338話 全ては繋がる
すみません!
ちょっと諸事情で19時無理だったので23時にあげます!
「あらあんた、それで自分が魔力過多になりかけたくせに。よく忘れるわね?」
冷たくそう言われて、ちょっと考える。
「……へ? あのドラゴン、時空神関係あるんですか?」
「関係あるというか……まぁ、一応勇者に頼まれて管理してたのあいつだし」
……サラッと。
なんか流しちゃいけない事を。
言われた気がするんですけど。
今度は聞き逃すまいと眉間に力が入る。
「なんですと? 勇者? なんで?」
「……あんた、勇者がどういうものかは知ってるわよね?」
「え……あぁー⁉︎ そういえばこの世界の勇者、時空神と契約するんでしたっけ⁉︎」
漆黒の封印されていたドラゴン。
それが出てきたのは鏡の中。
そして封印したのはその時の勇者とーー。
女神様のヒントで、全てが繋がった結果。
私はムダにのけ反りながら、オーバーリアクションを決めた。
「アランドルフ王、鏡面世界にドラゴン封印してたんですかっ⁉︎」
そう考えると、全てが合致した。
そう、元々鏡面世界は時空神クロノシアの管理する世界。決して、闇魔力持ちのためのところではない。
本来行き来できるのは。
作り出した、クロノシア自身と。
それに認められた者ーーつまり、勇者だ。
「……あの子は、あいつも気に入ってたからね。結構手を貸したのよ」
答える女神様は、何故か遠い目をしていた。
それは悲しみというより……落ち込み?
私は恐る恐る、様子を伺ってみる。
「あれ……? 手を借りない方が良かったとかなんですか……?」
「……違うわ。あの魔獣は、あの時いた人の手には負えなかったから。むしろ、こっちからお願いしたいところだけど……」
「その割に嫌そうですけど……」
今回も手こずった敵だ。
そりゃあ前回も、大変だっただろう。
人類を愛する女神様は、困ったと思う。
でも、とても喜んでる顔に見えない。
なんなら嫌な虫を見た時みたいな、でも必死に耐えてるみたいな。明らかな嫌悪の顔だけど。
そう思ってたら、突然爆発した。
「せめてあの子じゃなけりゃ別に良かったのに! あいつ! なんの嫌がらせかあの子を選びやがって‼︎」
「え、えっとー……」
「あいつの庇護を受けるって事は、コレクションになるって事なのよっっ‼︎」
「あ、察しました」
グワッと血走る目でこちらを見られ。
堪らずハンズアップして、早口に告げた。
王族は女神様の血が濃いのだ……。一番気にかけてる子供たちに、手を出されたらまぁ……うん……。
前に聞いたコレクションは。
確かフィギュアにされる話だったなーと。
ここでうっすら思い出して。ちょっと鳥肌がたった。そうだった、クロノシアは美形好きの変態だったわ……。
魂しか見ない女神様とて。
さすがに、王族には……ね。
ちょっとドン引きな訳だ。
「いつもなら許さないけど! あの時は仕方なかったから! 歯を食いしばって耐えたわよ‼︎」
「……迂闊に世界へ手を出せないのも、大変ですね……」
「本当気が狂うかと思ったし、あいつをぶちのめそうと何度考えたか‼︎」
「神様が戦ったら、世界が終わりそうなんですけど……」
「そう言ってマウティスにも止められたわ‼︎」
怒涛の勢いでお返事頂きました。
わー。神様総出かな?
まぁ創生神マウティスは、女神様の旦那様ですもんね。
止めてもらってなきゃ、今頃私が悩むまでもなく。この世界はなかったということですね。止めてくれてありがとうございます……。
初めて、見た事もない神様に感謝した。
「でもマ……創生神も、王族の生みの親的な感じですけど。怒らなかったんですね?」
「……マウティスは、あたしが好きだからね。消えたらまた産めばいいとしか言わないのよ」
「懐が広すぎて、むしろ人類には理解できない……」
なんかもう、笑えてくる。
そして意外にも、女神様に同情した。
これはイクメンにはほど遠いね……。
だけど、女神様が好きなのは本当なんだろうなぁ。
そうじゃなきゃ、女神様を止めない。創生神自体は、人類が滅亡しようと知らないらしいから。止めたのは、女神様のためだね。
そして総出だと思ったけど。
名前が出ない神様が気になった。
「そういうのには、光と雷の神は何も言わないんですね……」
「アミトゥラーシャはいっつもスカしてんのよ! 中立中立って‼︎」
あぁ、公平な神様でしたね。
そして多分、女神様は仲が悪い。
ここで監視してるのもアミトゥラーシャだ。
火に油を注いだのか、女神様はそれはもう烈火の如くキレていた。神様も大変である。
「癪だけど、クロノシアくらいしか協力的じゃないのよ‼︎ あいつ面白いものと綺麗なものが好きだから!」
「それで人間好きなんですね……」
「あいつの場合は、好きってより暇つぶしに近いけどね!」
「神の気まぐれ……」
そういえば。クロノシアは、気まぐれな性格でもありましたね。それが丸め込めたのが、今回までだと聞いた気がする。
結局、女神様しか人類の事考えてないね?
めちゃくちゃ頑張ってるな。
なんか可哀想になってきたよ。
同情したところで、ハッと思い出す。
「……で、忘れかけてましたけど! なんの謝罪だったんですかあれ‼︎」
いかんいかん!
話流れまくりだけど!
今クロノシアの伝言の話だったよね⁉︎
私が焦って聞いたので、女神様も怒りを少し仕舞って答えてくれる。
「あのドラゴン、返してもらって悪いけど相手に消されたらしいわ」
「え、消されるって……むしろ助かったのでは?」
クロノシアの目を掻い潜って、封印を解いたのはーーもちろん相手なんだろう。
なのに、消した?
なんでなんだろう?
それは、攻撃手段が減っただけでは?
首を捻るが、これ以上情報もないのでわからない。
「気まぐれじゃない? ま、そのおかげであんた回復早かったんだから、良かったじゃない」
「そうなんですか?」
「消されてなきゃ、魔獣から魔力を強制的に吸い続けてたからね。それこそ寝たままになったんじゃない?」
随分と軽く言ってくれる。
しかしまぁそれは……私に都合がいい展開になったという事だね。何故か不明だけど。
「にしても気まぐれって……そんな、神様じゃないんだから……」
「あっちは神様気取りだと思うわよ」
笑ってそう言ったら。女神様の顔は、笑っていなかった。細められた瞳のアクアマリンが、冷たく光る。
しかし瞬きした次の瞬間には、それは元に戻っていた。
「まぁいいわ! 早く帰って、早くチョコ持ってきなさい‼︎」
「急に切り替えすぎでは⁉︎」
「いいからいいから! くれぐれも、クロノシアには会わないようにしなさいよ⁉︎ 今回もそのために伝言聞いてやったんだから‼︎」
こんなにうるさく話されているのに。
まぶたは、だんだん重くなっていく。
女神様は、どうも私をクロノシアに会わせたくないようだ。私も会いたくはないけど。
まぁ会ったらあったで。
少しくらい話してみたい気もするけど……。
ダメだ、眠い。
うとうとし始めてーー。
「まぁオモチャは、別で紹介してあるから大丈夫だと思うけど……一応会わない方がいいわ」
なんだか少し不穏な声を聞いた気がしたが。
認識する前に、眠りに落ちた。




