表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
378/565

365話 奇想天外な発想

「アル! アルが今GOと言えばこの話終わるから! 全て万事解決するから!」

「その感じで行かせる人はいないと思いますが……はぁ、分かりました。どうせNOと言っても行くんでしょう?」


 鋭い指摘にギクッとして、喜びかけた笑顔が歪む。さ、さすがアルわかってるわね……!


「何年の付き合いだと思ってるんですかね……。人の事になると、思い付いたらいうことなんて聞きやしないじゃないですか」


 一瞬ギロッと睨んだ後。ため息を吐きながら、前髪をぐしゃっとして言う姿は哀愁すらあった。


「まぁそこが私にはない良いところですし、好ましく思うのも確かなんですけど……」

「えっあ、ありがとう?」

「……。ただ控えて欲しいのも、確かなんですよね……」


 なんだかアルの中でも葛藤があるらしい。ちらりとこちらを見た後、さらに深いため息を吐いた。


 王子様は考えることもたくさんあのかな?

 忙しくて大変だね!

 そこは私にはわかりかねるよ!


 でもお許しはお許しである。言質とったんだから今すぐ行ってーー!



「お姉様、話はまだですの」

「へわっ⁉︎」



 立ち上がろうとしたが、リリちゃんにガッチリ掴まれて叶わなかった。こっちも見ずに神妙な顔して何⁉︎


「1人で行かせるとは言ってません。もちろん私も行きますよ」

「えっアルが行くの⁉︎ 嘘でしょう⁉︎ やめなよ危ないよ⁉︎」

「……君は危ないと思ってるのに1人で行くと?」


 あわてて止めたらにっこりと。その笑顔はとても美しいのに、有無を言わせぬ迫力と圧しかなかった。


 こわっ⁉︎

 ちょ、顔が魔王なんだけど!

 謎のオーラ出てる出てる‼︎


「ち、違うからね⁉︎ ほら立場的にというかなんというか⁉︎ 王子様が動くのはダメだよなーというか」

「それは君もなんですが? こうなるのはティアの責任ですからね。何かあったらよろしくお願いします」

「え、えぇ……⁉︎」


 いい笑顔でそう言われて、予想外すぎて戸惑いしかない。だけどそんな私には構わず、しれっとアルは次の指示を出す。


「リリー。私の事は上手く誤魔化して下さい。そのスプレーは預けます」

「承知いたしましたの! (わたくし)にお任せくださいお兄様‼︎」

「え、いや、それはどうなの……リリちゃんも嫌じゃ……」

「早速試せるなんてワクワクしますの!」

「むしろウェルカムッ⁉︎」


 なんでそんなノリノリ笑顔なのかな⁉︎


 発言に驚いた私が目にしたのは。絶対に面倒な事なはずなのに、かけらもそんな感じはしない様子でーー。


 いやこれ、ほんとに楽しんでない?


 困ってアルの方に向き直るも、実に素敵な笑顔があるだけだった。


「もう決定しました。君が行かないと言わない限り、変わりませんよ?」

「えぇ……? でも」

「私はですね、やられっぱなしは嫌いなんですよ」


 あぁ……ダメだこれ……。

 テコでも動かないやつだわ……。

 それとこれは違うんだけどなぁ……?


 優しそうに見えるアルは一見というか。


 実際優しいけど。なんだかんだ負けず嫌いなのは、私もよく知っている事だ。今回は私に対して、その頑固さを発揮したらしい。


 苦笑いしか出ないものの、彼ときたらにっこり笑顔のまま圧をかけてくる。引く気ないって事ですねわかります……。


 今度は私が、ため息を吐く番だった。


「……はぁ。わかった。でもアルがいるならこのままじゃ行けないから、ちょっと待ってもらっていい?」

「それは構いませんが……何をする気ですか?」

「ちょうど今日、服とか持ってきてもらうように呼んでるから。もうすぐ来ると思うんだけど……」


 そっと扉を見るが、まぁまだ来るはずはない。


 私には少しばかり懸念事項があった。私のすることに巻き込む以上、この懸念事項は取り除かねばならない。……自分で撒いた種とも言えるけど。


 けど自分では、どうにもできないので。


 不思議そうに見る2人を放置して。

 私は慣れないウィスパーボイスを使った。



 そうーーお目当ての人物に頼み込むために!



****



「お嬢様……お久しぶりに会ったと思ったら」

「えへへー? いやぁ色々ありましてですね……」

「お嬢様はおかしいと思ってはおりましたが、やはりおかしかったですね」

「雇ってる側のお嬢様に面と向かって酷い言いよう⁉︎」


 可哀想なものを見るような目で、私の助っ人ーー侍女のシーナはそう言った。ご丁寧に口元に手を当てる演技付きだ。いらないよそれ!


 でもこの変わらぬ態度に、逆に安心している自分が一番怖いけどね! だって久々なんだもん!


 けれどそう思ってるのは私たちだけ。


「……ええと、その方は?」

「お姉様への口の利き方がなってないですの」


 そう。外面だけはいいはずのシーナさんは、これをアル達のいる前でやってのけた。


 いやなんでだ⁉︎


「えっとそのですね⁉︎ いつもはこうではなく」

「ご心配には及びません。少々殿下と姫様には刺激が強く感じるやもしれませんが、こちら毎朝の欠かさぬ挨拶でございます」

「主人が庇ってる横でしれっと否定するな‼︎」


 しかも盛られてるんですが⁉︎

 さすがに朝からはしないからね⁉︎

 いやそこじゃないな私!


 毅然と言ってのける侍女に、なぜか私が振り回されている。当然私の怒りなど構いやしない。おかしいよ! 逆ぎゃくぅ‼︎


「……えっと、特殊な方なんですね……?」

「ええ。お嬢様からお許しは貰っております」

「そ、それなら私も強くは言えませんの……」


 愛想笑いのアルへ、深く頷くシーナさん。あまりに堂々としすぎて、リリちゃんも引き下がった。


 ていうか‼︎


「えっ⁉︎ 私いつ許可してた⁉︎」

「私を解雇しなかった時からです」

「そんな大袈裟な話⁉︎」

「そしてそれどころか、私を侍女にまでした時点で言い逃れはできませんよ?」

「なんで私が責められてるの⁉︎」


 おかしい! 絶対におかしい!

 だけど否定もできない……!


 仕方なく私は唇を噛み締めた。シーナさんのこの涼しげな顔よ! 強すぎるんですが‼︎


 とはいえこの2人の前でも言ってくるとは、予想外すぎた。お父様とお母様の前でも猫被ってるのに。なんでなんだろ……?


「お話は事前にお嬢様から聞いております。まぁ急すぎて道具は何もないのですが……お嬢様にどうにかしてもらいましょう」

「くっ! 立場がおかしいけどその通りだから言い返せない……!」

「……というわけですので、恐れ多くはありますが」


 一呼吸置いて。

 シーナはアルを見つめていった。




「殿下には、お嬢様のために変装して頂きます」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ