


「その上この小物の数々……ここでしか見たことがないから、貴族も来るかもしれないよね。私初めて知ったけど」

「まぁ、お茶会に出てませんしね。それに貴族も大っぴらに来られはしないでしょうから、表立って話には出ないのでは?」


 いい店に行くのがステイタス。

 それはここの貴族だって一緒だ。


 だからこういう、大衆向けっぽいところを憚る者が多い。平民も来られたら窮屈だしね。くるとしたら、私たちみたいじゃないと。


 つまりお忍びになるので、そりゃあ相当仲良くないと話せないお店だ。


「でもすごいアイディアだよね……! このバリエーションは忍んででも来たくなるでしょ!」


 すごく広いお店ではないが。

 サイズが小さければ別だ。

 その分、品数だって増やせる。


 おまけに着せ替えも楽しめると来たらそりゃあ……リピーターもいるでしょ多分!


 思わずテンションが上がってしまう程!

 私の乙女心も疼く!

 そう、可愛いは正義なのよ〜‼︎


「はっ! このサイズ感ならクロにも着せられるのでは……⁉︎」

「……あれは人形じゃないでしょう」

「いいでしょ! マントなら巻けるもん!」


 いいこと思いついたのに、アルは渋い顔だ。


 もしかして、まだ魔獣だってこと気にしてるんだろうか? 今更だよねぇそんなの。


「いいでしょー⁉︎ ほらこれとか! 可愛い‼︎」


 手に取ったのは、セーラー風マントだ。

 もともと水平さんの格好なんだよ!

 クロの性別わかんないけどいけるでしょ!


 それをアルに主張するように突き出せば、何故か苦笑される。


「今日は私といるのだから、クロのことを考えなくてもいいと思うんですけど」

「え、いつもアルと一緒にいるじゃないの」

「クロもいますけどね」


 え、クロは……いやまぁ、確かにブレスレットだけど。近くにいる、扱いなのかな……?


 そうちょっと切なそうにされると、困るんだけど。


 まるでヤキモチみたいなその反応は、ちょっと考えてしまうけど。でも、アルがクロのこと魔獣扱いしてないことはわかった。


「でもさぁ、近くにいないとその人の事考えちゃったりするでしょ?」

「……私も遠くにいれば意識してもらえるんですかね……。いや、私が堪えられないですし、してもらえない気がしますが」

「いやぁアルは……」


 どこか遠い目をする彼に、言いかけて。

 口をつぐむ。



 今、私はなんて言おうとした?



 近くでも考えてるよと。

 むしろ、いつでも考えてるよと。

 ……そんな言葉が、溢れそうになったけど。



 いやそれはまずいでしょ。



 念のために、口を手で押さえつつ考える。いや、流石にその状態は普通じゃないよ。うん。私でもわかる程度には普通じゃないよね?


 しかしそれをどう思ったのか、アルはため息をついた。



「もうちょっと、考えてくれてもいいと思いませんか?」



 いや、もう十分すぎるくらいですけど?


 しかしその言葉は、押さえた口からでは出しようがなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ