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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、思い出す〜バッドフラグはここから始まった〜
3/576

1話 始まりはトラウマと共に (挿絵)

序盤は1話分が短めとなっております。

それ以降は2千字が目安です。

また3話までは少し重め注意。

それでは、お楽しみ頂ければ幸いです。

 その日私は思い出した——最悪のタイミングで。




 バシャンッッッッ!!!!





 やけにいい音と水しぶきを立てて。

 一気に冷たさが頭の先まで襲ってきた。

 びっくりして閉じた目をあわてて開く。



 だけど視界が白い。呆然として見つめていたら、上にのぼっていくこれが泡だと気づいた。



 えっと、えっと。

 さっきまで追いかけっこをしてた?

 それで走ってたのは覚えてる。



 そしてなぜか、勢いで池に落ちた——ような気がする!



 ような気がするってなにっ⁉

 さっきまでのことでしょ⁉

 でもなんか他人事の感覚!


 違和感というか、なにかひっかる思いがあって。それがなんか変だと自分でも思ってるけど——。





 って、今はそれどころじゃない!!!! 




 水の中ということは、絶賛おぼれ中ということ。上と下がいまいちわからないけれど、沈んでいってる気がする! どうしよ‼



 空気の足りない頭は真っ白!

 けどパニックになりつつも。

 どこか冷静な自分もいる。



 そう、ここって広いんだ。



 記憶をたどりつつ周りを見渡せば、池は池でも、小学校とかにあるような鯉とかカエルが泳いでる池じゃない。


 池……ってよりかは。

 湖が近いような。

 だって足がつかないし。


 まだ5才の私じゃ下に足が届かないのは当然かも——ん? 小学校ってなんだっけ……。



 とか一瞬考えてたら。

 こぽっと音が鳴って。

 口からどんどん泡が出ていく。




 あ、ほんとにまずい。




 そう思った時には遅く——すべてがスローモーションになりながら、私は生まれてこの方泳いだことがないことへ思い至る。



 なんでだろう? 泳げる気がしてた。

 思ってたよりひとかきがしょっぱい。

 そして力が足りない。



 おかしい——なんでそんなふうに思ったんだろ……?



 逃避のように苦しみながら考えても、なにが変わるわけでもなく。


 デタラメに動かす腕が短すぎる。

 それでも必死に動かすけど。

 努力むなしく光が遠のいていく。




 ——またダメなの?




 何故だか、とても悲しくて。それは私が死ぬことに対してじゃない気がした。



 もがきながら走馬灯のように、様々な記憶が水面に揺れては、消えて。そして巡り。同時にあるはずのない蘇る記憶。




 ここ、はーー。







 ザバッッッッ!!!!







「クリスティア嬢、大丈夫ですか⁉︎」




 腕を掴まれひきあげられた先、急な音の回復と共に目にしたのは。


「てん……し?」


 眩いばかりの、それでいて繊細で上品なシルクのような黄金(ブロンド)の髪——けどそれは、しっとり濡れて雫が滴り落ちている。


 いつまでも覗いていたくなる、透き通った宝石のような。それでいて意思の強そうな、キラキラとした瞳——だけど今は、焦りと安堵の色が見て取れた。



 あれ、これって。ここにいるのは、もしかして()()()——。




 の、前に空気!!!!




「げほっごほっは……は……っ!」


 急に息することを思い出した!


 目の前の美しい光景より空気!!!!

 空気吸わないと死んじゃう!

 ほんとに死んじゃうから!


 肩を上下させて水を吐きだしながら、代わりにこれでもかと空気を吸う。むせすぎてつらい。今さら自分の状況を体で理解して冷汗で震えた。


 はぁ……っまた死ぬかと思った……! だって私はその感覚を……()()()()()

 ()()()()()()——。



 いや、なんで——?



 一瞬記憶が頭をよぎる。それを考えるより先に、意識が朦朧もうろうとしてくる。マズい。ダメだ意識を保ってられない!



 だけどその前に、気になることがあるの……!



 合わない焦点で、必死に目を凝らす。私を助けてくれた彼よりも、確かめたい——その後ろに見えている、青ざめた顔の小さな人影。そちらの方へ、目を向ける。


 それは勘としか言えないような。

 でも確かな自信があって。

 だから少し笑ってみせた。



 それはかつて、私が助けたかった()



 ()()()()()()()()()()と、声にならない言葉を思いながら……今度こそ意識を手放した。



挿絵(By みてみん)



 次に目を覚ました時、私は全てを思い出していた。




 私の名前はクリスティア・シンビジウム。




 この世界——人気乙女ゲーム『王立学園プリンセス〜麗しの花園〜』の世界へ弟と一緒に転生してしまったのだと——しかもその、悪役令嬢に。


 なんということでしょう。

 上品そうに取り繕ってみても。

 今のところ変わりそうにない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白いです!!しかもイラストも凄いですね! ブクマっと!
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