表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
376/565

363話 無意識の魔法

「色々言いたい事はありますが……まぁ、今回は私も悪いですから。まずはティアの計画を聞きましょうか」

「け、計画……?」


 計画、と言われて顔が引きつった。ついでに声もひっくり返った。明らかな動揺加減を目にして、アルの方も眉が寄る。


「まさか、何も考えずに行くつもりだったんですか?」

「いや……何もっていうか……。競技場行っちゃえばなんとかなるかなって……? というか、私いつまでこのままなんですかね……?」


 飼い主に捕獲されて脱走し損ねた犬の如く、気まずいし居心地が悪い。


 ついでに怒られる気配に、視線も逸れようというものだ。そそそ〜っと動かした顔はそのまま、リリちゃんに表情でヘルプを求める。


「……お兄様。その体勢で話されるのは、いささか周囲に刺激が強すぎますの。お2人の時だけになさって?」

「ちょ! それだと2人の時ならいいみたいになっちゃうから!」

「そう言ってますもの!」

「なんだと……⁉︎」


 助けてくれたと思ったら!

 キャピっととんでもないことおっしゃる!

 よくない! よくないですよ⁉︎


 ちょっと演技っぽく頬に手をそえて、恥じらいの表情を浮かべたと思ったら! しかも抗議したのに、キメ顔で肯定されたんですが⁉︎


 リリちゃん貴族どころか、王族なんだからよくわかってるでしょうに!


 しかしまぁ今はとりあえず、口添えしてくれた事が大事……大事か? うーん、ちょっと首を捻るけどね……?


「……ではリリーに捕まえておいてもらいましょうか」

「えっ⁉︎」

「それなら喜んでやりますの!」

「えぇ⁉︎」


 冷静になったのか。すんっと無表情になったアルはそう言い、リリちゃんはガッツポーズでひとつ返事をした。


 私、納得してないですけど⁉︎


 しかしここには、私の意見を聞いてくれる人はいなかった。アルの手が離れたと思ったら、今度はリリちゃんの腕が巻きついてくる。


「ちょ、下りれない下りれない!」

「あぁすみません、まだ下ろしてませんでした」

「その顔は反省してない!」


 私がこれだけあたふたしてるのに。


 乗っかられてるアルはというと。涼しげ笑顔を浮かべて、いやによく通るいい声でそう言った。手を組んでお茶でも飲んでそうな雰囲気!


 反応おかしくない⁉︎

 さては面白がってるな⁉︎


「リリー、一旦離してあげてください。その体制では貴女も話し合いができないでしょう?」


 私の体勢もちょっと大分問題だけど。ソファの上で膝立ち気味に身を乗り出して、私を捕まえに来てるリリちゃんの体勢も問題だった。


「こうすればいいですのーー流飃(るひょう)

「⁉︎」


 一瞬気を抜いたら。人一人分くらいの高さでーー体が宙に浮いていた。


 ほ、え、は? と混乱してるうちに。リリちゃんの上を通過して、ストンとお尻がソファについた。そしてリリちゃんが抱きついてくる。


 ちなみに飛んでる最中も、手は離してもらえませんでしたが。お行儀とかあったもんじゃないね。


「……そんな事わざわざしなくても、良かったでしょうに」

「あらお兄様。お姉様が盗られて悔しいんですの?」

「……。」


 ちょっと目を細めたアルに、リリちゃんはふふんと勝ち誇っている。まぁ確かに、アルと離された感じにはなったけど。


 でもまぁそれはないよリリちゃん……。

 リリちゃんは私に懐いてくれてるけど。

 そんな勝ち誇るほどのものでもないよ?


 現にアルは、むっつりした顔で閉口していた。どう返したものか考えものだもんね、今のリリちゃんの言葉……。


 リリちゃんにとって価値があっても、それが他人の価値と一緒とは限らないんだけど……。


 私は2人を見て苦笑して、アルに同情した。


「ま、まぁ2人とも! えーっと、話し合い! 話し合いしよ⁉︎」


 私が声かけるのおかしいよなーと思いながら。空気を変えるべく、努めて明るめに声を上げた。



 ちなみに、何を話し合うのかは知りません!



「……リリーはレイナーから、例の幻惑スプレーを預かったんですよね?」


 先に折れたのはやはりお兄さんの方だった。アルから反応があったのをいいことに、そこから話を広げようとのっかる。


「あ、そうそう! どうせリリちゃんしか使えないかなと思って、とりあえず渡しちゃったんだけど!」

「魔力の注入は、魔石では難しいんでしょうか?」

「ま、魔石?」

「おそらくできますけれど、並程度では魔力が足りないと思いますの」

「え、ちょっとなんの話してる?」


 なぜ魔石の話が出てきたの?

 いやスプレーボトルは魔石だけど?

 うん? 違うよね多分。


 話についていけず、目で2人の顔を行ったり来たりしていると。アルがくすりと笑った。あ、優しい顔だ。


「魔石はその魔力を、自分に引き入れて使うのは知ってますよね?」

「えっしらない!」

「お姉様も魔石使いますでしょう? その時どうされてますの?」

「な、なんとなく使ってます……ね……」


 当然のように話された新事実に、驚いて。知らなかった事が後ろめたく、目を逸らしながらお茶を濁す。


 えぇ……? 一般常識なの……?


 そっと視線を戻すと、アルの少し驚いた顔が見えた。


「魔石を使う時、魔力の流れがあると思うんですが」

「んー……言われれば?」

「お姉様は天才肌ですのね! 普通は意識しないと使えないんですのよ‼︎」

「いや、魔石使えるだけで天才肌はないと思う……」


 大絶賛してくれるけどそもそも天才なら、もっとバシバシ使っているに違いない。


 しかしなるほど。体の中の魔力を魔法として使う時もそうなんだから、魔石の魔力だってそうなんだろう。意識してなかったけど。


 多分これは、私が『そういうもの』として認識してたからだね?


 無意識の闇魔法効果で使えてたんだね?

 勝手に使えるもんだと思ってたから。

 まぁ、苦労がなくていいけど!


 普通は身体に取り入れてから使う魔力を、直に魔法に使ってるらしい事に気づいたけど。黙っておいた。面倒な事は隠します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ