325話 怒られても結局
リリちゃんとフィーちゃんが病室を去った後。セツが遣いを……というか、シーナに呼んでくるように伝えた。
院内にはいるらしい。でもリリちゃんの手前、席を外していたみたいだ。
意外にも、お母様には怒られなかった。
ただ「クーちゃんは、心配をかけるのが上手ね?」と、毒吐かれた。すみません……。
お父様はーー泣く泣く、仕事に追い出したらしい。私の様子が安定していたから、とのこと。……あとで連絡取るべきかなぁ。
そしてみんなが待っているからと、シーナが着替えの準備をしてくれる。
一応お医者様にも診てもらったけど、もちろん異常のない健康体だった。ちょっと魔力多かっただけだもんねぇ。
「……奥様は、ショックで気絶したとしか聞いておりませんから」
「へ?」
髪を結いながら、シーナが言った。
少し小さいから、聞こえにくい。
「お嬢様の無茶振りは知りません……私はセス様から伺いましたが」
「え、セツなに話してんの?」
「なんなら姫様からも伺いましたが」
「なんでそこ繋がってんの?」
部屋に来た時に仲良くなったのは知ってるけど……いやいいや、突っ込むな私。
まぁなるほど……。
だから怒られなかったのか。
無駄に心配かけなくてよかったなぁ。
手際良く器用に結い上げながら、彼女はまだ続ける。
「……人々は喜ぶでしょうけれど。私はお嬢様が無茶をした結果、出来た幸せならーー怒りますよ」
「あれ? もしかしてシーナさん、怒ってます?」
なんとなく、いつもより手荒いかなと。
結い方キツいかなと思ったけど。
怒ってますね? これ。
「お嬢様を大切だと思う方なら、おそらく皆さん怒りますね」
「あ、怒ってるんですね……」
「危ない事をしたら怒るのは当然ですよ」
控えめに確認を取れば、小さなため息が聞こえてた。
まぁ、そういうものだろうか。
私がアルに攻撃止めさせた感じかなぁ。
危ないってわかっててやってたら止める。
魔力すっからかんになったらどうなるかーー私が一番身をもってよく知ってるし。
でも今回はさぁー?
「知らなかったんだもーん」
「知っていても、やりますよね?」
「……時と場合によるんじゃないかなぁー?」
あの時何を言われたところで、私はきっと実行した。
それが、最善手だから。
実際、誰も死んでないらしい。
私が頑張ってどうにかなるなら!
そりゃ頑張るしかないっしょ!
という事なんだけど。
戯けて言ってみても、シーナはお見通しみたいだ。まぁ、私も今のは隠すつもりがなさすぎたけど。
「……まぁ、心配してくれるのは嬉しいけどね」
「けど、なんですか?」
「うわぁー。アルみたいだよシーナ……」
淡々とした追及に耐えられず、うへぇと弱音を吐く。あぁ、アルのとこにも行かなきゃなのよねぇ。……怒られるのかなぁ。やだなぁ。
ガシガシと髪を解かれながら、思い出して逃げたくなった。
いや、行くけどね。
心配かけたのは私だし。
ちゃんとなんともないか、たしかめたいし。
「殿下はお可哀想ですね。お嬢様に迷惑ばかりかけられて」
「ひどっ⁉︎ え、シーナ私の侍女だよね⁉︎」
「お可哀想です。一生振り回されるなんて」
シーナさん、私の話は無視して首を振りながら嘆かれます。
ええー……。
どこを同情してるのよ……。
まぁ、そこについては大丈夫だけど。
「……そんなに言わなくても、私アルと結婚しないから大丈夫だよ」
でもさすがに、ちょっとむくれつつ。
しょぼんとして言ったんだけど。
「はぁぁぁ……殿下は本当にお可哀想ですね」
「いやなんでそこでため息吐いたのっ⁉︎」
今までで一番のため息を零された。どうして⁉︎
「殿下と一生被害者の会を、立ち上げねばならない気がしてきました」
「なんで⁉︎ スケール大きくない⁉︎」
「せめてもと今日は可愛く致しましたので、存分に愛嬌を振りまいて謝ってきてください」
「どういうこと……ってでも本当に可愛いね、髪型」
シーナはあんなに文句を言いながら、何故か凝った髪型にしてくれた。
百合の位置はいつも通りだけど。
編み込みもされたシニヨンだ。
病室でもできる、精一杯。
……何故おめかしさせられたのかは、ちょっとわかんないけど。
「私にできるのはここまでです。こちらの片付けは承りますから、お嬢様は早く皆様の元へお帰りください。我慢していらっしゃいます」
どうも元気になると判明した時点で、あの3人以外は帰ったらしい。
私が女性だし。
まぁ病院だし?
いろいろ遠慮してくれたみたい。
それでも1日は寝てたらしいんですけどね……ヤバい。この世界で病弱かというくらい、私は寝すぎである。
「……待っててもいいよ?」
「セス様とお帰りください」
「意見も聞いてくれないっ⁉︎」
どっちが主人なんだ……⁉︎ と思いつつ、放り出された。
廊下でセツに、首ねっこを掴まれるように捕まりーー馬車で連行された。
「あ、あれ……⁉︎ 私も、一応頑張った人なんだけどな⁉︎ 何この罪人のような扱いは⁉︎」
「あ? ちゃんと逃げないように連れてくるように、ブラン兄ちゃんに言われてるから」
「ほんとに連行だっ⁉︎」
弟の発言により、確実に怒られることがわかりましたーーやだーーーー‼︎
「……あと、レイもどうにかして。あのままだとみんな気まずいままで終わるし」
「殴った人がなんか言ってる!」
「うっせーわ! あれは……まぁでも、本人もう反省してるから」
じゃあとりあえず謝ろうよっ⁉︎
気まずそうに窓の外へ目を向ける弟に、心でツッコミを入れながら。
「はぁ……お姉ちゃんの仕事が増えたわ……」
面倒だなぁと思いつつ。
自分の蒔いた種なので……収拾つけようと、覚悟を決めた。
ブクマや評価ありがとうございます!
お返しできてればいいんですが……。
ちょっとこの後時間取れなさそうなので
「フラない」感謝祭、今日は終了です!
ありがとうございました!
次の更新は日曜なので。
またお楽しみ頂ければ幸いです。
次回はみんな登場しますー!




