328話 引き下がれない想い
いつもブクマや評価ありがとうございます!
あまりにもあっけらかんと、言いすぎたらしい。こんなに沈黙してるのに、驚きがわかる場面もそうないよねって顔に囲まれてる。
でもその中で当の言われた本人は、一番驚いてない……って当たり前か。あの時で終わってるもんね。
「いや……あのですねー……ちょっと確実に仕留める言葉が、それ意外思いつかなかったというかー」
「クリスティ……?」
「ひぇ! ちょっだってあの時急いでてですね⁉︎」
私の「仕留める」発言に、ブランの目が光る。
ごめんよお兄ちゃんー!
約束守れなかったのは謝るよ!
けど仕方なかったんだって‼︎
「だってあそこで普通に止めても、アル絶対止めてくれないじゃないの!」
「それは……」
「遠かったみんなは、わかんないかもしれないけど! 私は近くにいたんだから止めるでしょう‼︎」
ブランからアルへ向き直って、反撃に出る。
アルが言いかけても押し切る。
というか、結果オーライだからよくない⁉︎
「けれど、一応神級魔法ですよ。攻撃力なら、随一の魔法ですし……倒せていたかもしれませんよね? あれで倒せばティアを行かせる必要はない」
「あ、それの時の話か。なんか急に魔法止まったから、てっきりガス欠かと思ってたわ」
「セス君!」
アルの説明に、セツが気の抜ける声で相槌を打つ。すぐさまお兄ちゃんが出動していた。
「いやもうギリギリだったじゃん! 魔力不足になったらどうなるか、アルも知ってるでしょう⁉︎」
私の発言に、逆にみんなの視線はアルに集まる。そりゃその結果を、みんな知ってますからね! ソースは私‼︎
私は、レイ君みたいに魔力測れないし。
ノア君やフィーちゃんみたいにも。
心とか、覗けませんけど!
でも長年の付き合いという、確かな積み重ねがあるのよ‼︎
「おいアルバ、それが本当ならお前にも問題あるぞ。王子のお前が倒れたら……」
「大騒ぎになるって言うんですか? でもあの時は、ドラゴンを抑えないと国が滅びる可能性すらありましたよ」
ヴィンスの指摘に、アルは鋭く睨んで返した。その眼光に、ヴィンスが少し怯む。
「だから私の出番じゃないの!」
「どこに婚約者へ、危険を犯すマネをさせたい人間がいるんですか‼︎」
「それそっくりそのまま返すけど⁉︎」
思わぬ口論だが、私は怯まない。
アルと向かい合って、睨み合う。
だって、ここは譲れないから!
「この国の王子は、アルしかいないんだよ⁉︎ 替えなんかいないの‼︎ 何かあったらみんなが心配するのよ‼︎」
「預言師だって、替えなんかいないじゃないですか‼︎」
「預言師はいなくても国は成り立つでしょうが‼︎」
私の言葉に彼はギリッと奥歯を噛む。
本当に言いたいのは、こんなことじゃない。
でも私の気持ちを訴えたところで、平行線。
だからズルい私は、納得させるためにド正論をぶつける。我ながら酷いものだ。
「私の魔力は……火ですから、補充は簡単にできるんですよ‼︎ 君の時とは違う‼︎」
「そういうことじゃないでしょ⁉︎ 立場の話を言ってるの‼︎ 婚約者に替えは効くけど、王子には替えが効かない‼︎ 私の立場わかってる⁉︎」
「わかってるから必死になるんじゃないですか‼︎」
いつも割と冷静なアルが、全然引いてくれない。むしろ感情的になる一方で、睨み合いは継続する。
く……なんでわかってくれないのよ?
ていうかもうさぁ!
死んでないんだから良いでしょ⁉︎
私こういうの苦手なんですけどー‼︎
下がりそうな眉を必死に上げて、格好だけつけてる状態だ。正論は私の方なはずなのに、何故押されているのか。
しかし押され気味な私に救いの手が来た。
「……殿下、僕はクリスティを支持しますよ」
「⁉︎ ブランドン⁉︎」
「ブラン‼︎」
私たちの反応は正反対だ。
アルは愕然とした表情に。
私は感激の表情に……たぶんなってる。
「……騎士は守ることが役目なので、それが主君であれば忠実に守ります。クリスティは……騎士ではないですが、預言師です」
庇ってくれてるのに、ブランはどこか浮かない顔のまま。声のトーンも少し落ち着いていて、少し下を向いたまま話している。
まるで、自分に言い聞かせてるみたいな。
「預言師の役目は、国を守る事でしょう。ひいては王族を守る事です。その役割としては、止めるのは当然だと思います」
「うんうん、その通りよ! 私はアルの忠実な臣下ですからね‼︎」
でも援護射撃であることに変わりはないから、私はこれでもかと頷いてのっかる。
元気がないのは気になるけど。
……まぁ、心配してくれてるって事かな。
でも立場ってものがあるもんね。
ブランはそれを、アルより理解している。
究極的な話ーーここで1人しか生き残れないってなったら、迷わずアルを選ぶんだろう。私情は殴り捨てて。
ま、そんな辛い事私がさせませんけど!
そこをひっくり返せるのは、闇の強みだ。
全てを嘘に塗り替えられる。
ドラゴンのことだって、それは変わらない。
私がやったから、大きな被害者がいないのだ。
いなかったら……ちょっと考えたくない。
けど、ブランはそういう覚悟をしてる。それにわかっててのっかる私は、実に悪役っぽいなーと思う。まぁ元から、いい子ではないので。
「……ブランドンからそう言われるとは、思いませんでした」
「……すみません殿下。僕は騎士の一族なので」
アルの残念そうな視線に、ブランはやっと顔を上げた。そして、どこか淋しげに笑う。
……あー! 良心の呵責が‼︎
ダメだ、もう耐えられない‼︎
「いやもう、私生きてたからいいじゃない⁉︎ この話終わりにしようよー⁉︎」
「お前はその考えを改めろよ!」
「えー?」
空気を変えようと、笑って言ったのにヴィンスに怒られた。
大丈夫だってばー!
今までなんとかなってきてるんだから!
これからもなんとかなるってば‼︎
「……すみません。今回の事は全面的に、オレに非があります」
そんな流そうとした空気を戻したのは、人形のようにおとなしかったレイ君だった。
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次回更新は18時を予定しております。
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