表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
382/565

369話 隠せるものと隠せないもの (挿絵)

「思ったより時間がかかりましたが、何かありましたか?」


 そう言う声は、いつもの知っている声。

 だけど。



「……知らないイケメンがいる……!」

「はい?」



 目に飛び込んできたのは。


 暗い藍色の髪は、それでも透明感があり。

 瞬きする瞳は黄色を強調する漆黒のまつ毛。

 身に纏う銀と紺地はただならぬ空気を醸す。




 明らかにイケメンだけど知らない人だった。




挿絵(By みてみん)


「お兄様素敵ですの! 騎士の制服も流石の着こなしですのよ‼︎」


 リリちゃんも大絶賛の。

 完璧な変装姿がそこにあった。

 ただし下っ端には、全然見えないけど!


「えっすごいまつ毛まで色が違うっ!」

「そこですか……?」

「まつ毛と眉はマスカラでどうにでもなりますので。けれど違和感が出なくなると言う意味では、髪色が紺でよかったです」

「なるほどー⁉︎」


 さっき用意したかな⁉︎ と思ったけど、そのくらいはシーナ持ってるだろうなぁ。一応、私の化粧品一式も持ってきたはずだし。


 そう説明を受けつつ、覗き込むようにまじまじと困惑顔のイケメンを眺める。わーすごいまつ毛が長いー! 髪上げてるの新鮮‼︎


 しかしそんな楽しみは、(しか)められた顔と共に妨害される。


「私の見た目はいいですから。それより、君はどうする気ですか?」

「えっ私?」

「私が見つかるより、ティアが見つかる確率の方が高そうですけれど」


 いつもより険しく感じる顔でそう言われれば、まぁ確かにとは思うけど。


「そこは闇魔法でどうにでもするから大丈夫‼︎」

「……私には変装させておいて?」

「それとこれは別だから‼︎」


 納得いかない顔をされても、腕を組んで主張する。さすがに自分へ魔法かけるくらいは、お茶の子さいさいですよ!


 それに私!

 別にすごい人オーラとかないんで!

 変装してもオーラ出ちゃう人と違うの!


 ぎりぎりと奥歯を噛みながら、どう頑張ってもイケメンにしかならい顔を睨んだ。まぁその気品やイケメンぷりは顔だけじゃないけど。


 私は品や人柄がオーラを作ると思うんだけど。その大半は見た目と所作なのよ。あとは滲み出る自信感とか、顔つきとか。


 アルにそれを崩す事ができるかって。

 ……絶対できない!

 だから無理! 隠せないのよ‼︎


「漏れ出すオーラがなければバレないんですよ……!」

「はぁ……?」

「アルはもっとオーラを隠す努力をして……いや、ごめん想像できないわ」


 目をつぶって考えて。考えられずに片手で頭を押さえてそのまま振った。ムリ。少なくとも私には想像できない。


「褒めてるのか貶してるのか、どちらなんでしょう?」

「わかりにくいですが、お嬢様はこれ以上ないほど褒めていらっしゃいます」

「……なるほど」

「お姉様はよくわかっていらっしゃいますの! お兄様はなんでも着こなせますけれど、生まれ持ったオーラだけは隠せませんもの!」


 なんだかんだで付き合いが長いシーナは、いつも失礼だけど。職業柄も人生経験もあって、意思を汲むのには長けている。


 あとその変わらない表情で言われると、謎の説得力があるよね。そしてリリちゃんからも笑顔で強く押されれば、頷くほかないだろう。



 てなわけで、丸め込みも成功したので。



「わかったらちゃっちゃと行って、ちゃっちゃと帰ってこよう‼︎」

「うわっ急になんですか⁉︎」

「いやどこか掴んでないと、失敗しそうで怖いから」

「いつもは自分からなんてあまりしないのに……」


 アルの腕に手を回して、もう片方の手でビシッとポージングしたらびっくりされた。その上なんか不満そうである。仕方ないのにー。


 だってなんだかんだもうお昼になるから!

 急がなきゃだからね‼︎

 私1人で行かせてくれないからですよ!


 よって文句は聞かず、掴んだそのまま引っ張って歩く。


「あ、そうだよこの部屋鏡ない! 窓もちっちゃいのか‼︎ いいや、鏡オープン‼︎」


 手を翳してピカーッとさせたら、はい一丁鏡の出来上がり!


 無駄に豪華な装飾付きの、アンティークっぽい巨大全身鏡を作り出した。2人並んで立ったって、全然余裕のある代物だ。


 それを目の前で目にしたアルの視線が刺さる。急いでる中でもお城に合うようにしたのになぁ?


「君って人は本当に……」

「えーっと、後でこれはリリちゃんにあげるね!」

「ありがとうございますお姉様! 私はこの部屋を誰も入れないように、護りながらお待ちしておりますの‼︎」

「うんよろしく! 行ってきます‼︎」


 全く。リリちゃんの方が全然聞き分けいいよ?


 笑顔で大きく手を振るリリちゃんと、静かにお辞儀をするシーナに手を振りつつ。鏡に向かって、歩を進めていく。


「アル! 入るまではしっかり私に掴まって、手を離さないでよね!」

「掴むも何も、がっしり掴まっているのはティアの方なのですが」

「まぁそうとも言う!」

 

 今私がアルと腕を組んでる状態だからね!

 しかも強制的にね‼︎


 それが不満なのかなんなのか、もう疲れているのか。苦笑気味に言われてしまったけど、とりあえずドヤ顔で頷きは返しておいた!


 でもこれも、鏡面世界に入るため。

 闇の魔力を纏わないと入れないから。

 接していた方が確実性が高いからだ。


 セツとの時は手を繋いだけど……なんか、それはハードル高いから!


「大丈夫、中に入ったら離してあげるから! 今は我慢しててね‼︎」

「……そうではないんですが」


 何か言いかけている気もしたけど、時間もないので。その勢いのまま、アルを引っ張って。



 鏡面世界へ、私たちは足を踏み入れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ